『昼顔』斎藤工 インタビュー

インタビュー

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女同士の戦いが、男には恐怖!

夫に従順な暮らしをしていた主婦・紗和が、ある日妻ある男・北野裕一郎に出会ってしまい道ならぬ恋に溺れていくテレビドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち」は放送当時多くの女性たちを夢中にさせた。待望の劇場版で上戸彩と激しい愛を再び演じた斎藤工が、本作への赤裸々な思いを語った。

紗和と北野の空白の3年間

Q:ドラマ版の最終回では北野先生が奥様の元へ戻ってしまいました。演じていて、彼の行動をどのように感じていましたか?

僕も北野先生という役柄と過ごす時間が長かったので、いつもどんな人なのかなって考えながら演じていたんですが、彼はとてもあきらめが早いと思っていました。自分のことに関してだとさらになんですが、それは潔いわけでもなくて、すっと線を引くような感覚なんです。それってもしかしたら彼が研究している昆虫のシステムを勉強している上で作り出した「過信しない生き方」なのかな、と。だから自分と相手の今後を考えていた時に、北野よりも紗和の方がずっと現実的で二人の未来を見据えていたんじゃないかなって思います。自分自身に確かなものが欠落している彼のことを考えると、あの選択というのは納得できる気がするんです。

Q:会えていない数年間とかすごく考えてしまったんですが、斎藤さんは北野先生がどんな風に過ごしていたと思いますか?

確かに気になりますね。多分彼は夢から覚めたような、紗和と会う前の自分に戻そうと必死になっていたと思います。でも映画の中で「子供を諦めていない」っていう妻の言葉を聞くとね。やっぱり夜の営みとかもあったのかな、あっただろうなとも思います。

Q:生々しいですね。でも、そういうことを考えちゃうのが、本作ならではだと思います。

でも、その最中には全く別のことを考えていたでしょうね、彼は(笑)。もし彼ら夫婦の間に子供ができていたら、ということがこの映画版の鍵になっていたんじゃないかなと思います。

Q:予告編に出てきた、乃里子(北野の妻)がクラクションを押すシーンが怖かったです。

本当に怖いです!しかもあれ、僕のほうを見ていないんですよ。ノールックでクラクションを鳴らしていました。しかもハイスピードで。このシーンは男からしたら恐怖でしかないです。あと、乃里子と紗和のシーンが本当に怖くて。女性対女性の、男性には絶対に立ち入れない戦いが映画では描かれていて、もう北野としては見たくないと思いました! 

もどかしい紗和と北野の距離感

Q:ドラマ版でもそうでしたが、なかなか触れ合うことのできない紗和と北野先生の距離が、もどかしくて仕方がなかったです

僕はあの二人の距離感が人間的だと思っているんです。今ってすごくコミュニケーションが取りやすい時代ですが、あの二人の距離の縮まる感じってまるで文通のようで。「余白」ってすごく大事で、相手を思いやるスペースだと思うんです。でもそれって本当に相手を想っていないと作れない。行為が先行してしまうと相手を想うプロセスを忘れさせてしまう気がするので。アナログとデジタルどちらも知っている時代に生まれた人間としては、いいなって思いますね。

Q:あの二人のもどかしさはとても自然に感じました。女ってつい作戦を立てて、距離をなかなか詰めさせないようにしがちですが、それとは違いますね。

もしも故意に焦らされたら、僕は心のハリセンをスパーンと頬に打ちますよ。そういう演出をする女性には一気に冷めてしまいます!

Q:キスシーン一つにしても、スピードがたまりません!

あれは北野の中に申し訳なさが宿っているんですよね。個対個じゃない、お互い背負っているものがあるからこそ、あの速度になる。上戸さんともそこは打ち合わせしませんでした。調整してしまうと絶対に不自然になるから、お互いの慎重さを計算しないことで生まれたのだと思います。

Q:先日イタリアのウディネ・ファーイースト映画祭に出品されましたが、海外の人たちはこの二人の「もどかしさ」にどんなリアクションだったんですか?

イタリアの観客に、この二人のもどかしさはどう伝わるのかとすごく興味がありました。イタリアはハグとか当たり前にできるし、愛欲に関してすごく解放されているイメージなので、一蹴されるんじゃないかと思っていたら、観客の方々の反応がすごく良かったんです。こういう深い気持ちの部分がきちんと届いていてうれしかったです。

ベッドシーンで見せる色気の秘密

Q:それにしても理系の北野先生がベッドシーンで見せるいきなりの色気には、女性の観客は失神者続出だと思います。あの強烈な色気は意識して出しているのですか? それとも自然に出てくるもの?

どうなんでしょう(笑)。そこは北野が誰よりも「人間」という動物だからだと思います。切り替えているわけではないんですけど、僕は北野ってああいう時にモジモジするような男ではないと思うんです。ですから、こういう状況でこういうことをしようという構築の仕方はしませんでした。彼の癖(へき)としては、言葉ではないもので相手に気持ちを届けようとするところがあるので、そう信じて演じていました。

Q:すごく濃厚で、抱きしめているだけではなくてキスを応酬させるところとかも北野なりのシグナルということですね。

はい。あれは、台本に書かれていたと思います。 

Q:「頬の左のほうにキスの嵐」とかですか?

いえ、そこまでのト書きはなかったと思います(笑)。

Q:北野と紗和の相性は最高だったということが、シーンからすごく伝わってきました。

そうですね。やはり体の相性ってすごく大事だと思うし、だからこそこの映画は動物を描いている作品なんです。倫理に閉じ込められた人間が、どんどん本能にあらがえなくなっていく。そこにあらがうのかどうかが分かれ道になる。

Q:結婚、そして夫婦としての倫理観を考えさせられます。

一夫多妻制の国のことを考えたんですけど、猿山のボスのように魅力のある男性には女性がたくさん集まる。それってすごく動物的だと思うんです。と言っても僕にはそんな度量はないですし、第一夫人と第二夫人の会話とか恐ろしくて聞いていられないです。

Q:今、世間は倫理に対して敏感な中で、この作品がここまで人気が出るって面白いと思うんです。北野を演じる中で、本作を男性としてどう感じていましたか?

結婚したくなくなりますね(笑)。結婚にまつわるリスクについて、メディアを含めて世の中が描きすぎていると思います。だって紗和と北野だって結婚さえしていなかったら何の問題もなかったんですから。だからこの作品に関わって、結婚についてすごく考えさせられました。映画もドラマも影響力はないはずがないので、この作品を作る責任を考えた時、何らかの贖罪は必要だと考えたんです。だから紗和と北野が迎える結末を皆さんどう感じるかはそれぞれだと思いますが、僕はとても納得しています。

ヘアメイク:赤塚修二 スタイリスト:川田力也

取材・文: 森田真帆 写真:尾藤能暢

記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)

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