『花戦さ』6月3日(土)公開 (c)2017「花戦さ」製作委員会

大河ドラマ「おんな城主 直虎」と映画『花戦さ』の意外な共通点

コラム

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文=木俣冬/Avanti Press

最大の共通点(!?)は脚本家の森下佳子

戦国末期、刀を使わず、花によって、状況を切り開いていくいけばなの名手・池坊専好(野村萬斎)の底抜けに明るく型破りな生き方を描いた映画『花戦さ』。脚本家・森下佳子は、テレビドラマ、日曜劇場「JIN-仁-」(2009年)や、連続テレビ小説「ごちそうさん」(2013年)というヒット作を手がけ、現在は大河ドラマ「おんな城主 直虎」が放送中だ。森下の特性はなんといっても緻密な構成力。これが『花戦さ』でも遺憾なく発揮されている。伏線の使い方がうまく、物語の最後の最後であっと言わせる、その鮮やかさは職人技だ。「〜直虎」もどんなまとめ方をしてくれるか、まだまだ最終回まで長いが、楽しみにしている。

さて、「〜直虎」も『花戦さ』と同じ戦国時代の物語だが、『花戦さ』よりは少々時代は早い。主人公の直虎(柴咲コウ)がわけあって井伊家の女城主となったのは1565年で、亡くなったのは本能寺の変が起こった1582年。映画『花戦さ』のはじまりは1573年で、池坊専好の活躍が描かれるのが本能寺の変を過ぎ、豊臣秀吉の天下をとった時期なので、直虎と専好がバトンタッチするような形である。この2作品、残念ながらニアミスかと思いきや……接点があった。

第2の共通点は武士のたしなみ〈立花〉

『花戦さ』6月3日(土)公開
(c)2017「花戦さ」製作委員会

『直虎』には、当時の武士のたしなみとして〈立花〉を行う場面が登場しているのだ。立花は、『花戦さ』で専好が行っている生花の最古の様式。池坊公式サイトによると、『直虎』の時代はちょうど“「立て花」から「立花」へ発展していく時代”であるそうだ。

1、4、5話で、直虎の父・直盛(杉本哲太)が、悩んだときに花を活ける。このときの立花の指導は、池坊中央研修学院の豊田光政が行い、『花戦さ』と縁がつながった。そう思って観ると、「直虎」には、時折、部屋に花が活けてあるところが映り、そこに意味があるような気がしてくる。20話でも、直虎の母・祐椿尼(財前直見)が花を活けていた。

第3の共通点は武力を行使しない戦い方

そもそも『直虎』のタイトルバックは、花をモチーフにしたものだ。大地から芽生え伸びていく植物の生命力を華やかにダイナミックに描かれている。また、花が武器の代わりのようになるカットもあり、これが、『花戦さ』の池坊専好の生き方にも通じているようだ。直虎は、女性ながら井伊家を率いるという、当時には珍しい人生を歩んだ人物。女性であることで武力を使って闘うことは得手でない彼女は、男たちに護られ、そのことに迷いながらも、様々なことを学び、少しずつ成長していく。彼女を助ける男の筆頭である小野政次(高橋一生)が、直虎にこんな助言をする場面があった(18話)。

「私なら戦わぬ道を探ります。戦に戦わずにして勝つ。もしくは戦いに及ばずともすむように死力を尽くす」

と言う政次のとった方法は、頭脳戦。大国に挟まれた小さな国で人を欺きながらでも生き抜くしかないと考えている。

さらに直虎は、子どもが碁を打っているところを観て「様々な戦い方があるものじゃ」と感心する(19話)。それは「勝ちはせぬが負けはせぬ」手で、彼女が孫子の言葉で気に入った「百戦百勝 善の善なるにあらず」(戦わずして敵を屈する事こそ最上の勝ち)と同じだ。

『花戦さ』6月3日(土)公開
(c)2017「花戦さ」製作委員会

この直虎の目指す戦い方は、池坊専好が、武力で人の命を奪いながら天下を自分の手に収めようとする豊臣秀吉の狂気に、あくまでも花で説得を試みる行為と近いのではないか。

刀剣ブームの昨今ではあるが、武力を行使しない戦いを描く作品を、森下佳子が偶然なのか書き続けていることは興味深い。

『花戦さ』は基本、男社会の話で、「直虎」のように女性が中心にいるわけではないが、森下は原作には出てこないオリジナルキャラクターれん(森川葵)という女性を生み出した。彼女の存在が物語をさらに豊かなものにしている。

第4の共通点は森下作品に欠かせない俳優・和田正人

最後に、もうひとつのリンクを。俳優・和田正人の存在だ。彼は「ごちそうさん」で、ヒロイン(杏)の幼なじみで、何かと手助けをしていた泉源太役で人気を博し、「直虎」にも山伏・松下常慶役で出演、さらに『花戦さ』でも池坊専好の弟弟子・専武という引き続き重要な役を担わされている。彼のどんなときでもどこかカラッと明るく、味方に付けば頼りがいのある、誠実な雰囲気は、もはや森下作品に欠かせない。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)