幼い頃に観たチャップリンや、20代前半に観たブロードウェイ・ミュージカルから影響を受けたという名優・水谷豊が、60代半ばにして監督デビューを飾った映画『TAP -THE LAST SHOW-』が6月17日に公開されます。

一流のエンターテイナーたる水谷豊が、初監督作のテーマに“タップダンス”を選んだことは意外というより納得ですが、彼の代表作である「相棒」ファン視点で見てみると……。自ら演じた元天才タップダンサー・渡真二郎役と、天才刑事・杉下右京役とのギャップは妙にツボにはまります。脇を固めるキャスティングも、「相棒」シリーズお馴染みのメンバーがチラホラと!ここでは、そんな「相棒」ファン視点で『TAP -THE LAST SHOW-』の見どころを掘り下げてみましょう。

水谷豊が、自堕落な生活を送る酒浸りの元天才タップダンサーに!

(C)2017 TAP Film Partners

水谷が演じるのは、かつてタップダンサーとして脚光を浴びるもステージで怪我を負い、引退を余儀なくされた切ない過去を持つ主人公・渡真二郎。古傷の痛みを抱え、今や酒浸りの毎日を送っている彼は、旧知の間柄である劇場オーナーから閉鎖する劇場の “ラスト・ショウ”の演出を依頼される。やがて常軌を逸した過酷なトレーニングで若手ダンサーたちの才能を開花させていきます。

劇中、だらしない開襟シャツ姿で自堕落な生活を送る渡真二郎と、我らが右京さんとの一番のギャップはその佇まい。スタンダードなブリティッシュスタイルを貫く右京さんは、『相棒―劇場版III―』(2014年)で絶海の孤島の密林地帯に乗り込んでいた時でさえ、ネクタイを緩めなかった男……。常にピカピカの高級革靴に、ポケットチーフ、細い銀フレームメガネ姿を見慣れた「相棒」ファンにとっては、渡の姿はなかなかの衝撃映像と言えるかもしれません。

余談ですが、渡は洋酒を浴びるように飲み、右京さんが嗜むお酒は日本酒の熱かん。実は演じている水谷豊本人は一滴も飲めない下戸なんだそう。それでも渡と右京さんのお酒を飲むシーンに全く違和感がないのはさすがです。

今回の“相棒”は岸部一徳! あのお馴染みキャストも意外なシーンで登場

(C)2017 TAP Film Partners

渡にラスト・ショウの演出を依頼する劇場「THE TOPS」のオーナー・毛利喜一郎は、「相棒」で小野田官房長に扮した岸部一徳が演じています。小野田官房長は右京さんが所属する特命係を創設し、味方であり敵でもあったクセ者ですが、毛利は渡がショウビジネスの世界で活躍している頃から支え、怪我の後も見守り続ける強い絆で結ばれた盟友です。小野田官房長亡き今、たとえ”別人”であっても二人の”相棒”ぶりが見られるのは、やっぱりうれしいものです。

この他にも、鑑識から警察学校行きとなり、姿を見せなくなった米沢守こと六角精児や、右京を毛嫌いする中園参事官の小野了の二人が、渡を支える舞台スタッフとして登場。また、捜査一課の芹沢役の山中崇史がホスト役で、内村刑事部長役の片桐竜次が土建会社社長役でスクリーンに出現するなど、「相棒」ファミリーの意外な働きぶりに、ついついニヤリとしてしまいます。

「相棒」シリーズを手がけた編集・只野信也のスタイリッシュなカッティング

(C)2017 TAP Film Partners

また、本作には「相棒」で手腕を発揮したスタッフ陣も参加しています。『相棒-劇場版-』シリーズからは撮影監督・会田正裕と録音・舛森強が。そして編集はテレビ・映画ともに「相棒」を多数手がけてきた只野信也が担当。ラストショウに向けて次第にボルテージを上げていく渡や若きタップダンサーたちの熱量を、スピード感あふれるスタイリッシュなカッティングで魅せています。その一方で渡の怒りや悔しさ、情けなさなどを表現するための“間”を調節したり、登場人物の心情を際立たせるよう腐心。実に約8か月に及んだ編集作業によって、シーンの持つ力がさらに引き出されたことで、「相棒」シリーズに負けず劣らず、深みのある人間ドラマに仕上がっています。

今回はこうして「相棒」目線で切り取ってみましたが、『TAP -THE LAST SHOW-』は「相棒」ファンならずとも大満足できる本格タップダンスムービーです。本作は水谷豊の新たな才能&魅力と、タップの迫力&サウンドが丸ごと堪能できる劇場での鑑賞をオススメします!

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)