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“17歳”はこじらせ絶頂期!? イタくて情けないけど愛おしい青春映画『スウィート17モンスター』

コラム

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あちゃー! と頭を抱えたくなるような派手な失敗や勘違いに、更なる恥の上塗りのオンパレード。思春期をこじらせた17歳の女の子が、心と体がアンバランスな自分を持て余して迷走する姿が、見る者の苦笑と共感を大いに誘う青春映画『スウィート17モンスター』が4月22日から公開されます。身悶えするほど身に覚えアリ! そんなみっともなくもピュアでまっすぐなヒロインを、思春期をくぐり抜けてきた誰もがきっと愛おしく感じてしまうはずです。

思春期特有の狂おしい混乱

主人公ネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)は17歳。周囲にうまく馴染めず、思春期らしく色んなものにイラついて、家族や先生に食ってかかったりしているけれど、実はもっともイラついているのは、空回りばかりしている自分自身。心の拠りどころは、たった一人の親友クリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)。ところが、ひょんなことから筋肉バカのリア充と蔑んでいた兄ダリアン(ブレイク・ジェナー)とクリスタが交際することに。親友の裏切りに大いに傷つき、ビリヤードの球みたいにあちこちに頭をゴンゴンぶっつけながら駆け抜けるネイディーンの青春模様が、コミカルにいきいきと描かれています。

ネイディーンの思春期のこじらせ方は、ある意味とってもストレートで、オーソドックス。家族とは口論ばかり、学校では周囲とうまくやれず、性のことにはすごく興味があるけれど、口ばっかり過激でおよび腰。周りをバカだと見下して、自分に都合の良い解釈でめちゃくちゃな理論武装。周りの大人は絶句してため息をつくしかないあの強烈に恥ずかしい感じは、万国共通です。

加えて、母子家庭での暮らしぶりや、SNSで「うっかり送信」してしまった時の、叫び出したいくらいの羞恥心など、今の時代ならではの共感ポイントも多く散りばめられています。思春期を終えた人も、今、思春期まっただ中の人も「大丈夫、君だけじゃないよ! 死にゃあしないよ!」と、思わず励ましたくなってしまうことでしょう。

泣きたいくらい情けない自分と向き合って気づくこと

そんな10代のみじめな混乱をいかに乗り越えていくかが、この作品のみどころ。同時に本作は、大人になるということの危うさ、誰もが渡る“危ない橋”についても描いています。そんな時、何が私たちを救い、足を踏み外さないよう踏みとどまらせるのか?

アホだと呆れていた家族、孤独な奴と見下していた教師、周りに自慢できそうな軽薄なイケメンしか目に入らなくて、隣の席に座るチャーミングな男子生徒の魅力にはてんで気づかない。身近な人たちを軽んじて傷つけ、同時に自分自身をも斬りつけている、はた迷惑な“悲劇のヒロイン”ネイディーン。 そんな彼女が、手痛いしっぺ返しをくらって絶望した時、ずっとバカにしてきた身近な人たちの思慮深さや温かさに触れ、ネイディーンは打ちのめされることになります。 それは、苦しみ、もがいていた醜いさなぎの殻にひびが入った瞬間です。 ほろ苦いブレイクスルーを経て、さなぎの中からおずおずと現れた、健やかで愛らしい蝶の姿に、胸がじんわりと温かくなります。

アメリカの批評サイト「ロッテントマト」で満足度95%という高評価をたたき出した本作。しかし、これまでにない何か新たなアピールがある、という映画ではありません。むしろ奇をてらうことなく、実に素直な作品という印象です。今年の賞レースを席巻した『ラ・ラ・ランド』同様、アメリカらしいユーモアと爽やかさが際立ち、複雑な陰謀や謎とは対極のシンプルさこそが本作の持ち味でしょう。あるいは、今のアメリカの現実が、何を信じればいいかもわからない、シンプルとは言いがたい状況だからこそ、率直でまっすぐな愛情を感じさせるこんな作品が、多くの人に求められているのかもしれません。

(文/谷直美@HEW)

記事制作 : HEW

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