エロス追求、道ならぬ恋、ドロ沼裁判…。映画で知る画家たちの波乱万丈!

コラム

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『エゴン・シーレ 死と乙女』1月28日(土)より公開-(C)Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH

保守的なウィーン美術史に官能芸術の風を吹き込んだエゴン・シーレ(1890〜1918年)。28年という彼の短い生涯をドラマティックに映し取った『エゴン・シーレ 死と乙女』が1月28日(土)から公開されます。

性的な営み、人の死などに触れる作品を数多く残し、最初の裸婦像のモデルが妹だったり、少女性愛疑惑による逮捕など衝撃的な逸話を持つシーレ(ノア・サーベトラ)。映画では、彼を影で支えた情婦ヴァリ(フェレリエ・ペヒナー)やモデルとなった女性たちとの愛、第一次世界大戦に巻き込まれ、スペイン風邪で早逝するまで“エロス芸術”を追求し続けた姿を描いています。

シーレに限らず、 “描く”ことに心血を注ぐアーティストは、その分個性的で波乱万丈です。今回は映画に描かれた画家たちの、美と苦悩に満ちた人生を辿ってみます。

ヨハネス・フェルメール…使用人との恋が生んだ“北のモナリザ”

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“北のモナリザ”とも呼ばれる名画「真珠の耳飾りの少女」

ヨハネス・フェルメール(1632〜1675年)は、その生涯でわずか30数点程の作品しか残していないオランダ人画家。その作品 の特徴は、写真のような緻密な空間構成と写実さで、「フェルメール・ブルー」とも呼ばれる特殊な色彩。他の画家の作品に辛辣なサルバトール・ダリ(1904〜1989年)が、彼の作品は絶賛するなど現在でも高評価を得ています。

代表作は、“北のモナリザ”とも呼ばれる名画「真珠の耳飾りの少女」(1665年頃)。絵と同名の小説を原作に、2004年に映画化された『真珠の耳飾りの少女』では、フェルメール家の下働きで、モデルになった少女(スカーレット・ヨハンソン)と、彼女から刺激され創作意欲を増すフェルメール(コリン・ファース)が、アトリエという密室で親密になり、官能的な緊張感を漂わせていることに気付いた妻を交えた心理サスペンスとしても楽しめる1作です。

藤田嗣治…フランスで愛された「乳白色の肌」

フランスで人気の日本人画家・藤田嗣治(1886〜1968年)。猫や女性をモチーフにすることが多い彼の作品は“乳白色の肌”と呼ばれるなめらかでほんのりと黄色味のある肌色が特徴で、フランス美術界で賞賛を浴びました。

名匠・小栗康平監督の『FOUJITA』(2015年)は、彼の半生を映し取った物語。1920年代にはフランスで知らない人がいない程の人気を得た藤田(オダギリジョー)ですが、1940年代、日本での活躍を願い帰国。戦時中は、「アッツ島玉砕」(1943年)など“戦争画”を描いて日本美術界の重鎮となります。

しかし、終戦後に戦犯画家として矢面に立たされ失望した彼はパリへと戻り、カトリックの洗礼名“レオナール・フジタ”として残りの人生を芸術に捧げるのです。

フリーダ・カーロ…大事故、パートナーの浮気など困難を芸術に昇華

メキシコの現代絵画を代表するフリーダ・カーロ(1907〜1954年)は、自分の経験した孤独や痛みや哀しみを、多くの自画像で表現しています。彼女の波乱に満ちた人生を描いたのが『フリーダ』(2002年)です。

無邪気な少女だったフリーダ(サルマ・ハエック)は、18歳で事故に遭い瀕死の状態に。一命はとりとめたもののベッドから動けない彼女は、両親から絵画用品を与えられ、才能が開花していきます。その後もパートナーの度重なる浮気や事故の後遺症など、困難に遭いながらも絵とともに力強く生きるフリーダの孤独を克明に記した同作は、第75回アカデミー賞6部門にノミネートされました。

ウォルター&マーガレット・キーン…人気ポップアートを巡るスキャンダル

作品とともに、口が達者な夫が妻の絵を自分の名前で売り出していた事件で有名になったのが、ウォルター・キーン(1915〜2000年)とマーガレット・キーンの夫婦。実際よりずっと大きな目を描く特徴的な肖像画で、1960年代のアメリカでポップアート全盛期を彩った“ビッグ・アイズ”シリーズ。ティム・バートンによる同名の映画『ビッグ・アイズ』(2014年)は、夫婦の出会いから、作品を守るためにマーガレットがウォルターを告発したドロ沼の裁判までを映し出します。

それぞれに個性的で波乱万丈だったアーティストたちの人生。どんな困難の中でも、彼らの絵画への情熱が枯れることはありませんでした。楽しいことや辛いこと、全ての想いをキャンバスにぶつけて昇華させたからこそ、彼らの作品が鑑賞する者の心を打つのかもしれませんね。

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)

記事制作 : サンクレイオ翼