「誰が来ようと、全員殺す」。7月7日公開の『ジョン・ウィック:チャプター2』で、そんな物騒な言葉を有言実行し、121分間で144もの死体の山を築きあげる男ジョン・ウィック。このキャラクターは、長らく不調だったキアヌ・リーブスの新たな代表作となり、完全復活した彼の姿に世界中が熱狂しました。

その過激さゆえ、決して万人受けするタイプの作品ではありませんが、なぜシリーズ化され、世界中で支持されるのか。それは静かに、しかし、確実に敵を倒していく伝説の暗殺者ジョン・ウィックが放つ“圧倒的な説得力”にほかありません。キアヌにしか演じられないと言っても過言ではないほどのハマり役ですが、調べてみるとこのジョンとキアヌの間には無視できない多くの共通点があったのです……!

愛する人の死という悲しい過去を背負う男

(C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

前作『ジョン・ウィック』(2014年)は、ジョンがスマートフォンで亡き妻との思い出の動画を見ているシーンから幕を開けます。悲しみに暮れる彼のもとにある日、宅急便が届きます。そこには最愛の妻からの手紙とともにつぶらな瞳の子犬が。自分が亡き後のジョンのことを案じた妻からのプレゼントでした。この子犬を溺愛するジョンでしたが、ある事件をきっかけにこの犬まで無残にも殺されてしまいます。事件をきっかけに復讐の鬼と化すジョンですが、怒り狂う彼の姿には、愛するものを立て続けに失った悲しみの影がつきまとっているのです。

スクリーン上でそんな悲しみを背負ったこの暗殺者を見事に体現しているキアヌの佇まいからは演技を超えた何かが感じられます。それもそのはず、彼もまた過去に大事な存在を失っていたのです。1990年の『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』で共演し、『マイ・プライベート・アイダホ』(1991年)でも共演した大親友リバー・フェニックスが1993年に薬物のオーバードーズで死去。さらに1999年には恋人のジェニファー・サイムとの間に子どもを授かりますが死産となり、ジェニファー自身も2001年に交通事故で亡くなってしまいます。鬼気迫るような演技の裏側には、キアヌ自身が体験した壮絶で、悲しい過去があったのです。

世界一ぼっちが似合う!? 哀愁を感じさせる佇まい

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25歳、『ビルとテッドの大冒険』(1989年)ではおバカな高校生を演じ、満面の笑顔を見せていたキアヌ。悲哀の影などみじんも感じられません。それが、キアヌ=悲しい男というイメージが付きまとうようになったのはいつからでしょうか。1人で公園のベンチに座りながらサンドイッチを食べる……。原因はこれでしょう。スターとは思えない哀愁漂う“ぼっち姿”を2010年にパパラッチされたキアヌ。後にこの姿はフィギュアにもなり、「サッドキアヌ」なる現象を巻き起こしました。

対するジョンも、プライベートでは、だだっ広い滑走路で、1人黙々と愛車で飛ばす孤高の男です。仕事での知り合い、友人であろうと、容赦なく命を奪わなければならない。そんな宿命を背負う彼からは、「サッドキアヌ」に匹敵する男の寂しさが漂っています。ハリウッドきっての“ぼっち俳優”のキアヌだからこそ出せた男の哀愁は、役柄に一味も二味も深みを与えているのです。

ドライビングテク、銃の腕前も映画さながら超一流

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共通点はこれだけではありません。ジョンの唯一の趣味は愛車のマスタングを走らせることですが、キアヌも熱烈なモータースポーツ好きで有名です。特にバイクをこよなく愛するキアヌは、自身のブランドを持ち、過去に鈴鹿サーキットに訪れたこともあります。もちろん車の運転もお手の物で、「スタント運転もいくつかこなした。車をスライドさせて、ドリフティングもやったよ」と、『ジョン・ウィック』でも自らスタントに挑戦したことを明かしています。

また、ガン・フーと呼ばれるガンアクションとカンフーを組み合わせた独特のアクションスタイルを見事にこなし、ジョンの伝説の殺し屋という浮世離れした設定にリアルさをもたらしているキアヌですが、実際の銃の腕前も超一流です。ライフル射撃場で、映画さながらの立ち回りをしながら次々と的を仕留めていく姿が収められたトレーニング動画は、インターネット上で「キアヌやべえ!」と話題になりました。ちなみに『ジョン・ウィック:チャプター2』のトレーニングで、キアヌは計3万発を超える実弾を使ったそうです。ストイックな姿勢までまさにジョン・ウィックそのもの!

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調べてみるとこれだけの共通点があったキアヌとジョン。よく俳優は役に入り込むと言いますが、キアヌの場合は入り込む必要もないのです。むしろ役のほうからキアヌに入り込んでくる、そんな気さえするような自然な姿がスクリーン上には映し出されています。この役とのシンクロ度合いこそが、『ジョン・ウィック』シリーズの肝と言えるのではないでしょうか?

(文/ケヴィン太郎・サンクレイ翼)