生田斗真は“憑依型”俳優!? トランスジェンダー役の本気ぶりにヤラレまくり!

コラム

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文=斉藤由紀子/Avanti Press

『かもめ食堂』『めがね』などの荻上直子監督の最新作『彼らが本気で編むときは、』で、トランスジェンダーの女性役を熱演した生田斗真。これまでも多彩な役柄に臨み、役者として己の限界に挑戦し続けているかのような彼が、今回の作品で魅せた“本気”について語ってみたい。

孤高の個性派俳優・生田斗真

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生田斗真演じるリンコ手製のキャラ弁当(c)2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

ジャニーズ事務所の所属タレントの中で、グループに属さない孤高の存在であり、歌でも踊りでもなく芝居に専念する生田斗真。ここ数年の彼の作品選びには、ひとつの共通点があるように思う。それは、「今まで見せたことのない自分を見せないと気が済まない」と言わんばかりのチャレンジ精神だ。例えば、感情を持たない殺人マシン役に挑んだ『脳男』(2013年)では、武術で鍛え抜いたギリシャ彫刻のような肉体美と、心の動きを封印した圧巻の演技を披露。昨年の『秘密 THE TOP SECRET』では、クールな態度の裏に壮絶なトラウマを抱えた“脳内捜査官”の役を、エモーショナルに表現。また、昨年末に公開された「土竜の唄」シリーズの続編『土竜の唄 香港狂騒曲』での、過激な全裸シーンやギャグてんこ盛りの弾けっぷりも記憶に新しい。

これまでで最も苦労したトランスジェンダー役

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生田斗真演じるリンコ手製の花見弁当(c)2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

正統派二枚目よりも、個性的すぎるほどクセがある役柄を好み、シリアスからコメディまで、「ここまでやるのか!」と誰もが目を見張るような芝居を繰り広げる生田。そんな彼にとって今回のトランスジェンダー役は、「俳優人生の中で最も苦労した、この先二度とないかもしれない役」だったという。そりゃそうだ。彼が演じたリンコは、身体は男として生まれたけど心は女で、性別適合手術を受けた女性。いわゆるオネエ系ではなく、薄化粧で清楚な服装を身にまとい、介護の仕事に勤しむごく平凡な女性なのだ。当然のことだが、派手な見た目やオーバーアクションといった、小手先の表現力は一切通用しない。心が本気で女にならなければ、観客に違和感を覚えさせてしまうことになるであろう、ガチで難しい役どころなのである。

たおやかで艶っぽい女っぷりに感嘆!

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共演の桐谷健太と柿原りんか(c)2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

結果として生田は、あまりにも見事に、感嘆するほど美しく、リンコという女性を体現してみせた。恋人のマキオ(桐谷健太)を愛おしそうに見つめる眼差し。部屋の壁に背を持たれかけ、ビンビールを飲む時のしどけなさ。実の母に育児放棄された少女トモ(柿原りんか)に、自らの乳房を触れさせて抱きしめる時の母性溢れる表情。マキオの横に寄り添って立つ際の艶っぽい後ろ姿──。周囲から差別的な扱いをされるたびに、編み物の中に魂の叫びを編み込んでいく生田のリンコは、どう見てもたおやかな女性そのもので、違和感など微塵もない。一体、どれだけの本気と努力を重ねれば、こんな演技ができるのだろうか。もしかしたら彼は、天才的な憑依型俳優なのかもしれない。しかも、現時点で見受けられる才能が、まだまだ進化の途中なのだとしたら……? 生田のこの先がとんでもなく楽しみだ。

2017年2月25日(土)、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
(配給:スールキートス)

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)