文=皆川ちか/Avanti Press

テレビ東京系列の金曜深夜枠〈ドラマ24〉で現在放送中の「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」が、熱い。遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研。日本映画界に欠かせない6人の名バイプレイヤーが一つ屋根の下で共同生活を送るという、おじさん版“テラスハウス”だ。生活感あふれる会話をはじめ、俳優論のぶつけ合い、はたまたLINEで盛り上がるミーハー話まで、彼らのキャッキャウフフなやり取りが“ぐっとくる!”と、各方面で反響を呼んでいる。

中年男の渋みと愛嬌、大人っぽさとかわいらしさを兼ね備えた生物、おじさん。そんなおじさんの魅力をとことんまで追求した映画が、エーゲ海のはるか彼方、ギリシャからもやってくる。タイトルはずばり、『ストロングマン』。奇しくも登場人物は「バイプレイヤーズ」と同じく、6人のおじさんだ。

洒落たヨットで男だけのクルージングを楽しんでいたおじさんたちは、退屈しのぎの一環として、この中で誰が〈ストロングマン(最高の男)〉なのか決めるゲームをすることになる。冗談半分で始めたはずが、次第にムキになっていき、後には引けないしのぎの削り合いにまで発展してゆく……。

シンプルかつ“微妙”なゲームが明らかにする
おじさんたちの捨てきれないこだわり

ゲームの内容はいたってシンプル、かつ微妙だ。寝相の良さ、会話の技術、コーヒーの飲み方といった、スマートに見えるかどうかに重きを置いた項目。掃除・料理などの家事スキルや、組み立て家具を組み立てられるかという、男として、人として、役に立つか度を測る項目。さらにはスポーツ能力に加え、血糖値チェックまでも……。ここまではギリギリゲームとして純粋に楽しめるのだが、男の象徴の大きさ、元気さの勝負に彼らが一喜一憂する流れになっていくあたりから、笑い(それも苦笑・失笑系)の中にひそませたテーマに気がつく。

“男らしさ”とは、涙ぐましい努力と、日々の生活の中での自信の積み重ねでできている。そして、いくつになっても男性は“男らしさ”にこだわってしまう。いや、こだわらざるを得ない、と。性欲はあれど肉体の反応が追いつかず、結果、体を鍛える方向へとシフトしていく自意識を筆頭に、年をとることで焦りにも似た承認欲求が、どんどん増してしまうからだろうか。

まじめで、ちょっと滑稽、でも愛らしい
中途半端な年代の男“おじさん”

強い男、頼りがいのある男、そしてイケてる男。そんな〈ストロングマン〉に俺はなる! と自らを奮い立たせ、傍からすれば、かなりどうでもいい競争にのめり込んでいく中年男たちのひたむきさと、いじらしさ。みんなまじめで、ちょっと滑稽で、そこが愛らしい。

もうさほど若くもイケメンでもない、ごくごく普通のおじさんたちだからこそ、私たちは彼らに共感し、気づけば応援してしまう。若者には醸し出せない味わいを出しつつも、老人の貫禄にはまだ及ばない、中途半端な年代の男たち――おじさん。その中途半端さが、渋いのにかわいい、大人っぽくて子どもっぽい、おじさん特有の魅力を生み出している。

『ストロングマン』
3月25日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督:アティナ・ラヒル・ツァンガリ
脚本:アティナ・ラヒル・ツァンガリ、エフティミス・フィリップ『籠の中の乙女』『ロブスター』
配給:ファインフィルムズ
(c) 2015 Faliro House & Haos Film