『ダイ・ビューティフル』(C)The IdeaFirst Company Octobertrain Films

ミスコン女王を演じる男版“ざわちん”、麻薬の密売…フィリピン発の衝撃作に目が離せない!

コラム

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青春映画や恋愛映画といった普遍的な物語も良いですが、たまには刺激的な映画も観たいもの。自分自身とはまったく接点のない裏の社会や、世界の闇を疑似体験できるのも映画のひとつの醍醐味ではないでしょうか? そんなまだ見ぬ世界に出会いたいあなたにおすすめしたいのが、7月に公開される『ダイ・ビューティフル』と『ローサは密告された』です。

「海外版男のざわちん」がトランスジェンダー役を熱演

『ダイ・ビューティフル』と『ローサは密告された』は、どちらもフィリピン映画です。実は、フィリピンの映画界は現在、第3黄金期と称されるほどさまざまな才能が出現して大きな賑わいを見せているそう。

7月22日公開の『ダイ・ビューティフル』は、ミスコン女王として名を馳せたトランスジェンダー、トリシャ・エチェバリアが主人公。生前、彼女は自分が死んだら埋葬前までの死化粧として、毎夜異なるセレブの装いを施してほしいと仲間に頼みます。すると、こともあろうか彼女は突然死んでしまうのです。トリシャの葬儀を行う日々が、彼女の山あり谷ありの人生の回想とともに描かされます。

本作でなにより衝撃的なのは、トリシャを演じたパオロ・バレステロスの演技にほかなりません。ここでの演技が高く評価された彼ですが、本来はフィリピンの人気バラエティ番組の司会者やメイクアップ・アーティストとして活躍。インスタグラムで公開した、ビヨンセなどハリウッドセレブに扮したメイク写真が世界中で反響を呼び、日本でも「海外版・男ざわちん」として話題を集めた彼を、ご存じの方もいるのではないでしょうか? そのパオロですが、ここではものまねメイクの本領を発揮して、アンジェリーナ・ジョリー風の妖艶な姿に変身するなど、トランスジェンダー役をまさに体現。その姿は鮮明に記憶に刻まれるに違いありません。また、LGBTという言葉がようやく浸透してきていますが、まだまだ理解が深まっているとは言いがたい性的マイノリティの本音に触れられる1作でもあります。

マニラのスラム街に迷い込んだような気分に!

『ローサは密告された』(C)Sari-Sari Store 2016

一方、7月29日公開の『ローサは密告された』は、マニラのスラム街の片隅で小さな雑貨店を営む中年女性のローサが主人公です。貧しい生活ゆえ、少量の麻薬を扱っていた彼女ですが、ある日、誰かに密告されて夫とともに警察に逮捕されてしまいます。連行された彼女を待っていたのは、警察の恐喝まがいの要求。麻薬売人の密告と高額の保釈金を警察から要求された彼女と家族の運命が描かれます。

捜査の名のもとに私腹を肥やす警官の暴挙、いつ自分が陥れられるかわからないスラム街の住人の裏切りなど、法など置き去りにされた場所で生きる人間たちの現実を描いた物語はショッキングそのもの。実際にスラム街で撮られた映像は、自分もそこに放り込まれたような気分になるほど、臨場感に溢れています。日本でもロドリゴ・ドゥテルテ大統領による過激な麻薬撲滅戦争のことが大きく報じられたことは記憶に新しいですが、その現実が垣間見られる衝撃作と言っていいでしょう。

今回紹介した2作は、実はどちらも世界の映画祭で絶賛された作品です。『ローサは密告された』はカンヌ国際映画祭主演女優賞獲得、『ダイ・ビューティフル』は東京国際映画祭で最優秀男優賞と観客賞をW受賞しています。扱う題材は衝撃的ですが、どちらも最後にはすばらしい感動が用意されている、単なる衝撃作では終わらない映画なのです。ぜひ目撃してください。

(文/水上賢治@アドバンスワークス)

記事制作 : アドバンスワークス