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史上最悪の“麻薬王”は世界で7番目にお金持ち!? 捜査官の回顧録に描かれた華麗なる生活

コラム

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5月13日より公開される『潜入者』は、アメリカ麻薬捜査史上、最も成果を上げたとされる潜入捜査作戦に参加した実在の潜入捜査官ロバート・メイザーを主人公にしたクライム・サスペンスです。

普段、健全な日本国民として生活している私たちからすれば、麻薬密輸がどんな規模のものであるかなんて、想像もつかないですよね。この巨大組織を仕切った麻薬王とは、一体どんな人物だったのでしょうか?

生死を賭けた潜入捜査の実態とは!?

『潜入者』は麻薬取締官メイザー本人が綴った、潜入捜査の回顧録をもとにした作品です。1980年代、コカイン密輸が横行する事態を重く見たアメリカ政府は、メイザーを架空の大富豪に仕立てて相手を信用させるとともに、麻薬組織にとり入らせて内部崩壊をねらう大規模な潜入捜査作戦を実施します。「1つ間違えれば我々は死ぬ」……簡単なミスも許されない緊迫した状況の中、メイザーは命がけの任務を果敢に遂行していくのです。

メイザーを演じるのは、人気ドラマ「ブレイキング・バッド」シリーズで大ブレイクを果たしたブライアン・クランストン。法廷サスペンス『リンカーン弁護士』(2011年)で高い評価を受けたブラッド・ファーマンが監督を務め、捜査官と麻薬カルテルとの息詰まる駆け引きをスリル満点に描きだします。

長者番付に載った麻薬王パブロ・エスコバルとは?

メイザーが潜入した組織を裏で牽引していたのは、“史上最悪の麻薬王”として世間を震撼させた、パブロ・エスコバルという男でした。

コロンビア第二の都市・メデジン出身のエスコバルは、10代から犯罪に手を染め、70年代半ばにコカインビジネスに着手します。80年代初頭には巨大な麻薬組織メデジン・カルテルを築き上げ、コカの葉の栽培が盛んなペルーとボリビアから持ち込んだコカインを、メキシコやアメリカへと大量に密輸しました。

メデジン・カルテルは、コロンビア南部拠点の敵組織カリ・カルテルと市場を二分し、最盛期にはアメリカで供給されるコカインの約80%を両者が扱っていたとされています。年間200トン前後が生産され、その卸売価格は1kg約7万ドル(=約700万円)、末端価格は約2500万円にまで跳ね上がったともいわれています。

エスコバルの資産は、低く見積もっても約2400億円と推定されており、彼は89年、経済誌『フォーブス』において“世界で7番目の資産家“に選ばれました。

自宅にテーマパークを設け、刑務所をディスコ化!

大富豪となったエスコバルの私生活は、贅を尽くしたものでした。市内だけで19軒のヘリポート付きの邸宅を所有し、うち1軒の敷地内には、何百頭もの野生動物を投入したテーマパークを建設。また、貧困層の住宅建設といった慈善事業に熱心な彼は、一部の市民からは英雄視されていました。法執行機関には賄賂を渡し、82年にはコロンビアの下院議員にまで上り詰めます。

ところが、カルテルとの関係が露見して議員を辞職した以後は、エスコバルは大多数の敵対者の暗殺とテロを行ない、アメリカ・コロンビア両政府との対立を激化させます。そして91年、アメリカで裁かれることを忌避した彼は自ら、事前に自身の寄付により建設していたコロンビアの刑務所に入ります。ここにはサッカー場やディスコが備えられ、彼は快適に暮らしながら、手下への麻薬密造指示を続けました。

その後、彼は移管途中で脱走を図り、メデジン市街に潜伏しますが、約15ヵ月後にコロンビア特捜隊の射撃を受け、44歳という若さで死亡しました。

この麻薬王が築いた犯罪帝国を崩壊させるには、捜査官メイザーの活躍が不可欠でした。『潜入者』には、こうした背景をもとに、実録ならではの緊迫感溢れる死闘が描かれています。

参考文献
『パブロを殺せ―史上最悪の麻薬王VSコロンビア、アメリカ特殊部隊』マーク・ボウデン (著), 伏見威蕃 (翻訳)/ 『コロンビアを知るための60章』二村久則(著))/ 『コロンビア内戦―ゲリラと麻薬と殺戮と』伊高浩昭(著)

(文/藤岡千夏@H14)

記事制作 : H14

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