4月8日(土)に公開される『ブルーハーツが聴こえる』は、1995年に解散した伝説のバンド、THE BLUE HEARTS(以下、ブルーハーツ)の楽曲から、6人の気鋭監督がそれぞれ思い入れのある1曲を選んで映像化したオムニバス映画です。

大人になってもずっと心の奥にいる、ザ・ブルーハーツ

THE BLUE HEARTS(以下ブルーハーツ)が日本の音楽シーンに登場した1980年代後半、その頃の学校社会は、勉強ができない子は落ちこぼれの烙印を押される苛烈な受験戦争の真っ只中でした。そして、今なら世間から大バッシングを浴びるような体罰も当たり前。地域にもよりますが、校則で前髪やスカートの丈の長さが数cm単位で決められている……そんなバリバリの管理教育社会でした。特に不良でもない普通の学生でも大人や社会への反抗心、何か鬱屈した気持ちを抱えていたのではないでしょうか。

そんな時代の空気の中に、現れたのがブルーハーツだったのです。 いったい彼らの何が若者たちの心をつかんだのか? 荒々しくもキャッチーなメロディだったり、攻撃的なファッションだったり、理由は数多くありますが、あえて誤解を恐れず一つ挙げるとするならば、それは言葉。“詩”の力だったように思えます。

「大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない」(『少年の詩』より)

「花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方」(『情熱の薔薇』より)

ときに尖ったアイロニーたっぷりの反抗心を、ときに美しいメタファーで綴った内省的な想いを歌詞に乗せた彼らの言葉は、それこそ引用した歌詞ではないですが、青臭かった僕らの心の奥に突き刺さりました。

ブルーハーツは1995年に解散しますが、残された楽曲の数々は、その後も、多くのミュージシャンにカバーされ、CMやTVドラマ、映画などでも繰り返し使用されています。 時代が移り変わっても共感できる普遍的なメッセージ性が、決して色あせないブルーハーツの魅力なのではないでしょうか。

珠玉の6曲をブルーハーツ愛に溢れる監督と出演者が映像化!

バンド結成30周年を機に企画された本作は、青春時代にブルーハーツの洗礼を受けた監督たちが、自ら選んだ楽曲を自由な解釈で映像化した6本の短編映画から構成されています。尾野真千子さん、市原隼人さん、斎藤工さん、優香さん、永瀬正敏さん、豊川悦司さん等、超豪華な出演者の競演も見どころのひとつ。ブルーハーツのファンだと語る出演者も多く、6人の監督とタッグを組んで、それぞれの楽曲への想いを作品にぶつけています。
映画のサブタイトルにもなっている一節、「いつまで経っても変わらない、そんな物あるだろうか」――『ブルーハーツが聴こえる』は、彼らからメッセージを受け取った監督たちが、出した答えなのでしょう。

ハンマー(48億のブルース)

中学2年生の時「初めて生で観たTHE BLUE HEARTSに、撃ち抜かれた」と語る飯塚健監督(『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』)が、劇団員の彼氏の浮気に悩むアラサー女性の焦燥をポップな演出で描きます。モチーフとなったのは、「ハンマーが振り下ろされる 僕達の頭の上に」という意味深なフレーズが印象的な同名曲。ヒロインにとってのハンマーが何を意味するのか想像しながら鑑賞するのも楽しい一編です。
出演:尾野真千子、角田晃広、萩原みのり、伊藤沙莉、吉沢悠、余貴美子/ 監督:飯塚健

時代を超える伝説のバンド!ブルーハーツの魂の叫びを聴け!(c)TOTSU

人にやさしく

下山天監督(『L -エル-』)がメガホンをとり、遥か未来、刑務所惑星を目指す囚人護送船を舞台に極限下のサバイバルを映像化した本格SF作品。「でっかい声で言ってやる ガンバレって言ってやる」と歌う、苦しんでいる人への応援歌ともいえそうな楽曲がモチーフ。ブルーハーツとSFという、相容れなそうな組み合わせが違和感なくハマっているのは、彼らの楽曲が、どんな世界でも変わらない人間の普遍的な感情を歌っているからかもしれません。
出演:市原隼人、高橋メアリージュン、浅利陽介、瀧内公美、加藤雅也、西村雅彦/ 監督:下山天

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ラブレター

井口昇監督(『ヌイグルマーZ』)による初恋ファンタジー。25年前にタイムスリップしてしまった脚本家が、片想いをしていた美少女を救うために大奮闘します。モチーフは「今度生まれた時には 約束しよう 誰にもじゃまさせない 二人の事を」という切ないフレーズが胸をうつラブソング。「ラブレター」を聴いて高校時代の失恋した時の気持ちを映像化したくなったと語る井口監督が、ノスタルジックな恋愛模様を抒情豊かに描きます。
出演:斎藤工、要潤、山本舞香 / 監督:井口昇

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少年の詩

清水崇監督(『呪怨』シリーズ他)が、特撮ヒーローに憧れる息子とシングルマザーの母親の愛情と絆を描くヒューマンドラマ。「僕だってちゃんと考えてるんだ」、「大人たちにほめられるような バカにはなりたくない」という少年の想いを歌った同名曲がモチーフ。楽曲中の少年を思わせる主人公の、純粋な衝動が爆発する瞬間に注目!
出演:優香、内川蓮生、新井浩文 / 監督:清水崇

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ジョウネツノバラ

監督は、数々のTVCMを演出し、本作が映画監督デビューとなる工藤伸一氏。全編セリフなしという実験的なスタイルで、最愛の女性を亡くした男が、永遠のつながりを求めて亡骸を奪い去るという異色のラブストーリーを展開します。モチーフの「情熱の薔薇」は、オリコンシングルチャートで1位を獲得し、CM曲として何度も使用された、ブルーハーツの楽曲の中でも特に知られたナンバー。序盤のフレーズ「いつまで経っても変わらない そんな物あるだろうか」という問いかけへの答えとは?
出演:永瀬正敏、水原希子、藤崎ゆう/ 監督:工藤伸一

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1001のバイオリン

「(ブルーハーツは)理不尽が溢れるこの世界で、決して諦めてはならないと叫んでいる」と語る李相日監督(『怒り』)が、福島原発の元作業員を主人公に、“3.11”の悲劇に翻弄された一家の姿を描く社会派ドラマです。「夜の扉を開けて行こう 支配者達はイビキをかいてる」という権力者への抵抗や生きることへの喜びが感じられる楽曲をモチーフに、現代社会へのメッセージがこめられた一編。
出演:豊川悦司、小池栄子、三浦貴大、石井杏奈、荒木飛羽/ 監督:李相日

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コメディー、SF、ラブファンタジー、ヒューマンドラマと、ジャンルも様々な6本ですが、全編を通して共通するのは、困難な状況に対して必死に立ち向かう人々の姿。それはブルーハーツの歌に励まされ、勇気づけられた人々の姿にも重なります。ブルーハーツのファンも、まだ聴いたことがないという方も、『ブルーハーツが聴こえる』で、時を経ても色褪せない彼らの楽曲の魅力に触れてみてはいかがでしょうか?

文/高羽泰雄@プロダクションベイジュ