抗えない絶望の快感…「イヤ~な気分になるミステリー(イヤミス)」の魅力とは

コラム

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(C)2017『愚行録』製作委員会

2月18日公開の『愚行録』は、妻夫木聡と満島ひかり主演で、第135回直木賞の候補になった貫井徳郎の小説を映画化した作品です。ある時、エリートサラリーマンの一家が殺害されるという世間を震撼させる事件が起こります。しかし犯人が見つからないまま1年が過ぎさり、改めて事件を追おうと決意した週刊誌記者の田中は取材を始めます。そして、関係者へのインタビューを通して、被害者一家や証言者自身の思いがけない実像が明らかに……。やがて事件の真相が浮かび上がっていくのです。 その後味の悪さや、じわ~っとくる人間的な恐ろしさに、戦慄がはしる『愚行録』。最初に言っておきますが、この作品は極上の“イヤミス”映画といえるでしょう。“イヤミス”とは、「イヤ~な気分になるミステリー」のこと。「後味が悪いながらも、なぜかこの感覚がクセになる……」と、近年その人気が高まり、数々の傑作が作られているのです。今回は、その中でも特にオススメの“イヤミス”ドラマ&映画4作品を紹介しましょう!

ポップで不可思議な映像美も見もの『渇き。』(2014年)

深町秋生の推理小説「果てしなき渇き」を原作に、中島哲也監督によって2014年に映画化されました。離婚した元妻から行方不明になった娘・加奈子の捜索を依頼された元刑事が、いつしか娘が地元の裏社会や政財界の人間までもを巻き込んだ大規模な犯罪行為の中心人物であることを知って、抗争に巻き込まれていくというストーリー。 原作自体の持つ不愉快さに絡めて、中島監督ならではのポップで不可思議な映像美で魅せるやり口はお見事。実に好き嫌いの分かれそうな内容ですし、グロテスクな描写も少なからずありますが、1分たりとも飽きさせない演出技法がイヤミスの新たな境地を見せつけてくれますよ。

不愉快、だけど何故か目が離せない『葛城事件』(2016年)

無差別殺人事件を起こした男とその家族の壮絶な姿を描いた物語で、監督の赤堀雅秋が自身の劇団の同盟舞台を映画化した作品です。舞台版は、2001年に起こった附属池田小事件をモチーフにしており、映画版ではさらに「土浦連続殺傷事件」「秋葉原通り魔事件」「池袋通り魔殺人事件」など、近年起きたさまざまな事件を参考にしたそうです。 主役である葛城清役は三浦友和。長男はリストラ、次男は死刑囚、母は精神崩壊の一家の長である彼の「俺がいったい何をした!」という被害者ヅラ満面の自己中心っぷりがとにかく最悪。最悪に不愉快、だけど何故か目が離せないのです。これぞイヤミス! 次男と獄中結婚する女性を演じる田中麗奈の狂気も見逃せませんよ。

モキュメンタリー方式でさらに生々しく…「フジコ」(2015年)

映像化不可能と言われたイヤミス界のベストセラー「殺人鬼フジコの衝動」が、2015年にHuluオリジナルドラマで放映されました。10歳の時に一家惨殺事件の生き残りとしてトラウマを負ったフジコが、人生をリセットするつもりで殺人を繰り返すというストーリー。主人公である、10数人もの殺人を犯した伝説の殺人鬼・フジコを演じたのは尾野真千子。一度はオファーを断ろうかと思ったほど重い役どころだったようです。 さらに、この作品はモキュメンタリー(ドキュメンタリーに見せかけたフィクション)方式で撮影されており、その生々しさもイヤミスっぷりに拍車をかけています。ちなみに、小説では続編の「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」という作品が発表されているので、こちらも映像化に期待したいところです。

母親の悲しみと情念に息を呑む…「贖罪」(2012年)

“イヤミス界の女王”とも呼ばれる、湊かなえの小説が原作。2012年にWOWOWの連続ドラマとして黒沢清監督で制作されました。ある日、小学生の少女が男に連れ去られ殺される事件が発生しましたが、事件は迷宮入り。しかし少女の母親は、犯人の顔をよく思い出せない目撃者の小学生4人を強く責め立てます。そして15年後に新たな悲劇の連鎖が始まるのです。 小泉今日子が演じる母親の悲しみと情念は、息を呑むほどです。子どもたちを追い詰める迫力が、あの小さな体のどこから出てくるのか……。「必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい」――。この罪を架され、呪縛されたまま成長した女性たちの苦悩する様も凄まじいものがあります。

凄く嫌な感じ、だけどもっと見たい……、人間の謎の心理を沸き立たせるイヤミス作品。今後も、このような後味の悪い作品は続々と作られているはずです。一度足を踏み入れたら抜け出せなくなる、そんな抗えない絶望の快感に魅せられてしまうかも。

(文/もちづき千代子@H14)

記事制作 : H14

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