【映画の料理作ってみたらVol.21】『ファンタビ』のシュトルーデル、魔法を使わず作ってみた

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

文=金田裕美子/Avanti Press

『ファンタビ』のシュトルーデルは魔法で作る

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が世界中で大ヒットを飛ばしています。『ハリー・ポッター』シリーズの原作者、J・K・ローリングが映画のために脚本を書き下ろし、『ハリポタ』ファンもそうでない人も楽しめる作品となっているだけあって、1月中旬までに世界興収はなんと8億ドル(約900億円)を突破しました。『ハリポタ』シリーズにも美味しそうなもの(や美味しくなさそうなもの)がたくさん出てきますが、この作品にもカラフルなペイストリーなどいろいろ登場します。中でも魔法のように美味しそうなのが、りんごのお菓子(魔法なんだけど)、シュトルーデル。今回はこれに挑戦です。

FB17
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』全国ロードショー中
(C)2015 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

『ハリポタ』の世界観を受け継いだ新シリーズである『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(略して『ファンタビ』)の舞台は、1926年ニューヨーク。ロンドンからやってきた魔法使いニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、かつてホグワーツ魔法魔術学校で学んだ魔法動物学者で、『ハリー・ポッターと賢者の石』には、彼が執筆した本『幻の動物とその生息地』(Fantastic Beasts and Where to Find Them、本作の原題でもあります)が教科書として登場しています。これは、ハリーたちがホグワーツに入学する70年ほど前のお話なんですね。

FB16_2
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』全国ロードショー中
(C)2015 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

ニューヨークに到着したばかりのニュートは、さっそくトランクに隠していた魔法動物を逃がすという失敗をやらかします。おまけに自分のトランクを、ノー・マジ(ノー・マジックの略。イギリス英語ではマグルと呼ばれていた、要するに魔法使いではない普通の人間)であるジェイコブ(ダン・フォグラー)が持っていた同じようなトランクと取り違え、街は大騒動に。ニュートはMACUSA(アメリカ合衆国魔法議会)で働く魔女、ティナ(キャサリン・ウォーターストン)に捕えられ、ジェイコブと共に彼女のアパートでしばらく見張られることになります。

ティナとアパートをシェアしているのは、人の心を読む魔力のある妹クイニー(アリソン・スドル)。真面目な姉と違って自由奔放なクイニーは、トラブルメーカーであるイギリスの魔法使いもノー・マジも大歓迎、楽しそうに食事を用意してくれます。そして2人に「パイとシュトルーデル、どちらがいい?」と好みを聞いた上で作ってくれるのが、今回の主役、シュトルーデルです。

FB23
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』全国ロードショー中
(C)2015 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

シュトルーデルで憎い演出『イングロリアス・バスターズ』

シュトルーデルは、薄く伸ばした生地でりんごのフィリングを巻いて作る、オーストリアの伝統的なお菓子。ドイツ語で「渦巻き」という意味で、りんご以外の果物を使ったもの、チーズや野菜を巻いたお惣菜的なものもあるそう。りんごを使ったものは、正確にはアプフェルシュトルーデルと呼ばれるようです。

このシュトルーデル、クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』にも、クリストフ・ヴァルツが怪演したナチスの将校(この役でオスカー受賞!)、ランダ大佐の好物として登場します。「この店のはいける」「おっと、クリームを注文するのを忘れた」などとシュトルーデルになみなみならぬこだわりを見せるランダ大佐ですが、美味しそうに食べたのち、トッピングのクリームに火のついたタバコをじゅっ。このお菓子は当時のドイツとオーストリアの関係や、ランダの冷血無比な極悪人キャラを強烈に印象づける小道具となっていました。

FB_IG
『イングロリアス・バスターズ』ランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)とシュトルーデル
(C)Universal Studios/Photofest

シュトレーデル作りでノー・マジ(人間)を実感

では、さっそく作ってみましょう。まず、クイニーの作り方を学びます。アパートのキッチンではめん棒がひとりでに生地を伸ばしており、彼女が杖を振ると干しぶどうとカットされたりんご、砂糖が宙に舞い、本のページのような層になったパイ生地がそれを包み、りんごの皮がくるくる丸まってバラの花の形になり、生地の表面を飾ります。さらに空中を移動しながらきれいなきつね色に焼き上がり、粉砂糖がふりかけられてテーブルに到着。……できるかーっ!

往年のテレビドラマ『奥様は魔女』のサマンサは、たいてい唇をちょっと動かすだけでピーンという音と共に突然完成品を出現させていました。それに比べると、用意しておいた材料を魔法で調理しているクイニーは奥ゆかしい感じさえします。しかし、私はノー・マジです(たぶん)。どちらのタイプの魔法も使えないので、仕方なく本で作り方を調べました。

そしてわかったことは、シュトルーデルは生地を薄く伸ばす、という部分が重要ポイントらしい。レシピ本には「生地ごしに新聞の字が読めるくらい薄く」などと書かれており、下の手が透けて見えるほど薄ーく伸ばした生地の写真が載っています。こんなに薄くしたら破れるでしょ、普通。こんなこと私にできるのか。やはり魔法が必要なのではないのか。かなり不安ですが、やってみるしかありません。

魔法以外でシュトルーデル作ってみた

まず用意するのは同量の強力粉と薄力粉。粉をふるってボウルに入れ、粉の半分の重さの水と、サラダオイル、塩を加えます。これを混ぜ合わせてひとつにまとめ、ボウルに打ちつけながらよくこねます。生地がなめらかになったら、表面にサラダオイルを塗ってラップをかけ、室温で30分ほど休ませます。

FB1_2
ばしばし打ちつけているとだんだんなめらかになってきます

生地がお休みしている間に、フィリングを用意します。パン粉をプライパンで炒り、きれいなきつね色になったらバターを加えて全体になじませ、冷まします。炒ったパン粉は3分の1ほど別にとっておきます。

FB3_2
炒ってバターを加えたパン粉はこんがりいい色に

りんごの皮はあとで飾りに使うので、丸のまま回転させて皮をむきます。これを8等分してから5ミリにスライス。先ほどのパン粉に砂糖、りんご、干しぶどう、レモン汁、すりおろしたレモンの皮、シナモンを加えて混ぜ合わせます。りんごは酸味のある紅玉がパイにはよく使われますが、お好みで。干しぶどうはラムに浸けておいたものを使用しました。ここでちょっと味見してみると、美味しいっ。香ばしいパン粉にバターがきいて、りんごの酸味と甘さも絶妙。このフィリングだけばくばく食べてしまいたくなりますが、我慢して次の工程へ。

FB5

下に置いた新聞の字が読める薄さのパイ生地って!

さて、いよいよ問題の生地です。休ませた生地は、休憩前よりさらになめらかになった感じ。台と生地の表面に打ち粉をしてめん棒で伸ばしていきます。ある程度薄くなったら、打ち粉をした布の上に移します。私はさらしを1メートルほど切って使いました。生地の下に手を入れ、手の甲でそっと伸ばしていきます。はじめはいつ破れるかとおっかなびっくりでしたが、結構弾力があって破れない。かなり薄くなっても生地は頑張ってくれています。サラダオイルが入っているせいか意外に丈夫で、伸ばすのが楽しくなってきました。「新聞の文字が読める程度? 無理無理」と思っていたのが、次第にできそうな気がしてきます。30センチ×70センチくらいまで伸ばした頃、生地の下に砂糖の袋を入れてみると(新聞がなかった)、なんということでしょう。文字が読めるではありませんか! 難しそうに見えても、やってみたら案外と簡単だったのでした。この生地の端を6センチほど切って、飾り用に残しておきます。

FB6_2
文字が透けた!(「クララが立った!」のイメージで

バターの量にビビッては美味しいパイにありつけない

伸ばした生地の表面にはけで溶かしバターを塗り、別にとっておいたパン粉を手前のほうに均一に広げます。パン粉の上にりんごのフィリングをのせ、手前の生地をフィリングにかぶせます。かぶせたところにバターを塗り、下の布を持ち上げながらごろんと転がし、表面にバターを塗り、また転がし……というふうに巻いていきます。このバターを塗ったところがパイの層になるわけですね。結構な量のバターを使用するので、カロリー的にはちょっとビビりますが、ここをケチっては美味しくできません。

FB7
布を持ち上げて巻いていきます

飾り用に残しておいた生地は幅1センチに切り、3本1組で三つ編みにしていきます。三つ編みはパイを包むようにのせ、表面全体にバターを塗ります。りんごの皮は、軟らかくなる程度に電子レンジでチン。身の側を表にしてくるくる巻き、生地の表面にのせます。うまくまとまらなかったら、巻いた皮の底の部分を生地でとめてからのせます。

FB8
三つ編みと焼く前は可憐だったバラの花

これを200度のオーブンで30分ほど焼きます。

FB9_3
いざ、オーブンへ

「パイとシュトルーデル、どちらがいい?」

途中、もう一度表面にバターを塗ります。20分くらいたつと、次第に表面に色がつき、いい匂いがしてきます。オーブンの前に貼りついてじーっと観察し、いい色になったところで取り出しました。最後に粉砂糖をかけて出来上がりです。映画では可憐なピンクだった飾りのバラの花が、ちょっと焦げて黒バラになってしまいましたが、それ以外はいい感じです!

FB11

生地が薄く崩れやすいのでそっと切り分け、ランダ大佐にならって生クリームを添えました。うーん、上品で優しいお味。黒バラもちゃんとりんごの味がします。熟練した菓子職人か魔法使いにしか作れないと思い込んでいたシュトルーデル、家庭でも割と簡単に美味しくできちゃうのでした。これからは「パイとシュトルーデル、どちらがいい?」というセリフ、自分でも使えそうです。

FB10

おまけ

こちらは皮作りを省略して、春巻きの皮でフィリングを巻いてみたお手軽バージョン。

FB24_2
食感はちょっと違ってパリッパリですが、これはこれで美味しい。言われなければ春巻きの皮とはわからなそう。

【シュトルーデル】
〈生地〉
・強力粉 75g/薄力粉 75g/水 75cc/サラダオイル 大さじ1/塩 少々
・打ち粉 適量
・溶かしバター 30g
〈フィリング〉
・りんご(紅玉など) 2個/干しぶどう 30g/パン粉 50g/砂糖 75g/バター 20g/レモン汁 4分の1個分/レモンの皮 少々/シナモン 適量
〈トッピング〉
・粉砂糖 適量/生クリーム お好みで
【映画っぽい気分を盛り上げる小道具】
・魔法の杖/燭台/トランク

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

シリーズ

PICK UP