文=中山治美/Avanti Press

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(左上から)ノルウェー国際映画祭、TOKYO FILMeX、カルロヴィ・バリ国際映画祭、
東京国際映画祭、サンセバスチャン国際映画祭。
東京国際は一時期エコをテーマに掲げ、ペットボトルをリサイクルしたバッグを作成していたが……

米アカデミー賞授賞式が終わり2017年度の映画界は一区切り。映画関係者は今ごろ、今年一番の勝負作を、5月のカンヌ国際映画祭(仏)で世界初披露しようと水面下で攻防戦を繰り広げているはず。その世界三大映画祭の一つであるカンヌをもって2018年度の映画祭サーキットが本格的にスタートし、これから映画祭関連ニュースがグンと増えるが、その前に、各映画祭の情熱や特色、センスまで如実に表れている各映画祭オリジナルグッズの観点から注目したい。

虎と熊の最強シンボル。ロッテルダム、ベルリン国際映画祭の場合

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ロゴを生かした商品開発に力を入れるロッテルダム国際映画祭とベルリン国際映画祭の品々。
デザイン性も高く売店は連日長蛇の列。ロッテルダムは今年スーザン・ベルと、
過去にはEASTPAKとのコラボ・ショルダーバッグを作成している(上段中央)

デザインの高さから言えば、ロッテルダム国際映画祭(オランダ)とベルリン国際映画祭(ドイツ)。前者はタイガー、後者はクマという最強のシンボル・マークを持ち、特にロッテルダムは、書籍「ロゴ コンストラクション 世界のロゴデザインの発想から完成まで」(パウラ・ジャコムッシ著。パイインターナショナル刊)で一例に取り上げられているほど商業デザイン界でも評価が高い。

ロゴを生かした商品展開の豊富さでも双璧をなし、定番のトートバックから傘やベビー服もあり、家族揃って全身コーディネートも可能だ。共に会期中、30万人~40万人の来場者を迎える巨大映画祭だけに1人がお土産に最低10€(約1190円)を使ったら……と換算したら、自ずと商品開発に力が入ることも頷けるだろう。

中でもロッテルダムはその年の限定商品が好評。今年は地元のデザイナーで、2トーンカラーのナイロンショッピングバッグが世界的にヒットしているスーザン・ベルとコラボレーションし、ロゴ入りのナイロンショッピング・バッグとポーチを発売。バッグは37.5€(約4462円)、ポーチは22.5€(約2677円)と少々お高めだが、計800個が会期中に完売してしまった。これはオランダでアムステルダムに続く第2の人口規模を持つロッテルダムという街を、より国際的にアピールしようと手を組んだという。

商品開発を手がけたFilter Studio(ロッテルダム)は「スーザン・ベルにとってもロゴをリップストップナイロンにプリントするのは初めての試みだったので、エキサイティングな企画でした。私たちは常にトレンドを取り入れつつ、ワクワクするようなオリジナリティ溢れる商品の開発を目指しており、何より長期的に使用できるモノをと考えています」と語る。

気持ちと形を手土産に。ウディネ・ファーイースト映画祭の場合

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上段がウディネ・ファーイースト映画祭が作成した東日本大震災とハイヤン・タイフーンのチャリティーバッグ。
下段はの2010年のローマ国際映画祭とベネチア国際映画祭(右)。予算が厳しいのかベネチアはグッズに力を入れない。

小規模な映画祭ゆえ、映画祭グッズをPRに生かそうと力を入れているのがウディネ・ファーイースト映画祭(イタリア)だ。北イタリアにある人口10万人の小都市ウディネで開催されているアジア映画専門の映画祭で、1999年スタートと歴史が浅い。それでも期間中、約6万人が国内外から訪れる。同映画祭プレジデントのサブリナ・バラチェッティが語る。

「映画祭グッズに対する私たちの方針は、まず映画祭の思い出を形として自宅に持ち帰って欲しい。なので誰もが購入しやすいように低価格に抑えています。さらに望んでいるのは、その商品が世界中を旅してくれること。商品を通して、私たちが発信しているポップカルチャーや映画祭の雰囲気そのものを伝えることができればと思っています」。

ウディネは映画祭グッズを通して自分たちのメッセージを伝えるのが得意で、2011年には東日本大震災、2013年にはフィリピンのハイヤン・タイフーン用のチャリティ・トートバックを作成した。映画祭グッズの収益は、映画祭総収入の約2%だというから募金額はそう多くはなかったと思うが、この気持ちが嬉しい。バッグは映画祭参加者には無料で配布されるので全員が持つことになり、一体感も生まれる。日本やフィリピンの参加者がこの光景を見たら、感涙してしまうだろう。

記者も喜ぶ便利なリュック 釜山国際映画祭の場合

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機能性重視の釜山国際映画祭は例年リュック型で、とにかく丈夫。写真は2016年のもの。
プレスやマーケット、監督、俳優などゲストによってデザインや色が異なる。一番人気のプレスは白×黒。

実用優先なのが、釜山国際映画祭(韓国)。

映画祭期間中は紙モノの資料が多く、それにパソコンやカメラを持ち歩くとなると丈夫なカバンが必要になってくる。同映画祭はそうした参加者の要望に応えるかのような、毎回、大きめのリュックサックを作成。このリュックで映画祭サーキットを回っている記者も多い。立派な釜山国際映画祭の広告塔だ。

これ、ください! カンヌ国際映画祭の場合

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歴代パルムドール受賞監督の名前が刻まれているカンヌ国際映画祭60回記念のショルダーバッグ。

ちなみに、バラチェッティに「最もグッズが素晴らしいと思う映画祭は?」と尋ねたらカンヌ国際映画祭の名前が上がった。おフランスだけに同映画祭が作成するバッグはデザイン性に富んでおり、毎年楽しみにしている人もいる。筆者の宝物もカンヌ国際映画祭の60回記念の時のバッグで、フジファブリック「カンヌの休日feat.山田孝之」の歌詞に出てくる歴代のパルムドール受賞監督名が入っている、ちょっと自慢したくなる一品。過去には港街に似合うボーダーのリュックもあった。俳優・山田孝之がカンヌに憧れる気持ちも分かるだろう。

たかが映画祭グッズ、されど映画祭グッズ。

しかし経験上、ここに力を入れている映画祭は、比例して映画祭の中身そのものも充実しているのだ。