伝説の傑作『牯嶺街少年殺人事件』も…“実話”からなる少年たちの殺人事件簿

コラム

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(C)1991 Kailidoscope

台湾の巨匠、エドワード・ヤン監督が1991年に発表した『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』のデジタルリマスター版が3月11日から劇場公開されます。舞台は1960年代初頭の台湾。中国から移住してきた“外省人”の少年・シャオスーを中心に、その家族や友人との関係、不良グループとの抗争、外省人と現地人との軋轢など、当時の人々の心情や時代背景が描かれた青春群像劇であり壮大な叙事詩です。

そんな『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は、1961年に台北で起きた“14歳の少年によるガールフレンド殺人事件”がモチーフになっています。監督自身が上海から台湾に移り住んだ外省人であり、当の少年と同年齢。“台湾初の未成年による殺人事件”とされるこの事件は、14歳のヤン少年に大きな衝撃を与え、着想のキッカケになったようです。

そこで今回は、実際に起きてしまった少年による殺人事件と、その事件に着想を得た実話ベースの映画を紹介したいと思います。

コロンバイン高校銃乱射事件/『エレファント』(2003年)、『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002年)

1999年4月20日にアメリカのコロラド州にあるジェファーソン高校で起きた銃乱射事件です。犯人は同校に在学していたエリック・ハリス(18歳)と、ディラン・クレボルド(17歳)。校内の各所で約45分間にわたって銃を乱射し、12名の生徒と1名の教師を射殺、24名に重軽傷を負わせたのち、2人は自殺。未成年の少年たちによる大規模な無差別殺傷事件として、世界中に衝撃を与えました。 事件の背景にあったのはイジメ問題。いわゆる“スクールカースト”の下位の扱いを受けていた彼らは、日頃からイジメの対象になっており、対応してくれない学校や生徒へのうらみをつのらせていました。これはその復讐であったと言われています。本事件にインスパイアされた映画『エレファント』(2003年)には、イケメンでスポーツも得意な人気者、服装が理由で馬鹿にされる女子、イジメられている2人の少年などが登場。スクールカーストの世界が象徴的に描かれています。 また、ドキュメンタリー監督として知られるマイケル・ムーアは本事件を足が掛かりに、少年が簡単に銃を入手できるような「アメリカの銃社会問題」を告発するドキュメンタリー『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002年)を発表。インタビューに応える生徒の姿からも事件の凄惨さが伝わってきます。

梨泰院(イテウォン)殺人事件/『イテウォン殺人事件』(2009年)

“映画の公開をきっかけに捜査が再開された”とも言われているこの事件。1997年4月3日、韓国・梨泰院のハンバーガー店のトイレで、当時23歳の男子大学生が刺殺されたものです。 容疑者としてエドワード・リー(17歳)とアーサー・パターソン(17歳)が逮捕・起訴されますが、翌年4月、リー容疑者は証拠不十分で釈放。パターソン容疑者も服役中に特別恩赦で釈放され、出国禁止措置を延長する前にアメリカに渡ってしまったため、検察は2002年に起訴を中止しました。 事件が未解決のままだった2009年、本事件をベースにした映画『イテウォン殺人事件』が公開。事件の関係者の証言、調査と検証を行って制作されたクライム・サスペンスで、日本でも人気を博したチャン・グンソクが容疑者役の一人として出演しています。 劇中でも事件未解決のまま裁判は終了しますが、2014年、再捜査を始めた検察はパターソン容疑者を殺害犯と断定。また、リー容疑者の「彼が刺すところを見た」という証言を以って懲役20年を求刑。2017年に刑が確定しました。これは犯行当時未成年だった同容疑者に下せる最高刑です。しかし、共犯者のリー容疑者はすでに無罪確定の判決が出ているため罪には問えないとか。やや後味が悪い結末と言えるかもしれません。

ボビー・ケント殺人事件/『BULLY』(2001年)

1993年に米国フロリダに住むボビー・ケント(20歳)が殺害されるという事件が起きました。犯人はマーティン・プッチオ(20歳)と、17歳から19歳の少年少女。そして協力者のギャングを加えた計7名による犯行でした。 マーティンは小学生の頃からボビーにイジメられ続けていました。日常的に暴力を振るわれ、夜遊びで高校中退に追い込まれ、プロを目指していたサーフィンも強引に摂取させられたプロテインが原因で体重が増加し断念しています。さらには恋人と友人の女性(17歳。犯行に加担)にも手を上げ、性行為を強要。これらのボビーの所業に耐えかねた末の犯行でした。 この事件を題材にしたノンフィクション本「なぜ、いじめっ子は殺されたのか?」を原作にして制作されたのが、2001年公開の映画『BULLY』。『マイ・フレンド・フォーエバー』(1995年)などで知られるブラッド・レンフロ、『ターミネーター3』(2003年)のニック・スタール、テレビドラマ「スーパーナチュラル」のレイチェル・マイナーといった当時の若手俳優が出演しています。 裁判ではマーティンを主犯とし終身刑を言い渡しましたが、殺害をそそのかし仲間を集めたのは、マーティンの恋人だったリサ・コネリー(18歳)と言われており、本作でもその面が強調されています。

“少年殺人”という重くショッキングな事件。『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』で描かれるのは、その事実をもとにした思春期特有の人間ドラマです。凶行に走ってしまった彼らを取り巻く環境や社会がどのようなものであったのか? 報道だけでは見えてこない一面が、映画を通して伝えてくれるかもしれません。

(文/三好キスケ@H14)

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』
3月11日(土)より角川シネマ有楽町、 3月18日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

(C)1991 Kailidoscope

記事制作 : H14

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