『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』
(c) British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016
7月15日(土)よりBunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

自分の子どもにスゴい才能があることに気づいたら?天才児を持つ親の驚きの子育て

コラム

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文=金原由佳/Avanti Press

「こんなお子さんをもって、ご両親はさぞ誇らしいだろうな」と羨むしかない一芸に秀でた子どもが現れる。とはいえ、どんな天才も生まれたばかりの時はみんな赤ん坊。では、親の育て方になにか秘訣があるのだろうか? どの段階で我が子の才能に気づき、それをどう育んだのか。そんな好奇心に満ちた疑問に答えてくれる、映画『世界にひとつの金メダル』と『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』を紹介したい。

『世界にひとつの金メダル』
ある馬術選手のお父さんの場合

フランスの馬術選手ピエール・デュランの、少年期から1988年ソウルオリンピック馬術競技の障害飛越競技で優勝するまでの半生をモチーフにした半自伝的な劇映画『世界にひとつの金メダル』。2015年にフランスで公開されると、200万人の観客を動員し、大ヒットを記録した。フランスでは日常的に乗馬を楽しむ習慣があり、施設も充実していて、小さいときから馬と親しめる環境にある。当然のことながらピエール・デュランも子どもの時から乗馬をしていた。天才児を育てるための秘訣。まずピエール・デュランのケースから。

『世界にひとつの金メダル』
(C)2013 - ACAJOU FILMS - PATHE PRODUCTION - ORANGE STUDIO - TF1 FILMS PRODUCTION - CANEO FILMS - SCOPE PICTURES - CD FILMS JAPPELOUP INC.
6月17日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネマート新宿ほかにて全国順次公開

1.子どもが恐怖を感じていないなら何度でも挑戦させよ

ピエールの少年時代のエピソードとして強いインパクトを残すのが、彼がレースで障害飛越競技に失敗し、落馬をする場面である。アナウンスを聞き、父と母は驚いて彼に駆け寄る。母親は「もうレースはリタイアして」と即座に言うのだが、父親はピエールの顔、身体を撫でまわして一言、「まだレースできるか?」と聞く。「うん、できる」と息子が言うや否や、すぐにレースに復帰させる。この場面でわかるのは、父親が常に見守っているのは、子どもの挑戦しようという気持ちだということ。そして恐怖を感じていないことがわかったら、リスクを承知で再挑戦させる。

2.子どものメンタルを全面的にカバーせよ

『世界にひとつの金メダル』
(C)2013 - ACAJOU FILMS - PATHE PRODUCTION - ORANGE STUDIO - TF1 FILMS PRODUCTION - CANEO FILMS - SCOPE PICTURES - CD FILMS JAPPELOUP INC.
6月17日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネマート新宿ほかにて全国順次公開

フランスは乗馬が身近と言えども、本格的な競技に参加するとなると、やはり費用がかかり、おのずと上流階級の人々のスポーツになる。小さな乗馬学校を営むピエールの父にはそこまでの財力がなく、週末の試合へは自ら運転して馬を運び、ホテルには泊まらず、親子とも車中で過ごし、食事も彼が作る。そのことを揶揄する選手に対しても動じず、子どもに「恥ずかしい」という気持ちを抱かせないようにふるまう。まさに父子一丸になって競技に取り組み、もちろん父の夢はオリンピック出場である。

3.子どもが決めたことにとやかく言わない

しかし、ピエールは学業も優秀で、大学に進学し、経済的に安定した弁護士となり、競技からは引退する。ここでポイントなのは、息子がその進路を決めるにあたって、父はとやかく言わないことだ。

4.本当に迷ったら手を差し伸べよ

『世界にひとつの金メダル』
(C)2013 - ACAJOU FILMS - PATHE PRODUCTION - ORANGE STUDIO - TF1 FILMS PRODUCTION - CANEO FILMS - SCOPE PICTURES - CD FILMS JAPPELOUP INC.
6月17日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネマート新宿ほかにて全国順次公開

面白いことにピエールは、競技の魅力に引き戻され、改めてオリンピックを目指すようになる。そこには、「ジャップルー」という競走馬としては小さいながら、凄まじい跳躍を持つ馬との出会いもある。気が小さくて気難しく、乗りこなすのが難しいこの馬とともにピエールはまずロサンゼルスオリンピックに出場するが、この時は本番中に落馬して失格、フランス中の批判を浴びる。中でもピエールが堪えたのが、「馬は素晴らしいのに、乗り手の実力が伴わない」というもの。ピエールはアメリカからの依頼に応じ、ジャップルーを売り渡し、自身も引退することを決意する。ここで初めて父親は息子に自分の感情を吐露する。その言い方も頭ごなしではなく、包み込むように温かく、訥々と喋るのだ。この父と子の会話は、金メダルを獲る試合の場面よりもエキサイティングで、父親の説得はまさに白眉。どんな言葉なのかは、ぜひ劇場で確かめてほしい。一つだけ言うと、息子は自分の練習につき合わせたせいで、父の人生の多くの時間を無駄にしたと罪悪感を抱いている。それに対し、その時間こそが有意義だったと父親は言い切る。この全面的な肯定が、息子の背中をぐぐっと押すのである。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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