『しあわせな人生の選択』 7月1日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか 全国順次公開 (C) IMPOSIBLE FILMS, S.L. /TRUMANFILM A.I.E./BD CINE S.R.L. 2015

もし余命わずかだったら…? 映画『しあわせな人生の選択』が映す、“男同士の距離感”に感動!

コラム

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死期が迫った友人との最期の時を描く『しあわせな人生の選択』(7月1日公開)。鑑賞後に深い余韻を残す本作は、スペイン版アカデミー賞と称されるゴヤ賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞の5部門を制覇しました。

スペイン・マドリードを舞台に、余命わずかな主人公のフリアン(リカルド・ダリン)は、彼を心配してはるばるカナダから訪ねてきた古い友人トマス(ハビエル・カマラ)の力を借りて、残り少ない人生を悔いなく過ごすための選択を一つずつ重ねていきます。

彼らが共に過ごすことができる期間はたった4日間ですが、悲観して大げさに嘆き悲しむことはしません。昔のような遠慮のない関係に戻ったフリアンとトマスの間には、笑いを誘うテンポの良い会話が繰り広げられ、時には泣いたり怒ったり……。本音や哀しみを素直に伝えつつも、最終的には相手の意思を尊重するというある種のセンスの良さを感じさせる“男同士の距離感”がとっても素敵なんです。

延命治療を断る友の意思を尊重し、全力でサポート

かつて恋愛映画の主役を務めるほどの人気俳優だったフリアンですが、今では病気のため出演舞台の降板も決定し、金銭的にも困窮しています。一方、カナダで大学教授をするトマスは社会的地位に加え、家族にも恵まれたいわゆる人生の成功者。一見明暗分かれたような2人ですが、彼らの間には卑屈感や優越感は一切ありません。残された時間はわずかという特殊な状況にも関わらず、いつもと変わらぬやり取りを交わしていくのです。

軽くお互いの状況を報告し合う2人は、口にしづらい金銭面に関しても「悪いが金欠なんだ」「俺はリッチだから問題ないね」程度のさりげないやり取りで完了。その言葉通り、支払いを済ませたトマスが見返りを求めるような言葉を発することは一切なく、気ごころの知れた2人の姿は、見ていて清々しさを感じさせます。

しかし、フリアンの担当医に面会した時、そんな2人の間にも緊迫したムードが流れます。一切の延命治療を断ったというフリアンに、我慢していたトマスの本音が思わずポロリとこぼれてしまうのです。その後フリアンが一年間考え続けた上での決心だということを知ったトマスは、つっこみを入れながらも、その後はフリアンの“死ぬまでの課題解決”を全力でサポート。しっかりと相手の意思を尊重する、熱い思いやりがあるんです。

息子との言葉を必要としないコミュニケーション

(C) IMPOSIBLE FILMS, S.L. /TRUMANFILM A.I.E./BD CINE S.R.L. 2015

そう遠くない“不測の事態”に備えて愛犬トルーマンの里親探しを進めるフリアンですが、なかなか良い引き取り先を見つけることができません。その一方で気がかりなのは、留学中の大学生の息子。実はちょっとしたわだかまりで疎遠になっていた息子に、病気のことを告げられずにいたのです……。残された時間がないフリアンは、トマスと共にスペインから留学先のアムステルダムまでひとっ飛び!久しぶりに息子は突然訪ねてきた父親に戸惑いながらも近況を報告します。

それまで人生に達観した素振りを見せていた少し皮肉屋なフリアンが、息子を前に本当のことが言えずオドオドする様子は結構笑えます。「まったく、どこの国でも父と息子って!」とつっこみたくなるくらい本音を伝えられないこの親子。しかしその裏側には、しばらく会っていなくても余計な言葉など必要とせず理解し合える父と息子の距離感がうつし出されており、本当に微笑ましい気持ちにさせてくれるのです。

実力派キャスト、スタッフが紡ぎ出す絶妙な関係性

フリアンを演じるのは、アカデミー賞外国語映画賞受賞の『瞳の奥の秘密』(2009年)で主演を務めたアルゼンチン人俳優リカルド・ダリン。友人トマスには名匠ペドロ・アルモドバル作品の常連俳優ハビエル・カマラが扮し、目線やちょっとした手の動き、小首をかしげる仕草だけで、言葉にならない彼らの“想い”を見事に表現しています。内面では激しい感情の起伏がありながらも、大人の男としての節度を感じさせるきめ細やかな2人の演技は、さすがの一言です。

監督と脚本を務めたのは世界的評価も高いセスク・ゲイ監督。本作は彼の母親の闘病生活と死を乗り越えた実体験が基となっています。そのため感傷的ではなくユーモラスなアプローチで描くことにより、思わず羨ましく感じるような2人の粋なやり取りを生んでいるのです。

余命わずかでも、普段と変わらぬように接し合うフリアンとトマスの関係は本当に素敵です。言葉にしなくても通じ合える男の友情を感じられる『しあわせな人生の選択』。男同士はもちろんのこと女同士でも、親子でも楽しめるおすすめの1本です。

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)

記事制作 : サンクレイオ翼

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