“史上最も有名なファースト・レディ”と呼ばれ、ジャッキーの愛称で親しまれたジャクリーン・ケネディ(1929〜1994年)。3月31日公開の『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』は、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領を<永遠の伝説>にした彼女の知られざる物語を描いた伝記ドラマです。

ジャッキーを演じたのは、『ブラック・スワン』(2010年)でアカデミー主演女優賞に輝いたナタリー・ポートマン。同作の監督ダーレン・アノロフスキーがプロデュースした本作で、可憐さとしたたかさが共存するタフなファーストレディ、世界の女性が憧れる“トップ・オブ・ウーマン”を見事に演じました。

劇中でジャッキーが出演したアメリカのTV番組「ホワイトハウス・ツアー」を完全再現。セリフや衣装、話す位置まで実際の映像をトレースしているというから驚きです。時おり実際のインタビュー映像も挿入されますが、ジャッキーのハスキーボイスやイントネーション、小首をかしげる仕草を猛特訓したナタリーの努力が功を奏し違和感をまったく感じさせません。

こうした政界で輝きを放つ女性を描いた映画の裏には、実在した彼女たちになりきった女優のたゆまぬ努力が隠されています。今回は信念と愛に生きた“トップ・オブ・ウーマン”たちのドラマと、その主演女優たちの役づくりに迫ります。

メリル・ストリープ…“鉄の女”サッチャー首相を完コピ!

英国初の女性首相マーガレット・サッチャー(1925〜2013年)の栄光と、その陰に隠れた孤独と苦悩を切り取った『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011年)。サッチャーを演じたのは、アカデミー賞史上最多20回のノミネートを果たしたメリル・ストリープです。“鉄の女”と呼ばれたサッチャーの、希望に燃えた青年期から夫を亡くし認知症を患った86歳までの約半世紀を重厚な演技で熱演し、3度目のオスカー受賞となりました。

サッチャーを演じるにあたり、ストリープはロンドンの議会を訪れ議員の質疑応答を観察し、サッチャーの人物像や背景、好みに至るまで入念にリサーチ。髪型や表情の完コピはもちろん、議員時代と党首時代では声色が変わったことに着目して、異なる2種類の声質も体得したそうです。撮影中も常にサッチャーが愛した英国王室御用達の「ペンハリガン」の香水を身につけるなど、その徹底的な姿勢は、役作りに努力を惜しまないロバート・デ・ニーロの女性版といえるかもしれません。

ナオミ・ワッツ…ダイアナになり切るため“お引っ越し”!?

オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督作の『ダイアナ』(2013年)は、イギリス元皇太子妃ダイアナ・フランセス(1961〜1997年)が、離婚後、交通事故で亡くなるまでの2年間を描いた物語。演技派女優ナオミ・ワッツが、不倫騒動や王室内の確執で傷つきながらも、地雷除去などの慈善活動を行い、恋人ハスナットと新たな人生を歩もうとするダイアナを好演しています。

実はナオミは、当初ダイアナの実子ウィリアム&ヘンリー王子の作品評価を心配して、出演を2度断っています。しかしオファーを受けてから、ロンドンに引っ越しまでして環境から役作り。眉を寄せる表情、ささやくような話し方や立ち居振る舞いなど完璧にマスターし、細かくレイヤーの入ったカールの金髪ショートヘアを再現。個性的なダイアナの鼻の形も特殊メイクで作りこんで撮影に臨み、好評を得ました。

ニコール・キッドマン…モナコ公妃の毅然とした美しさを再現

ハリウッドの人気女優からモナコ公国の公妃となったグレース・ケリー(1929〜1982年)が、国家存亡の危機に一計を案じた姿を映した『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(2013年)。愛する家族と国を救うために、その人脈とネームバリューを駆使して“一世一代の大芝居”を打った彼女を、ニコール・キッドマンが艶やかに演じています。

ニコールは数多く残されている映像記録や写真を繰り返し観ながら、ゆっくりと彼女の本質にアプローチする方法で役作り。ヒッチ・コックの女優復帰へのオファーに心乱れながらも、最終的には国のために生きる運命を選択したグレースを、毅然として美しさで再現して評判となりました。

しかしその一方で、彼女の息子アルベール2世が「母のグレースを美化する一方、父のレーニエ3世の描き方が史実として不正確」として批判する一幕も。伝記ではなく人間ドラマを描きたかったというオリヴィエ・ダアン監督が言う通り、本作はグレース・ケリーの気高い生き様にフォーカスして描かれた感動作です。

このようにパワフルな実在女性を銀幕に蘇らせるために、その演者である女優たちも並々ならぬ努力をしています。外見だけでなく内面までも表現しようと心を砕く……その女優魂も併せてお楽しみくださいね。

『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』3月31日(金)より全国公開-(C)2016 Jackie Productions Limited

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)