『20センチュリー・ウーマン』(6月3日公開)は、15歳の少年・ジェイミーが母を含めた年上の女性3人と過ごしたひと夏の日々が描かれています。大人の男性へ成長過程にあるはずのジェイミーが、「僕はフェミニストだ」と逆行するような発言をするほど、大きく変えられた色濃い夏の時間。共に過ごした3人の女性たちは、いったいどんな人物だったのでしょうか?

自然体で生きる母の潔さ

今作は、55歳のシングルマザー・ドロシア(アネット・ベニング)の一人息子・15歳のジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)が、1979年の夏を母と2人の女性に囲まれて過ごす成長物語。その2人の女性とは、近所に住む幼馴染で17歳のジュリー(エル・ファニング)と、ドロシアの家を間借りしているパンク・ミュージックが好きな24歳の写真家・アビー(グレタ・ガーウィグ)。ドロシアは、父親がいない一人息子の子育てに悩み、ジュリーとアビーにもジェイミーの面倒を見てくれるように依頼します。

このドロシアは、理想の母親像を大きく変えるような潔い人。70年代当時のアメリカで女性が就く仕事としては珍しい、建築関連の製図室で働いています。男勝りというよりは、常識に囚われず、自分が興味を持ったことを素直に行動に移しているような自然体で生きています。そして、気さく過ぎるくらいに人を家の食事に招いて料理をふるまうなど、大らかな女性らしさも充分にあります。

息子・ジェイミーの寝室から朝帰りしていくジュリーに気づいても、ドロシアは血相を変えて叱るなんてことはしません。アビーがジェイミーを連れ出した破天荒な夜遊びのことを耳にすると、「あなたは外の世界のあの子を見られる。うらやましいわ」と目を細めます。どんな状況に直面しても、むやみに激怒したり我が子を縛り付けることなく、まずはじっくりと対話しようとする穏やかさこそが、ドロシアの持つ深い愛情なのかもしれません。

女性の奔放さやズルさも包み込む映像美

温かな女性の愛情深さだけではなく、人前であまり見せたくない奔放な部分までも隠さずに映し出しているところも、今作の魅力。

パンク・ミュージックをジェイミーに教えたアビーは、ドロシアの家で自分と同じく同居しているウィリアム(ビリー・クラダップ)と、さほど愛がないまま関係を持ってしまいます。ジュリーは、ジェイミーの恋心に気づきながら恋愛関係には発展させず、添い寝を続ける小悪魔的なズルさも持ち合わせている女の子です。

そんな展開がありながらも、出演者たちの紫やピンクなどのカラフルなファッションや、黄色のキッチンにお部屋の星柄カーペットなど、至る所にポップなデザインが存在するため、破天荒さも映像美が和らげていきます。

ミルズ監督はジェイミー少年が成長した姿!?

『20センチュリー・ウーマン』は、監督・脚本を務めたマイク・ミルズ氏の実体験を元に作られた作品。ジェイミーのような体験をしたと思われるミルズ監督が、実生活のパートナーとして、既成概念に捉われないマルチアーティストのミランダ・ジュライを選んでいることも、いかに年上女性たちの影響を強く受けたのかを物語っています。

ミランダは、パフォーマンスアーティスト・映像作家・小説家として活動する人物。監督・脚本・主演を務めた映画『君とボクの虹色の世界』では、カンヌ国際映画祭を含む多数の映画賞を受賞するほどの才女でもあります。まさに、『20センチュリー・ウーマン』に登場する自由奔放な女性たちを掛け合わせたような存在です。

ミランダのような女性と人生を歩みながら、75歳にしてゲイを告白した父親を息子の目線で優しく見守る『人生はビギナーズ』や、現代社会に問題提起する『マイク・ミルズのうつの話』など、斬新なテーマの作品を発表し続けているマイク・ミルズ監督。これまでの作品や今後の作品を見れば見るほど、『20センチュリー・ウーマン』に登場した女性たちの素晴らしい影響力が、より一層リアルなものとして感じられるのかもしれません。

(文/岩木理恵@HEW)