男性の“視線の暴力”から女性を解放―パク・チャヌク監督インタビュー『お嬢さん』

コラム

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映画『オールド・ボーイ』(2003年)で第57回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ、『渇き』(2009年)で第62回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞。『イノセント・ガーデン』(2013年)でハリウッド進出を果たしたパク・チャヌク監督。注目の新作は、「このミステリーがすごい!」で1位を獲得したサラ・ウォーターズの「荊の城」を映画化した官能サスペンス『お嬢さん』。舞台は、1939年、日本統治下の朝鮮半島。日本文化を崇拝する富豪(チョ・ジヌン)、彼と暮らす令嬢・秀子(キム・ミニ)、彼女の財産を狙う詐欺師(ハ・ジョンウ)と孤児の少女・スッキ(キム・テリ)の4人が壮絶な騙し合いを繰り広げるさまをスリリングかつエロティックに描く。本作は、韓国で成人映画(R19指定)のオープニング記録を更新し、アメリカ、フランス、韓国ですでに500万人以上を動員。第42回ロサンゼルス映画批評家協会賞と第15回サンフランシスコ映画批評家協会賞で外国語映画賞と美術賞の2冠に輝くなど、批評家からも高い評価を得ている。本作のPRのため、約3年8ヵ月ぶりに来日したパク・チャヌク監督にお話を伺った。

Q:キム・ミニさんとキム・テリさんの濡れ場がとても刺激的でした。おふたりから情熱を引き出した秘訣を教えてください。

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2人だけ、私を含めた3人、さらに男優陣を交えて、というふうに複数回の台本読みを重ね、セリフが持つ意味を理解してもらうようにしました。そうすることによって、与えられた台本を読むだけでなく、彼女たち自身が意見を出すようになり、それに合わせて私が脚本を書き換えることもありました。

Q:観客の反応で、印象に残っていることは?

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本作に登場する男性ふたりは、本当に哀れで情けない男なんです。男性の観客の中には、心の狭い方がいて、居心地の悪さや不愉快な思いをされたようです。たいていの方は笑いながら楽しんでくれました。ただ、観客の約80%は女性で、その熱狂ぶりが雑誌に特集されたこともありました。中には映画館で111回観たという女性の観客もいらしたんですよ。

Q:批判的な意見に関してはどう思われました?

原作ファンの中には、男性ふたりが出過ぎている、女性の物語がもっと観たかった、とおっしゃる方もいました。原作通りに映画を作らなければならないという決まりはなく、私が4人の主人公のうちのふたりとして映画の中で育て上げたキャラクターと言えるので、そういった批判は残酷に感じました。私が男性だからこその批判も受けました。例えば、秀子の朗読会のシーンは男性の視線にさらされている状況ですが、一見すると視線の暴力を受けているように見えます。私が本作で描きたかったのは、男性の視線の暴力から解放される女性の姿。女性を讃える映画を作りたかったので、濡れ場を男性の視点で作るつもりは全くありませんでした。濡れ場のシーンは最大限気を遣い、慎重に撮っています。

Q:監督はハリウッド進出をされているので、原作通りイギリスでも撮れたと思うのですが、舞台を変更された理由は?

実は原作はすでに2005年にBBCが同名タイトルで映像化をしていて。私がどんなに違う脚本を書いても似てしまうと思い、舞台を変えたんです。そうすることによって、階級に加えて、敵対する二国間の国籍というもうひとつの壁が生じました。結果としてはより豊かな物語になったと思っています。衣装や美術に関しても、韓国の伝統的衣装である韓服を召使が着ているほか、日本とヨーロッパの要素を織り交ぜたような雰囲気もあり、さらに興味を引く仕上がりになっていると思います。

Q:日本映画界には、海外へ出ていく意欲がなく閉鎖的だという批判があります。海外で成功されているパク・チャヌク監督だからこそ感じる、日本映画界の問題点は?

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私は日本映画の現在の水準をあまり把握出来ていないかもしれませんが、黒澤清監督、是枝裕和監督、河瀬直美監督など、海外で活躍されている方がたくさんいます。三池崇史監督の作品も好きです。来日イベントで真木よう子さんにお会いしましたが、日本には彼女のように素晴らしい俳優がたくさんいます。もちろん、中国や香港にも素晴らしい俳優はたくさんいますが。もし、日本でそういった批判があるのでしたら、監督の人数が不足しているのではと思ってしまいますね。

『お嬢さん』
3月3日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給/ファントム・フィルム
(c)2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト/http://ojosan.jp

取材・文/田嶋真理

記事制作 : 田嶋真理

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