“日本のオトナ”の心にこそ響く!? 『モアナ』同時上映の短編『インナー・ワーキング』

コラム

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『インナー・ワーキング』
(C)2017 Disney. All Rights Reserved.

文=ロサンゼルス在住ライター 町田雪/Avanti Press

昨年末、ハリウッドにある米ディズニー傘下の劇場、エルキャピタン・シアターで行われた『モアナと伝説の海』の海外プレス向け試写会。子ども連れで参加できるディズニー・アニメーション映画の試写ならでは、各国ジャーナリストの子どもたちが期待に胸を膨らませる和気あいあいとしたムードのなか、本編前に上映された短編映画『インナー・ワーキング』は、その空間では世代的にも文化的にも完全にマイノリティである“日本人の大人”の記者の心に、最も響くのでは? と思われる内容だった。

司令塔の“脳”と弾けてみたい“心(臓)”
日系ブラジル人監督の人生を反映した物語

登場キャラクターは、内勤の会社員である男性ポールと彼の臓器たち。いつもと同じルーティーンをソツなくこなそうとする司令塔の“脳”と、自分の欲求に従って弾けてみたい“心(臓)”やその他の臓器との葛藤が描かれていくのだ。――シャワーを浴びながら、音楽に合わせて踊りまくりたい! いや、石鹸で滑って頭を打つからやめておこう。メイプルシロップたっぷりのホットケーキを頬張りたい! 肥満になるからダメ――。こんな具合に、心や臓器たちによる楽しい申し出は、心配性の脳によって、ことごとく却下される。ところが、いつも通りの単調な仕事に取り組むポールの脳は、心を無にして働く、乾いた目の同僚の姿を見ながら葛藤する。このまま冒険を恐れ、心を縛り付けたまま年をとり、ため息をつきながら人生を終えるのか? それとも……??

という内容なのだが、感じるがままに、心に正直に生きている子どもたちには、はたまた、比較的自由気ままに生きているアメリカの人々(もちろん、一括りにはできないが)には、この感じ、理解できるのだろうか? そんな疑問を抱えながら、帰ってクレジットを調べて納得。『インナー・ワーキング』の監督は、日本とブラジルという2カ国の文化が染みつく日系ブラジル人のレオナルド・マツダだった。同作に自分の人生を反映したというマツダは、「私のなかの日本的な部分は、とても論理的で、規律を守るタイプで、ブラジル的な部分では、カーニバルやパーティが大好き。まるで自分の体のなかで、内乱が起きているようだ」と語る。幼い頃から、ブリタニカ百科事典に描かれている人体の構造に魅せられていたそうで、主人公ポールの葛藤を、人格を持った臓器同士の内乱という形で、ユーモアたっぷりに描いている。

脳と心、仕事と遊び、自国と他国
相反する2つの要素は幸せに共存できるもの

脳や心臓、肺、腎臓、胃、膀胱など臓器キャラクターたちの愛らしさ、内乱のテンポの良さは、誰が見ても楽しめる。込められたメッセージに考えさせられつつも、最終的に、脳と心のみならず、全臓器のコラボレーションによるハッピー・エンディングへと導かれる流れも心地よい。社会人として生きていくためには心だけに従うわけにはいかないけれど、脳を優先しがちな大人だからこそ、ところどころで心に主導権を与えてあげれば、凝り固まった脳がほぐされて、また活性化するのかも。ポールの(脳の)葛藤と決断は、近年頻繁に語られているワークライフバランスのひとつの例ともいえそうだ。

それにしても、ファミリー映画『モアナと伝説の海』の同時上映として、この映画をあててきたディズニーにはアッパレ。とはいえ、『モアナと伝説の海』も、保守的な父親の心配や島の常識と、海と未知の世界に焦がれる少女モアナの本能の葛藤を描いているのだから、ある種の共通点があるといえる。脳と心、仕事と遊び、自国と他国……様々なレベルで相反するように思われる2つの要素は、バランスと前向きな姿勢、少しの冒険心によって、幸せに共存できるもの。そう思わせてくれる、ウィットに富んだ作品なのだ。

『インナー・ワーキング』(『モアナと伝説の海』同時上映)
3月10日(金)全国ロードショー
監督:レオナルド・マツダ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C)2017 Disney. All Rights Reserved.

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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