浦谷千恵監督補イラスト、片渕須直監督監修の『この世界の片隅に』広島県呉市、広島市のロケ地マップ

映画館「シネマ尾道」女性支配人がオススメする!広島の映画ロケ地めぐり

コラム

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取材・文=平辻哲也/Avanti Press

ゴールデンウィーク到来。行き先に迷っている方は、映画ロケ地めぐりはいかがだろうか? 広島・呉では『この世界の片隅に』のロケ地マップを持って、街を歩く人も多いと聞く。その同じ広島・尾道は海と山に囲まれ、ノスタルジックな雰囲気を持つ“日本一の映画の街”だ。小津安二郎監督の『東京物語』(1953年)や『転校生』(1982年)、『時をかける少女』(1983年)、『さびしんぼう』(1985年)など大林宣彦監督の尾道三部作の舞台で、近年でもNHK連続テレビ小説「てっぱん」(2010~2011年)、TBS系「Nのために」(2014年)、映画『潔く柔く』(2013年)など数多くの映画やテレビのロケが行われている。4月初旬、1泊2日で尾道を旅した筆者が、街唯一の映画館「シネマ尾道」の女性支配人、河本清順(かわもと・せいじゅん)さんに改めて、ロケめぐりのオススメスポットを聞いた。

映画館「シネマ尾道」河本清順支配人

"映画館「シネマ尾道」河本清順支配人

平辻「私、初めて尾道を旅し、大変感激しました。それなりに満喫もしたんですけども、現代に脈々と受け継がれている歴史があり、小径一つにも由縁があり、尾道は奥が深い。例えば、志賀直哉の住居を訪ねると、小津安二郎が志賀のファンだとわかり、それが理由で尾道に憧れる、とか。そう思うとまだ全然見切れていない気がするんです。そこで、河本さんに、尾道のロケ地めぐりのポイントをうかがえればと思っています」
河本「映画のロケ地なら、いっぱいありますよ」
平辻「事前におうかがいすれば、よかったと後悔です」
河本「では、私がオススメする場所を順にご紹介しますね」

1)尾道土堂港フェリーターミナル『さびしんぼう』『あした』

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尾道フェリー乗り場 撮影=河本清順

住所:尾道市土堂1丁目

・尾道の目の前にある向島を結ぶ航路の発着地。6時3分の始発から最終便22時10分まで頻繁に運航。料金は大人60円。『さびしんぼう』で富田靖子と尾美としのりが自転車を引っ張って乗ったのが、この船だ。

平辻「あ、いきなり、私が行かなかったところです。自転車でしまなみ海道を走ったので、隣の駅前渡船を利用しました」

河本「それは残念です。『さびしんぼう』『あした』に登場するのがこちらです。フェリーに乗ると、映画の世界がそのまま残っていて、船上から当時の雰囲気が味わえます」

平辻「向島には、『あした』のロケセットや舞台になった場所がたくさんありますね」

2)御袖天満宮『転校生』「てっぱん」

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御袖天満宮の階段で撮影された『転校生』を真似して転げ落ちるシーンを再現するファンも! 気を付けて 撮影=おのなび

住所:尾道市長江一丁目11-16

・学問の神様、菅原道真公を祀った神社。道真公が京から大宰府に流される道中に立ち寄った際、地元民に親切にされた礼として振袖を贈ったというのが由緒。

平辻「ここも行きたかったのですが、時間がなく……」

河本「『転校生』の小林聡美さんと尾美としのりさんが転げ落ちるのが、この55段の階段です。尾道にはたくさんの神社がありますが、特徴的なのは55階段を登りきると、神社があるんです。階段はしんどいですけども、上がってきてよかったなぁという達成感がありますよ」

3)住吉神社『東京物語』

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船が住吉浜に入港する際の目印になっていた住吉神社の境内にある石灯籠 撮影=おのなび

住所:尾道市土堂2

・尾道の町奉行、平山角左衛門が1741(寛保元)年に住吉浜を築造した際、港の守護神とすべく、浄土寺境内にあった住吉神社を移設した。

平辻「ここは歩きながら見ました。尾道ラーメンの有名店『壱番館』の目の前ですね。美味しかったです」

河本「そうですか(笑)。『東京物語』のファーストシーンがここです。柵がありますが、一般の方も中に入ることができます。映画公開から64年も経っていますが、同じ風景が見られる。映画を見た方は絶対、感動されると思います。ここは尾道の原風景のような場所ですね」

4)浄土寺『東京物語』

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『東京物語』で原節子と笠智衆が境内にたたずむ浄土寺と灯ろう 撮影=平辻哲也

住所:尾道市東久保町20-28

・616年、聖徳太子の創建。足利尊氏が九州平定や湊川の戦の際、戦勝を祈願した。「本堂」「多宝塔」は国宝、「山門」「阿弥陀堂」は国重文に指定されている。

河本「笠智衆さんと原節子さんによる名シーンの舞台です。灯籠の場所は移動していますが、その感触はそのまま残っています。佐野史郎さんをご案内したのですが、とても感動されていました」

平辻「私も感動しました。『東京物語』を代表する場面ですものね。世界中の人が知っているのではないでしょうか。この寺から見る山陽線の風景も劇中出てきますね」

5)竹村家『東京物語』

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竹村家 撮影=平辻哲也

住所:尾道市久保3-14-1

・1920年に建てられた木造2階建、瓦葺の老舗割烹旅館。竹材の細工や造作を多用した繊細な書院造。2004年に有形文化財に登録された。

河本「小津組が8日間の尾道ロケで滞在していた旅館です」

平辻「東山千栄子さん演じる、とみさんの葬儀の後に、親族で食事をした場所ですね?」

河本「いいえ、あれは松竹大船のセットなんだそうです。小津監督が竹村家を大変気に入り、2階部分を細部まで再現したのです。俳優で尾道入りしたのは笠智衆さん、原節子さん、香川京子さんの三人だけなんです」

平辻「そうだったんですか。オールキャストか、と。まさに映画のマジックですね。ところで、ここでは食事だけというのも可能なんですか」

河本「はい。茂木健一郎さんが尾道に来られた時、『東京物語』の大ファンだということで、いたく感動されていました。見学もさせてもらえますよ」

6)千光寺・鼓岩(ポンポン岩)『あの、夏の日~トンデロじいちゃん~』『日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群』「てっぱん」

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叩くと音が鳴る千光寺・鼓岩(別名:ポンポン岩) 撮影=平辻哲也

住所:尾道市東土堂町15−1

・806年、弘法大師が開基。尾道を代表する寺。多くの文人墨客が訪れており、林芙美子は代表作「放浪記」でも登場させている。大阪城築城の際、尾道の巨石が使われており、岩にはくさびの跡が残っている。『あの、夏の日』では、おじいちゃん(小林桂樹)と孫が会話するシーンが撮影された。NHK連続テレビ小説「てっぱん」のオープニングにも登場する。

平辻「絶景ですね、ここは。なんだか懐かしい感じがしました。ハンマーが置いてあって、叩くと、ポンポンと音がする。面白いですね」

河本「どなたかをご案内する時は必ずお連れする場所です。尾道は景観を崩さないように条例があって、高いビルの建設が規制されています。昔の街にはあった風景が広がっていて、どんな方でも、どこか郷愁を誘うのかもしれませんね」

《シネマ尾道(http://cinemaonomichi.com)》2008年10月にオープンした尾道唯一の映画館。2001年に最後の映画館「尾道松竹」が閉館された際、当時20代だった河本さんが「映画の街なのに映画館がないのは寂しいよね。尾道に映画館、なんとか作れんかねぇ」と映画好きの友人に声をかけたのがきっかけ。河本さんたちは新潟、群馬、埼玉、京都、大阪など全国のミニシアターをめぐり、映画館経営の調査をする一方、2カ月に1度のペースで、ホールや商店街で上映会活動を続ける中、誕生した。現在、年間約140本の良質な映画を上映している。3月には尾道市などが主催し、河本さんがディレクターを務めた「尾道映画祭」のメイン会場になった。

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『この世界の片隅に』
(c) こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

平辻「ノスタルジックと言えば、シネマ尾道も、懐かしい感じのする映画館でした。『この世界の片隅に』を再見したのですが、尾道で見ると、格別な感動がありました」

河本「『この世界〜』は開館以来の8年間で最も手応えを感じた作品です。初日から2週間、連日満席。お客様もいろいろと感想をおっしゃってくれました。舞台が広島、呉で、広島の言葉で語られるので、身近に感じられた方が多かったんだと思います。あの時代の戦争が今に繋がっているんだなと感じ入る作品ですね。何度も足を運んでくださる方がいました」

※      ※

河本支配人の名前、清順は、映画好きの祖父が鈴木清順監督の大ファンだったことから名付けられたという。そんな映画の申し子、河本さんの話をうかがっていると、一度しか行ったことがない尾道への “郷愁”を早くもかきたてられるのだった。尾道は見どころ満載。2泊以上の滞在をオススメします。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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