映画『武曲 MUKOKU』は6月3日より全国公開

『武曲 MUKOKU』綾野剛&村上虹郎 インタビュー

インタビュー

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「自分が自分が」は好きじゃない

強い個性を発揮し日本映画界になくてはならない存在の俳優・綾野剛と、圧倒的な瑞々しさと危うさを秘めた新鋭・村上虹郎。綾野はどんな思いで村上と対峙したのだろうか。互いが胸の内を語った。

先輩後輩の垣根を越えて

Q:重厚な作品でしたが、どんな課題を持って撮影に臨んだのでしょうか?

綾野剛(以下、綾野):全体を通しての課題は意外となかったです。大きな課題を作ってしまうと、演技も固まってしまうので、柔軟性を持って臨もうというのが僕の考えです。「自分はこれしかやりたくない!」という決めつけで行動すると負けてしまいます。あと、作品というよりは個人的に「村上虹郎」という役者が、完全に一人で立てるようになればいいなという思いはありました。

Q:「一人で立てるように」というのはどんな意味が込められているのでしょうか?

綾野:僕は虹郎ほど恵まれた環境で役者をスタートしていませんが、初期のころは感覚でやれた時代もありました。でもその感覚をしっかり実力に変えていかないと、確実に埋もれてしまう現実も分かっているので。この映画が虹郎にとって、そういう変化の作品になればと思いました。結果、完璧に実力に変えられたと感じたので、これからの村上虹郎が楽しみだし、また共演したいと心から思っています。

Q:綾野さんの言葉をどう受け止めますか?

村上虹郎(以下、村上):今までは感情を内に秘めてしまう、という役をいただく機会が多かったのですが、本作の融という役は感情を圧倒的に解放する瞬間が分かりやすくありました。要因となったのは(綾野演じる)研吾だったわけですが、彼はその意味ですごく恵まれている。ズルいなという感覚もありましたが、綾野さんがおっしゃった変化の部分はしっかり意識しました。

綾野:こういった話を聞いていると、感覚でやっていないって分かりますよね。しっかり役を生きている。僕は今の虹郎の年ではこんなことできませんでした。

役者としてより人間として

Q:綾野さんの村上さんへの視線は、俳優の先輩として「育てよう」みたいな責任感なのですか?

綾野:そういう考えは全くないです。僕は先輩の方々にたくさんのことを教わりましたが、俳優部以外の各部署、撮影部や照明部、演出部の方々にも多くのことを教わりました。もちろん“芝居の心”みたいなことを教えてくれた俳優の先輩もいましたが、人それぞれ感覚が違うので臨機応変に取捨選択してきました。なので、育てようという感覚ではなく、同じ作品を同じ土俵で一緒に作っていく同志みたいな感じです。年齢は関係ないです。

村上:そういう接し方はとてもありがたいですが、やっぱり踏み越えてはいけない部分はあると思うので、ある一線はしっかり引こうという意識はあります。

Q:同志的な感覚は、先輩後輩関係なくということですね。

綾野:この作品で(柄本)明さんや(小林)薫さんとご一緒していますが、やっぱりすごいなって思うことは多いです。でも虹郎に対しても、すでに僕より突き抜けているところはありますし、その部分では素直に「スゲー」とか「勉強になる」と感じます。

Q:作品にしっかり向き合える信頼関係が大事ということですね。

綾野:「自分が自分が」ということではなくて。(佐藤)浩市さんとかは一切そんなこと言わないですからね。背中でみせてくれるし、浩市さん自身が一番ダメなところを隠さず表現してくれるところなんて、すごく格好いいと思います。役者としてというより、人間として好きになれる人と仕事をしていきたいです。その意味で、僕はこれまで人に恵まれています。

村上親子との意外な接点

Q:父と子というキーワードも本作のテーマの一つになっていますが、綾野さんは虹郎さんの父親である村上淳さんとも共演されていますね?

綾野:本作は剣道を題材とした作品ですが、10年ぐらい前に淳さんと僕は、剣道の短編映画で共演しています。まさか時を超えて、虹郎と剣道映画を一緒にやるなんて。

村上:その情報、ネットで知りました。親父と綾野さんが竹刀で殴り合っているんです。あれは剣道じゃないですけど(笑)。

綾野:冷静に考えたら、僕は村上親子の真ん中で架け橋になっているんです。淳さんにもかわいがってもらいましたし、虹郎とも楽しくやらせてもらったし、良いポジションだなって(笑)。すごく幸せです。

Q:先ほど村上さんのこれからが楽しみで仕方ないと話されていましたが、同志としてどんな部分に期待したいのでしょうか?

綾野:初期の段階で、彼は瑞々しさを持って戦えていたものが、完全に一人で立ち切ったことにより、これからの20代は大きく状況が変わっていくと思います。面白くなるだろうし、いろいろな力も手に入れると思います。もしかしたら超スーパー王道のラブストーリーなんかもやるかもしれません。何を求められるかは分からないけれど、いい仕事、楽しい仕事をやって、ずっと立ち続けてほしいと思います。

取材・文:磯部正和 写真:日吉永遠

記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)

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