玄関開けたら2分でネオナチ!スマホ忘れてPUNKと壮絶殺し合い『グリーンルーム』

コラム

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緑に囲まれた僻地を舞台にした映画では、怖すぎることがよく起こる。食人族ムービー『グリーン・インフェルノ』しかり、2月11日公開のパンクvsネオナチ映画『グリーンルーム』しかり。『グリーンルーム』は、前作『ブルー・リベンジ』で注目を浴びたジェレミー・ソルニエ監督の長編映画3作目。両親を殺された青年がシャバに戻ってきた犯人とその家族に血の復讐を果たす前作同様、今回も暴力や殺しを残忍に描写する一方で虚無感を寒々しく漂わせる。

行ってみたらネオナチしかいなかった

商業主義に背を向けて、昔気質のパンク精神を標榜するドサまわり4人組ハードコアバンド「エイント・ライツ」。駐車中の車からガソリンを失敬しつつやって来たのは、オレゴン州の僻地にある殺伐オーラを放つライブハウス。客のほとんどが短髪で、ネオナチ・ファッションも目立つ。バンドの面々は「なんかヤバいなぁ」とビビりつつも、ステージではデッド・ケネディーズの名曲「ナチ・パンクス・ファック・オフ」で反骨スピリットを見せつける。

緊迫した空気もつかの間、曲数が進むごとにフロアにもモッシュが出来上がり、音楽は思想をも超越する事を体感。ギャラもきちんといただき、客層もスタッフも関わりを避けたいような人種だったけどいい奴だったじゃんと達成感を得つつ帰り支度をはじめると、メンバーの一人がスマホを忘れたことに気づく。どうやら楽屋に置いてきてしまったようだ。その楽屋はすでに誰かが使用しているとのことで、礼儀正しくノックをしてドアを開けると……ちょうど一人の少女が中年ネオナチ男に殺害されていました。

行き当たりばったりの虚無的死

物語はここから急転。コミュニティー内の殺人を隠蔽したいネオナチ軍団と、部外者であり目撃者である「エイント・ライツ」の攻防が始まる。狭い楽屋に閉じ込められたメンバーに襲い掛かるのは、ネオナチわんちゃんと化した闘犬や、先輩たちにいい顔をしたい凶暴ネオナチ少年たち。ライブハウスを舞台にした『ジョン・カーペンターの要塞警察』『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』の系譜に連なる籠城合戦の火ぶたが切って落とされる。

しかし攻防といっても、そこは年若きパンク・ミュージシャン。行動のすべてが若気の至りの行き当たりばったり。主人公となるキャラクターはいるが、ヒーローはいない。武器を手にしたとしても上手く使いこなせなかったり、なんとか知恵を絞って銃を手に入れるも、誰がその銃を扱うのか悩んだりする。極限の状態下でとあるメンバーが仲間の名前を叫び、何か名案が浮かんだのかとそれに反応するも「やっぱ何でもないわ!」と打ち消して物語の展開に変化が起きないという“英雄不在”を上手く表したシーンもある。

そこに前作『ブルー・リベンジ』にもあった、瞬間的かつ残忍な死が次々と描かれる。脱出できた!と思った瞬間、反撃だ!と思った瞬間、仲良くなった!と思った瞬間、伏線なき死が訪れ、その死に対して登場人物も観客も、被害者となった当事者すらリアクションの時間を与えられない。「ギャー!」とか「ウワー!」とか「痛いよ~!」といった感情や感慨も何もなく、バイオレンスというジャンル映画の体制をとりながら、そのカタルシスを否定するソルニエ監督十八番の寒々しい語り口が徹底される。

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PUNK精神あふれる選曲センス

劇中歌のように断片的に流れるのは、ハードコア、スラッシュメタル、デスメタルなどの重低音暴力系エクストリーム・ミュージック。おどろおどろしくアングラな重苦しい空気がより強調される。エンドロールにはCORPUS ROTTUS、MIDNIGHT、SLAYER、NAPALM DEATH、POISON IDEAのクレジットもあり、学生時代にパンクバンドを組んでいたというソルニエ監督らしい素晴らしき趣味と嗜好が反映されている。しかしサウンドトラックアルバムには権利の問題か、そのほとんどが収録されていないのが残念だ。

ネオナチ軍団を束ねるライブハウスのオーナーを演じているのは、『X-メン』シリーズのミュータントたちの正義の父ことプロフェッサーXで知られるイギリスの名優パトリック・スチュワート。年期の入った坊主頭が、この作品によって危険思想の詰まった頭として開花。実は冷酷そうな切れ長の目も相まって、カリスマ的悪役オーラをビシバシ放つ。なお主人公的役どころを務めたのは、27歳の若さで2016年に不慮の事故で亡くなったアントン・イェルチン。劇中バンド「エイント・ライツ」の演奏場面も様になっていただけに惜しまれる。

『グリーンルーム』
2月11日(土)より、新宿シネマカリテ他にて全国順次ロードショー
(C) 2015 Green Room Productions, LLC. All Rights Reserved.

(石井隼人)

記事制作 : 石井隼人

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