映画『3月のライオン 後編』は4月22日より全国公開

『3月のライオン 後編』神木隆之介&伊勢谷友介 インタビュー

インタビュー

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

負けず嫌いが似ている

羽海野チカによる漫画を、『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督が2部作として実写映画化した『3月のライオン』の後編。プロ棋士である孤独な高校生、桐山零を演じた神木隆之介と、零と温かい絆を結ぶ川本3姉妹のワケありの父親、誠二郎を演じた伊勢谷友介が撮影を振り返った。

ギャップがない神木と零

Q:お二人はここ数年共演が続きますが、今回の役柄に触れてどう感じましたか?

伊勢谷友介(以下、伊勢谷):映画を観ていて、神木君と零でギャップを感じなかったんです。なんていうんだろう……意外と心の中ではいろいろなことを思っていて、テンションが上がると先にそういうことをしゃべり過ぎちゃって、聞いている人が途中で置いてかれるみたいなところがある(笑)。

神木隆之介(以下、神木):はい(笑)。

伊勢谷:それを零も持っていて、しゃべり出したら止まらないでしょう? こうと思ったらどんどん話し出すけど、普段はず~っと内にこもっている。でも心の中にはちゃんとした想いがあって。そういう感じをそのまま素直にやっていたのかなと思ったんだけど。

神木:僕もとても負けず嫌いですし、確かに意外と近いところはあったと思います。一人でいるときの雰囲気はあのような感じかもしれないです。そう思えたので役づくりの上で、共感できるところがありました。もちろん性格のある部分を自分とは変えたり、癖をつけたりはしていました。

Q:漫画の実写化作品はそうでない作品と比べ、取り組み方に違いがあるものですか?

伊勢谷:僕ちょうど、同じ羽海野さんの『ハチミツとクローバー』にも出させていただいて。今回も出ている加瀬(亮)君とも一緒だったんです。そちらの縁を強く感じていたので、そんなに気にしていませんでした。ただ最近『るろうに剣心』、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』と、実写にしてゴメンなさい! みたいな作品が続いています(笑)。

神木:どれも大きな作品ばかりですよね。僕自身、漫画が大好きなので、一観客として好きな漫画が実写化された映画を観て、この役者さんはキャラクターのこんなところまで見てる! とお芝居に誠意のようなものを感じたとき、その役者さんを素敵だなと思うんです。僕ら原作ファンのことをきちんと考えてくださっているんだなと。なので自分が実写化に関わるときは、どれだけその役に愛を持って挑むか? それが誠意の一つになるのかなと。まさに今回も、すごくプレッシャーでした。しかし、監督と良い意味で原作にとらわれ過ぎないようにしようと話はしました。桐山零としてしっかりと生きて、それが回り回って原作に沿うように、と心掛けました。

大友監督の丁寧な演出

Q:前編で零が初めて川本家へ行くとき、橋の上を走るシーンはかなりテイクを重ねたそうですね?

神木:原作にないカットだったこともあって、20回以上テイクを重ねました。

Q:特に伊勢谷さんは『るろうに剣心』シリーズ以外にもNHKドラマ「白洲次郎」「龍馬伝」などで大友監督とご一緒されています。過去の作品でも、テイクを重ねる場面は多かったですか?

伊勢谷:たくさんあったと思います。決まるときはめちゃくちゃ速いのですが、いいカットが撮れるまで粘ろうとする時間は必ずあるという気がしますね。今回もそうで、かなり細かくやっていました。セリフの言い方にしても、誠二郎って微妙なところだと思うんです。どこまで悪い人になるか? ただ怖い人に振り切ってもダメだし、弱いだけでもダメ。狂気も少し含みながらと微妙なさじ加減が必要な役柄だったので。たぶんほかのみなさんも苦労されたと思います。わからないですけど、香子を演じた有村架純さんとか。普段の彼女とは全然違う役柄に見えたので。

神木:お寿司を16貫、食べたと言っていました。

伊勢谷:なんで? 回転寿司で? 8皿分!?

神木:いえ、お寿司を食べるシーンで(笑)。零の部屋に来た香子が……。

伊勢谷:ああ! ものすごい勢いで食べたね。

神木:最後の方は「苦しい!」と言っていました。

伊勢谷:へ~(笑)。でも架純ちゃん、子役の子とよく似ていたね。

神木:それ撮影現場でも盛り上がっていました。似てる! と。

伊勢谷:零の子供時代もね。

神木:しかも彼の指し方が、淡々としていて素敵だったんです。零のようで。

伊勢谷:自分が彼の演技から、そこの部分を拾って活かしたっていうことだよね。

神木:ぱちっと指して、かちっとタイマーを押す動作がシンプルなんです。どうですか? という感じで淡々としていて、年齢のわりに大人っぽい雰囲気がちゃんと出ていました。

お味噌汁を飲んだ後のような気分に

Q:よく考えたら二人が盤を挟んで黙って座っているだけなのに、なぜこんなふうに画面がもつのだろう? と不思議でした。

伊勢谷:やっぱり、それぞれの棋士のバックグラウンドが丁寧に描かれているからじゃないですかね。この映画の対局シーンは、普通なら怒りみたいなものがぶつかり合う闘いのシーンです。でもそれぞれに複雑な想いを内包しながら、そこで指す一手にはその人の意地みたいなものが見えたりする。それを見てなんとなく、お~とか言っているけど、この手はどんな意味? 勝敗が決まったの? 決まってないの!? みたいなことを読み取ろうとする。そこに醍醐味がありました。

神木:表情を見たらなんとなくはわかりますよね。

伊勢谷:わかる。でも例えば勝った方が先まで展開を読んで考えているから疲れる、みたいな解説があると余計にわからなくなるよね。ぐったりしている方が勝ったの? とか。

神木:僕も手を見ただけでは全然わかりません、あれはプロの棋譜なので。でも対局シーンを演じるときはプロ棋士の方に一手一手解説していただきました。もちろん最終的な結果も教えていただいて。あとは如何に心の中で叫んだり、焦ったりしているか? 一手一手について15分ほど撮り続けていただき、考える過程を省略せずに演じていました。だから撮り終えるといつも、芯から疲れました。

Q:作品全体としてはいかがでしたか?

伊勢谷:前編から描かれてきた登場人物一人一人の人生、そのすべてが後編にかかってくるので、ずっしりとした重みを感じました。誰もがただ幸せじゃなく、どこかで苦しみながら、闘いながら生きている。最終的にそれがすべて幸せな方向へ必ずしもいくわけではないけど……最初は嫌な奴に見えた人間のピュアなところも見えてきたりして、ただ嫌いでは終わらないんですよね。

神木:僕はお味噌汁を飲んだ後のような気持ちになりました。前編で感じた緊張感や息苦しさみたいなものがゆっくりとほどけていくようで。自分の周りにももしかしたら、大丈夫だよと背中を支えてくれる人がきちんといる。それを再認識できる映画だと思いました。

取材・文: 浅見祥子 写真:高野広美

記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)

関連映画