妊活、それとも精子バンク!? アラフォー女性の心も揺らす『素晴らしきかな、人生』鑑賞法

コラム

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文=須藤美紀/Avanti Press

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ウィル・スミス主演の映画『素晴らしきかな、人生』

働く女性に立ちはだかる「時間の壁」

妊娠、出産、育児、そしてそれにまつわる準備(恋愛、結婚などのアレコレも含む)は、女性から多くの「時間」を奪っていくものです。仕事が好きすぎて気付いたらアラフォーに突入してしまった女性にとって、限りある時間をどこに費やすかは大きな賭け。映画『素晴らしきかな、人生』に登場するクレア(ケイト・ウィンスレット)も、そんな「時間の壁」に激突している女性の一人です。ここではウィル・スミス演じる主人公のハワードではなく、彼の親友の賢き女性、クレア目線で「人生」の「素晴らしさ」を探ってみましょう。

クレアは、ハワードが経営する広告代理店の重役。ハワードは強力なリーダーシップで会社を導いてきましたが、愛娘の死をきっかけに心を閉ざしてしまいます。それから2年。ハワードの人柄と人脈が頼りだった会社の売り上げは徐々に悪化。ハワードに負けないくらい仕事を愛し、会社のために尽くしてきた共同経営者のホイット(エドワード・ノートン)、サイモン(マイケル・ペーニャ)、クレアの3人は「ハワードと共倒れするわけにはいかない!」と、ある“芝居”を打つことになります。

それは、ハワードが経営上もっとも大切にしていた「愛」「時間」「死」に扮した3人の俳優を、彼に接触させること。離婚後別居した娘との関係に悩んでいるホイットは「愛」を演じる美しき女優。同僚にも家族にも言えない大きな問題を抱えているサイモンは「死」を担当するベテラン女優。そして妊活のタイムリミットが迫っているクレアは「時間」を演じる俳優の演技指導にそれぞれ当たることになるのですが……。

精子バンクを使って一足飛びに母親に

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親友ハワードの心を救うため、共同経営者たちはある計画を練って…

仕事を心から楽しみ、会社の男たちを支え、後輩の面倒をみている間に、気が付けば30代も終わり。これから恋して結婚、妊娠して出産にたどり着いたとしても、そのとき私はいったい何歳!? でも一度しかない人生、子供も産んでみたい……。自分が母になるための時間が残りわずかだと気付いたクレアはいつしか精子バンクを使って一足飛びに母親になる道を探り始めていました。

でも精子バンクを利用することで婚活にかかる「時間」を省略したとしても、妊活にはまた別の「時間」と「お金」が不可欠。今はガッツリ仕事をこなして、その帰りにハワードに食事を届けることもできるけれど、妊活を始めた瞬間、これまで自由に使えていた自分の「時間」を削らなければならなくなるのです。

たとえば人工授精のために病院に通えるのは、基本的に平日のデイタイム。当然のことながら「仕事の合間にちょっと病院に寄って…」というわけにはいきません。かといって、結婚しない以上、仕事を辞めるという選択肢もあり得ない。そもそも自分は本当に1人で子どもを育てられるのか? そのために今をどう過ごすべきか、結論を出せないままクレアの「時間」は刻一刻と経過していきます。

ハートウォーミングな物語に潜むシビアさ

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主人公の親友・クレアを演じたケイト・ウィンスレット

とはいえ、本作の上映「時間」はたったの97分。限られた尺のなかで、主人公ハワードだけでなくホイットやサイモンが抱えた問題まで解決しなければいけません。そのためクレアの心の揺れは、精子バンクのサイトに向ける彼女の眼差しと、「時間」を演じる俳優との会話に集約されてしまっています。それでも、人生の後半戦に足を踏み入れたアラフォー女性が「時間」のシビアさを実感するには十分。

クレアがどんな結論を出すのか、出さないのか、あるいは出せないのか。「時間」を無駄にし続けてきたハワードを待ち受けているであろう充実した「時間」と比べて、クレアがこれから過ごす「時間」を思うと、アラフォー女性にとって「時間」は残酷。それでも、だからこそ、人生は素晴らしいのかもしれません。

映画『素晴らしきかな、人生』
2月25日(土)より 丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他全国ロードショー

(c) 2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)