『キングコング:髑髏島の巨神』驚異的な怪獣バトルのつるべうち

コラム

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文=増當竜也/Avanti Press

『キングコング:髑髏島の巨神』は、太平洋戦争下の南太平洋の小島でアメリカ人と日本人(演じるは、世界を股にかけて活躍中の日本人ミュージシャンMIYAVI)、ふたりの敵対する軍人が出会い、争い始めるところから始まる。映画ファンとしては一瞬リー・マーヴィン&三船敏郎主演の名作『太平洋の地獄』(1968年)を彷彿させるものもあるが、そんな感慨を瞬く間に打ち消し、両者の取っ組み合いを突如として阻むものが……!

舞台は一転して1973年のヴェトナム戦争末期、米軍が現地から撤退する直前の時代へ移り変わる。そして地図に載っていない南方の謎の島=髑髏島へ、米軍の護衛付きで調査遠征隊が派遣されるのだが……。ここから先はもう言わずもがなで、島に棲むさまざまな巨大生物が、そして島の守護神ともいえるキングコングが、彼らの前に立ちはだかっていくのだ。

今年のエンタメを代表すること必至

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これまで巨大猿キング・コングを題材にした映画は、1933年の『キング・コング』を皮切りに数多く作られている。しかし今回は、それまで描かれてきた文明批判のメッセージや“美女と野獣”的な要素を活かしつつ、より自由な発想をもって従来の作品群のしがらみから解き放たれたかのようだ。秘境の孤島を舞台にした人間VSモンスター、もしくはモンスターVSモンスターといった壮大なる怪獣スペクタクル・バトル超大作としての醍醐味をとくと堪能でき、エンド・タイトルが終わっても気を抜くことができない。今年のエンタメを代表すること必至と断言できる屈指の快作に仕上がっている。

ピーター・ジャクソン監督による33年版のリメイク超大作『キング・コング』(2005年)中盤の展開に若干近いところもあるが、本作はあそこまでグロテスク趣味に走ることなく、むしろ驚異的バトルのつるべうちといったダイナミズムの描出にこそ心血を注いでいるのがいい。

テイストは『地獄の黙示録』、世界観は「ワンダと巨像」!?
さらにはあの名匠の名前をエンドクレジットで発見!

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現代ではなく、ヴェトナム戦争末期が主舞台になっていることには最初面食らったが、ヒロイン(ブリー・ラーソン)の設定が戦場カメラマンであったり、船の川下りといったモチーフの数々から、次第にこれがコング版『地獄の黙示録』(1979年)とでもいったテイストで貫かれていることに気づかされる。つまり、ここでのコングは『地獄の黙示録』でカーツ大佐を演じた大スター、マーロン・ブランドと同等のカリスマ的立場としても屹立しているのだ。

一方、今回の全体的な世界観は「ワンダと巨像」「人喰いの大鷲トリコ」といったTVゲームの名作群に倣った節が大いに感じられる。このあたりは映画もゲームも等しく“映像”として幼いころから慣れ親しみ、もはやヲタク的資質など特筆すべきことでも何でもない若手世代ジョーダン・ボート=ロバーツ監督ならではの持ち味ともいえよう。

人間ドラマとしては、主人公となる調査隊リーダー役のトム・ヒドルストンよりも、ジョン・C・ライリー扮する、とあるキャラクターにかなりの部分を持っていかれた感がある。一方、サミュエル・L・ジャクソン扮する大佐の言動も目立つのだが、彼のアクの強さがなければドラマが上手く転がっていかない部分もある。そういった大佐のある種強引なまでのスタンスだが、実はメル・ギブソン主演のヴェトナム戦争映画『ワンス・アンド・フォーエバー』(2002年)などにしばしば登場する、「必ず部下を祖国へ連れ帰る」ことを使命とする米国軍人の気質に即したものなのだろう。

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モンスター・バトルに関しては、もはや「百聞は一見に如かず」としか言いようのない、ハリウッド特殊技術陣の驚異的なまでの底力を改めて見せつけられた想いだ。そして、そのエンド・クレジットの中に名匠ジョン・ダイクストラの名前を発見して、思わず声をあげそうになった。ダイクストラといえば、『スタートレック』(1979年)、『スペースバンパイア』(1985年)、『スパイダーマン』(2002年)などの視覚効果を手掛けた名匠だ。さらに、今回の『キングコング』と同じレジェンダリー・ピクチャーズ製作の『GODZILLA ゴジラ』(2014年)にも関わっている。実は今回、コングの視覚効果を請け負ったのは、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)という会社なのだが、ダイクストラとILMは『スター・ウォーズ』(1977年)でともに仕事をし、アカデミー賞視覚効果賞に輝いたものの、事情により袂を分かつことになってしまった。数十年の時を超えた両者の邂逅が実現しただけに、当時を知る世代としては実に感慨深いものがあったのだ。

最後に、2020年には我が国が誇るゴジラとキングコング、日米を代表するキング・オブ・モンスター同士がハリウッドで相まみえる『ゴジラVSコング(原題)/Godzilla vs. Kong』の公開が発表されているが、このこともぜひ心の片隅に置きながら本作を見据えていただきたい。

『キングコング:髑髏島の巨神』
3月25日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか、全国でロードショー
監督:ジョーダン・ボート=ロバーツ
出演:トム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ジョン・C・ライリーほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

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