『ブルーハーツが聴こえる』4月8日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
(c)TOTSU、Solid Feature、WONDERHEAD/DAIZ、SHAIKER、BBmedia、geek sight

なぜときどき無性にTHE BLUE HEARTSの曲が聴きたくなるのか?

コラム

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文=石村加奈/Avanti Press

大人になった今でも、THE BLUE HEARTS(以下ブルハ)の曲を聴くと、幾度となく彼らの歌に救われたティーンエイジャーの頃のように、勇気が湧いてくる。2015年に結成30周年を迎えたブルハの名曲を、6人の監督が自由に解釈して映像化したオムニバス映画『ブルーハーツが聴こえる』から3作品を厳選し、その魅力に迫ってみたい。『ラブレター』の主人公・大輔(斉藤工)、『ハンマー(48億のブルース)』のヒロイン・一希(尾野真千子)、『1001のバイオリン』の主人公・達也(豊川悦司)。3人の大人たちに、ブルハの曲はどう響いたのだろうか?

ただ君の幸せを願う『ラブレター』

『ラブレター』の主人公、脚本家の大輔(斉藤工)と親友の純太(要潤)。彼らは、事故死した高校の同級生・彩乃(山本舞香)との思い出深い曲に導かれるように、25年前の1989年にタイムスリップしてしまう。すでに大人になった大輔は、彩乃の運命を変えるべく奮闘するのだが……。「ラブレター」で歌われる、自分のことよりも、好きな人の幸せを願う素朴な想いと、懐かしの学ラン姿に恥じることなく奔走する、斉藤工扮する主人公の美少女への憧れが、美しく重なる(当時、全くイケてなかった大輔が、斉藤工体形に痩せた理由も大層切ない)。彼女を死なせまいと頑張る大輔の姿に、年を重ね大人になっても、相変わらず無力であろうとも、その時の自分にできることをひたむきにやるしかないのだというシンプルな真実を思い出して、清々しい気持ちになる。ラストシーンの、大輔の吹っ切れたような笑顔にグッとくる。

48億の個人的な憂鬱に振り下ろせ『ハンマー(48億のブルース)』

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『ブルーハーツが聴こえる』4月8日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
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『ハンマー(48億のブルース)』というタイトル曲の、ハードなぶっ壊しソングに背中を押されて、ダメな自分を打破していくヒロイン・一希(尾野真千子)。三十路を目前に控えた一希は、いまさら一人ぼっちになるのが怖くて、すっかり終わってしまった恋にピリオドを打てずにいた。堂々巡りの一希の愚痴にいつもつき合ってくれる、勤め先の久保先輩(東京03の角田晃広)や女子高生コンビ(萩原みのり、伊藤沙莉)。タテノリのマシンガントーク&重量感ある正論で、一希の憂鬱を吹き飛ばそうとする3人だが……。彼らの辛口の優しさをしのぐ、ブルハの歌のストレートで力強いメッセージの破壊力を受けて、ラストシーンの一希の表情は、やんちゃでイキイキとしていた。停滞するものを、大きな力で押し流してしまいたい。そう感じる大人の心に表題曲が沁みる。

台無しな昨日を帳消しに『1001のバイオリン』

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『ブルーハーツが聴こえる』4月8日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
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『1001のバイオリン』の主人公・達也(豊川悦司)は、東日本大震災を機に、家族4人で東京に越してきた福島原発の元作業員だ。新しい生活に早く慣れようと努める妻子とは対照的に、過去を忘れてしまうことに抗い、家族の中でも孤立する達也は、地元の後輩・安男(三浦貴大)を連れて、故郷に残してきた飼い犬を探しに出かける。映画では、犬が見つかるでもなく、達也に劇的な心境の変化が訪れるわけでもない。ただ、映画のラストの、画面いっぱいに朝の新しい光が満ちる中を、表題曲が流れる時、福島にいる達也を思って笑い合う妻(小池栄子)と娘(石井杏奈)の横顔が素晴らしいのだ。その笑顔に、今はまだしっくりいかずとも、この先もずっと一緒に生きていくであろう、この一家に希望を感じた。老いも、若きも、男も、女も、不器用な人間が懸命に生きようとする姿に、壮大なブルハの歌がよく似合う。ブルハの曲が流れる世界では、自分も壮大な物語の立派な主人公だ。「1001のバイオリン」は、そんな自信を与えてくれる。

誰もが、ほかの誰にも請け負うことのできない、自分の人生を生きている。だから前に向かって、精一杯歩いていくしかないのだ。そんなシンプルなメッセージを、力強いメロディに乗せて、甲本ヒロトが高らかに歌い上げ、励ましてくれる。ティーンエイジャーにも、子どもの頃とは異なるジレンマを抱える大人にも、どんな時代にもぴったりと当てはまるエールだからこそ、ブルハの歌を聴くと元気が出るのだろう。

余談だが、「ブルーハーツのテーマ」という曲に、“あきらめるなんて死ぬまでない”というメッセージが歌われている。実は完成後、一時は公開中止の危機に陥っていたという本作。クラウドファンディングで資金を集めて、ようやく全国公開にこぎつけた。ブルハらしい不死身のエピソードも、映画にきれいな花を添える。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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