【ブルボンヌ新作批評25】参政権を求めた女性たちの想いは、百年後の今に届けられた花束『未来を花束にして』

コラム

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未来を花束にして

ドイツのメルケル首相にイギリスのメイ首相、そして昨年はアジアでも、台湾で蔡英文総統が誕生し、東京都知事にはご存知小池百合子さんが就任。アメリカのヒラリーさんだって得票数自体はトランプに勝ってたわけで、世界じゅうで女性のリーダーが活躍する昨今です(韓国はえらいことになっちゃったけどね…)。

 そんな「強くなった」と言われる女性ですが、こうなるまでには先の時代を生きた女性たちの長くつらい闘いがありました。映画『未来を花束にして』で描かれる百年前のイギリスでも、過酷な長時間労働をさせられても男性より賃金は低くレイプまがいのセクハラも当たり前、職業選択の自由もない女性たちが多くいたのです。 そんな「洗濯女」、キャリー・マリガン演じる主人公モードが、当時激化していた女性参政権運動に関わっていくという物語。ひょんなことから公聴会で証言をすることになったモードは、自分の口から出た「(女性の選挙権など)ないものと思っていたから意見はない。でも、もしかしたら他の生き方があるのではないか」という言葉に気付かされます。自分や子供の未来を選ぶ、その発想すらなく生きていたことに。

未来を花束にして

 動き始めた彼女の想いを決定的なものにしたのは、メリル・ストリープねえさん演じる実在の活動家パンクハースト夫人の演説でした。メリルさん、自分が直接出演しない撮影でも、聴衆の反応をよりリアルにするためだけに現場に演説をしに行ったほどの熱の入れようだったそうです。現代のゴールデン・グローブ賞でも、トランプ大統領に対する抗議の気持ちを熱くスピーチしたばかりのねえさんだけに、映画界のカリスマが、女性運動史のカリスマとシンクロしてゾクゾクするものがありました。

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 街の薬剤師であり、戦うための術として女性たちに柔術を教えていたイーデス役にはヘレム・ボナム=カーター。実は彼女、むしろ活動家たちを罰していた首相側の血筋だというのも、不思議な巡り合わせを感じます。それ以外にも実在の人物やエピソードをうまく折り込みながら、「史実に名が残らずとも、後世のために闘った労働者階級の女性たち」の象徴として、キャリー・マリガンは繊細な演技で、可能性に気づき逞しく変化する姿を見せてくれました。個人的には、妻の変化を許せず家から追い出す保守的な夫役を俳優ベン・ウィショーちゃんが巧みに演じているのにもニヤリ。ゲイを公言している素の彼なら、一緒になって「オンナを何だと思ってんのよ!」って言ってくれそうなだけに(勝手にオネエ化)。

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 そしてここから百年後の今、拡がった人権や福祉意識への反動から、優しい顔ばかりもしていられない人間の本音が、世界を自国主義に向かわせている現状にますます考えさせられます。トランプ就任式の直後に、ワシントンの街を破壊した抗議活動には、アタシ含め多くの人が「頭にくる気持ちは分かるけど、モノ壊してもしょうがないんじゃ…」と思ったのでは。今作で描かれるサフラジェットと呼ばれた女性たちの組織WSPUが最後にとった手段も破壊的なものでした。ただこの団体が2000人規模だったのに対して、穏健派の団体は5万人もいたそうです。そして映画の中でも描かれる通り、女性のために闘っているはずが、身の回りの女性たちにこそ理解されず非難された現実。50年間まっとうなやり方で訴え続けて無視された彼女らが、「人だけは傷つけない」ことを守りながら強烈な闘い方を選んだ結果、世論を動かし、こうして映画に描かれる伝説になったのも事実なんですよね。今当たり前にある自由や権利の歴史を知ると同時に、社会に訴えるやり方についても、百年の時を経てつながる、まさに今だからこそ観ておきたい作品です。

『未来を花束にして』
TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中!
(C) Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2015. All rights reserved.

(ブルボンヌ)

記事制作 : ブルボンヌtwitter(外部サイト)

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