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愛し合う灯台守の夫婦が背負った“罪”とは…?号泣必至の『光をくれた人』

コラム

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二度の流産を経た夫婦のもとにやってきた、身寄りのわからない赤ん坊。彼らは秘密を抱え、幸せを築いた――。5月26日より公開される『光をくれた人』の感想を述べるのには、“感動”という言葉だけでは浅すぎるように思います。この、胸が苦しくなるような気持ち。英ガーディアン紙は本作を「ティッシュ会社の株価が上がるほど、観るものは涙するに違いない」と評しています。

『ブルーバレンタイン』監督が送る“家族”の物語

1918年、戦争で心に深い傷を負ったトムは、オーストラリア西部の孤島・ヤヌス島の灯台守の仕事に就く。トムはイザベルという女性と結ばれ、孤島で幸せな結婚生活を送る2人だったが、度重なる流産がイザベルの心を傷つける。ある日、島にボートが流れついた。乗っていたのは見知らぬ男の死体と赤ん坊。赤ん坊を黙って自分の娘・ルーシーとして育てていた彼らは、4年後、偶然にも娘の産みの母親・ハナと出会ってしまう。

……あらすじだけ読めば、誰もが「なんて勝手な夫婦なんだ」と思うことでしょう。しかし、物語の中では、トムとイザベルの出会いから丹念に描かれます。戦争で多くのものを失くした2人が、手紙のやり取りを経て少しずつ心を通わせていき、やがて結ばれる。デートとも言えない近場の散歩、軽いジョーク、そんな小さなものをひとつずつ積み重ねて、結婚に至る。この淡々とした筆致ながら登場人物たちに感情移入させる手法は、さすが1組のカップルの出会いから別れまでを描いた『ブルーバレンタイン』(2010年公開)のデレク・シアンフランス監督といったところでしょうか。

彼らが一番望む“子供”という幸福だけが手に入らないことを、観客も一緒になって落胆することになります。そのため赤ん坊がボートで流れ着いたときは、逡巡するトムを見て「迷わず自分の子供にしてしまえばいい!」とやきもきすることになるのですが、ハナが登場して、物語の中で再び1組のカップルの幸せな日々が描かれます。それは、ハナと亡き夫・フランクの回想。そのとき観客は、愛し合うカップルはトムとイザベルだけではないと思い知らされ、彼らの罪の重さを感じるのです。なんて残酷な演出!

アリシア・ヴィキャンデル、また名演見せた!

物語を通して印象に残るのは、イザベル役のアリシア・ヴィキャンデルの瞳です。『リリーのすべて』(2016年)でアカデミー賞助演女優賞を獲得した彼女は、本作でも名演を見せています。とくに、流産した子供たちの墓標の前で横たわるときの表情。大きな瞳で墓をじっと見つめる顔は、どこか不思議がっているようにも見えました。運命という大きなものに「なぜ?」と問いかけるような……。また、トム役のマイケル・ファスベンダーも、娘を失いたくない気持ちと、罪の意識との間で引き裂かれる男を見事に演じています。娘のために何を選ぶべきかというハナの苦悩も、レイチェル・ワイズでなければ表現しきれなかったでしょう。

もうひとつ印象深いのは、ヤヌス島の風の強さ。夫婦で、家族でどんなに幸福な日常を過ごしていても、その風景はいつも強い風が吹き荒れている……というところに、心がざわめきます。完全な穏やかさなんて、始めからここには存在しなかったのかもしれない。ちなみにヤヌス島の名前の由来となっている“ヤヌス”とは、ふたつの顔を持つ神のこと。さまざまな感情の中で引き裂かれる登場人物たちのことを思うと、何か意味が込められているような。この島全体が何か隠喩になっているのかも? もう一度鑑賞するときは、島の風景にも注目してみたいです。

本作のテーマは、家族愛ではなく、“赦し”という部分にあるのかもしれません。トムとイザベルは間違っている。間違っていたけど、彼らとルーシーは間違いなく家族だった。そして、ハナが下した決断とは……? 罪、そして赦しという普遍的なテーマは、日本でも数多くの人々の涙を誘うことでしょう。

(文/原田イチボ@HEW)

記事制作 : HEW

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