(C) 2017劇場版「お前はまだグンマを知らない」製作委員会

群馬に埼玉、東京も!? “あるある”と“自虐”が笑える!地方ディスの世界

コラム

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群馬への過激なまでの郷土愛を描くコメディ映画『劇場版 お前はまだグンマを知らない』が、7月22日に公開されました。

地元ならではのあるあるネタを、自虐ギャグと濃厚な郷土愛とともに描く、いわゆる“地方ディス漫画”がブームになっています。原作漫画『お前はまだグンマを知らない』(井田ヒロト著)も、そんな地方ディス漫画の代表的な一作。映画公開にあわせて、この機に地方ディスという屈折した笑いに、触れてみてはいかがでしょう?

『翔んで埼玉』のヒットから始まった地方ディス

地方ディスといえば、特定地方のあるあるネタを、東京などと比較しながら自虐的にディスる(けなす)のが基本。作者などのディスる本人は、その地方の出身者であることが多いです。彼らの多くは地元を愛していますが、その愛を語るほどに東京との落差は浮き彫りとなり、それが地方ディスという形に発展していったのではないでしょうか。この構造はほかの地方出身者にも共通するため、ある種の共感を得ることができ、それが地方ディスブームへとつながっている気がします。

ちなみに、今回のブームの火付け役となったのは、『パタリロ!』で有名な漫画家・魔夜峰央が1980年代に出版し、長く絶版だった漫画『翔んで埼玉』でした。2015年に日本テレビ系のテレビ番組「月曜から夜ふかし」で同作が紹介されるや大反響となり、復刊された本書は、55万部超という異例のヒットになっています。

この漫画の主人公である麻実麗は、アメリカ留学後に東京のセレブ学園に転校。実父の命で出自を隠していますが、実は所沢(埼玉県)出身です。「埼玉から東京に行くには通行手形がいる!」「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」など、学園での激しい差別を知り、埼玉解放のために立ち上がります。

『お前はまだグンマを知らない』の中毒性にハマる

漫画『お前はまだグンマを知らない』(以下「おまグン」)も、千葉在住の主人公の高校生・神月紀が、謎多き土地グンマに転校するところから始まります。

「地球上に唯一残された秘境」「とりあえず一番いい装備で行け」「グンマに来て……生きて帰った者はいない」など、引越し先のグンマについてネットで調べると、出てくるのは驚きの情報ばかり。学校ではグンマ愛が振り切れたクラスメイトたちに翻弄され、神月は命の危険がある事件に巻き込まれていきます。その中で“グンマの真実”とグンマスピリットにふれ、立派なグンマーへと成長していくのです。

SNSでもその中毒性の高さへのコメントが寄せられているおまグン。今年3月に日本テレビ系で放送された実写ドラマ版は、深夜帯ながらなかなかの視聴率を獲得しました(第1話の平均視聴率は5.3%。関東地区、ビデオリサーチ調べ)。劇場版映画もドラマ版の未公開シーンなどを盛り込んだ特別編集版として、間宮祥太朗(神月紀役)、吉村界人(轟一矢役)、馬場ふみか(篠岡京役)ら、若手俳優陣がエネルギッシュに演じています。

地域間のディスり合いで、ギャグも倍増

おまグンのクライマックスの1つとして、群馬、栃木、茨城という北関東3県の覇権争いが描かれています。2016年の「47都道府県別魅力度ランキング」(ブランド総合研究所)では、群馬県が45位、栃木県が46位、茨城県が47位(最下位)という残念な結果でした。ライバル意識のある隣県同士のディス合戦は、地方ディス漫画の魅力を増幅させるテーマといえそうです。そうした側面を持つ地方ディス漫画を、いくつか見てみましょう。

北関東を栃木側から描いた漫画『ススメ!栃木部』(一葵さやか著)は、魅力度ランキングで低迷する栃木の魅力を広めようと「栃木魅力向上部」を立ち上げた女学生たちの、珍妙なアピール活動が楽しい作品。ここでも茨城、群馬との不毛な争いが笑いを誘います。

ホラー漫画の大御所こと、犬木加奈子の『埼玉最強伝説』では、関東圏の埼玉、神奈川、千葉、北関東(主に茨城)のどの県が一番、東京の腰ぎんちゃくになれるのかというバトルが描かれました。「埼玉はずっと東京を支えてきた」と訴える姿には、悲しい笑いを禁じ得ません。

東京も他人ごとではない!? 赤羽に魔界はあった

他にも、47都道府県を擬人化した漫画作品は数多くあります。『都道府県擬人化マンガ ジャポニズム47 トキメキ大和魂編』(青色イリコ著)には、関東6県が組体操でピラミッドを作り、その上に悠然と座る東京といったシーンが。『47都道府県擬人化バトル よとしち!』(佐保著)でも、日本各県を擬人化した生徒たちの集まる学園で、頂点に立つ“シュト”を倒すため、各地方のご当地自慢がゆるく展開されました。

人口減少で崩壊の危機に直面した鳥取を中心に、鳥取と島根のライバル関係や首都争奪戦を記す『四十七大戦』(一二三著)。関西を舞台に、滋賀の繁栄と京都への下克上を目論む『三成さんは京都を許さない』(さかなこうじ著)などの作品にも、地方ディスは登場しています。

首都東京の内部にも“魔界”があったという発想の、『増補改訂版 東京都北区赤羽』(清野とおる著)が、山田孝之主演でドキュメンタリードラマ化されて話題になったのも、記憶に新しいところです。東京ですら地方ディスの対象となるのだというのは、新鮮な驚きでした。

(C) 2017劇場版「お前はまだグンマを知らない」製作委員会

おまグンの作者・井田ヒロトは、中学時代に群馬に越して以来、群馬を愛し、現在も群馬県高崎市に住んでいるとのことです。地域に密着する“地方ディス”は、作者の地元愛から発せられるもの。人口減少などリアルな社会問題も横たわる地元を自虐的にイジりつつ、地元の活性化を本心で願う作者の心の叫びであるのかもしれません。

(文/岸田キチロー@H14)

記事制作 : H14

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