失恋したら、壁や家具を“分解”してみると…良いかもしれない

コラム

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『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』という、とても詩的なタイトルの映画を観た。原題は「Demolition=取り壊し」なので、言葉の印象は全然違うけれど、観終ると「なるほどなぁ」と納得する。

思い出したのは、失恋のときの立ち直り方だ。この映画は、妻を亡くした男が破壊を経てたどり着く感情──喪失と哀しみと愛情、再生を描いているのだけれど、愛する人(=パートナー)を亡くしたことのない我が身に思い浮かんだのは、失恋の記憶。失恋から立ち直るために、とことんまで落ち込む方法をとってきた。泣きたいだけ泣く、友だちに愚痴を聞いてもらう、お酒を飲む、最終的には行き場を失った愛情を別の形で放出する方法を見つける。私の場合は仕事に打ち込むことで、多忙に身を置く事で、失恋を乗り越えてきた気がする。新しい恋で上書きのできる人もいるだろうけれど、性格的にそれは無理だったようだ。だからこの映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』の主人公デイヴィスの再生の仕方は理解できる、気がした。

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銀行員のデイヴィス(ジェイク・ギレンホール)は、地位も富もある、美しい妻もいる。誰もが羨む人生を歩んでいたが、ある日、車の交通事故によって妻を亡くしてしまう。愛する人を失い悲しいはずなのに、悲しみがない、涙も流れない、自分は本当に妻を愛していたのだろうか……と自分の感情に問いかける。そして義父(クリス・クーパー)の「心の修理も車の修理も同じことだ。まず隅々まで点検して組み直すんだ」という言葉をきっかけに、身近なものを分解することを試みる。まるで自分の心をバラバラにして“悲しみ”のピースを探すかのように。でも見つからない。その次は家具や壁、あらゆるものを壊していく。その途中で出会うのが、シングルマザーのカレン・モレノ(ナオミ・ワッツ)だ。病院の自販機がうまく作動しなかったことについて苦情を入れたことがきっかけ。彼女は顧客担当責任者で、カレンと彼女の息子との出会いがデイヴィスを癒していく。

デイヴィスは自分が無感情な人間になってしまったのではないかと苦しむが、泣けない=非情なのでは決してなく、時間がかかるときだってあるのだ。たとえばカフェで思い出の曲が流れてきて記憶のスイッチがオンになることもあれば、その人に関わる何かを目にしたときに思い出すことだってある。そういう時は自然と笑顔になったり涙が流れるものだ。この映画のなかに登場するそのひとつが、小さなメモ用紙。ブルーのメモがタイトルにつながっている。

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この映画を観て、ずっと昔に仕事に打ち込むことで忘れようとしたひとつの恋をひさびさに思い出した。当時はつらくて、ただつらくて、忘れる方法を必死に見つけようとしてもがいていたけれど、不思議だ──今はものすごくあたたかい思い出になっている。愛された記憶、愛した記憶、そういった記憶をそっと呼び起こしてくれた。

文・新谷里映

2017年2月18日より、新宿シネマカリテほかにて全国公開 (C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation, Demolition Movie, LLC and TSG Entertainment Finance LLC. All Rights Reserved.

記事制作 : 新谷里映