つい先日も、神木隆之介との微笑ましい“デート風景”をInstagramで公開して話題を集めていた浅野忠信。この秋OAされるフジテレビ系のドラマ「刑事ゆがみ」にも出演するなど、映画のみならずドラマでも幅広い活躍を見せる浅野だが、頻繁に更新されるInstagramからは、とても22歳の娘と17歳の息子がいる父親とは思えぬほど、自由でロックな素顔が垣間見える。

1995年に6歳年上のCHARAと結婚し、22歳で父親に

忘れもしない1993年。フジテレビの深夜枠で放送された岩井俊二監督のドラマ「FRIED DRAGON FISH」に、浅野演じる殺し屋ナツロウが登場した途端、雷に打たれたような衝撃を受けた。「このとてつもなく色っぽい男は誰なのか?」。エンディングに流れるCHARAの名曲「Break These Chain」とともに、“浅野忠信”という男の名前がインプットされた。

浅野は22歳の時に映画『PiCNiC』で共演した6歳年上のCHARAと結婚し、同年に長女のSUMIREが、1999年に長男のHIMIが誕生。CHARAの「Junior Sweet」のジャケットに浅野が登場したり、浅野の写真集にCHARAが写っていたりと日本中のサブカル女子たちの憧れだった最強カップルも、結婚14年目となる2009年に離婚。その後、浅野とモデルや若手女優との熱愛が報じられるたび、私は「娘と変わらない年頃の彼女ってどうなの?」と勝手に憤慨していたものだった。

ラフォーレ原宿の巨大ポスターに、長女・長男と親子3人で登場

そして今春、ラフォーレ原宿の「MEN’S LAFORET」の巨大広告に、浅野と長女でモデルのSUMIRE、さらには長男のHIMIが、親子3人で登場。実現に至った経緯はわからないが、それを目にしたとき、「この家族、いろいろあってもちゃんとうまくいってるんだ!」とホッとしたと同時に、なんとも言えない感傷的な気持ちに襲われた。(ちなみに、SUMIREは来年公開の映画『サラバ静寂』で女優デビューも決まるなど、今後の活躍が期待される逸材として注目を集めている)。

浅野が成長した子どもたちと1枚のポスターに収まって、原宿の交差点を飾り、CHARAもTwitterで「遠くから見守ったわ〜 まぁまぁデカイわねー」と交差点で看板を見上げる後ろ姿の画像とともにコメントをアップしている、という事実だけで、人知れずある家族が育んだ時間や絆みたいなものがいくらでも想像できて、感慨深い気持ちになってしまうのだ。

『幼な子われらに生まれ』では「バツイチ、娘に嫌われる父親」に

8月26日(土)から公開される映画『幼な子われらに生まれ』で、浅野が「バツイチ、再婚。一見良きパパを装いながらも、実際は妻の連れ子とうまくいかず、悶々とした日々をすごすサラリーマン」役を演じると聞き、「これは見なくては!」と食指が動いた。

監督が映画『少女』の三島有紀子で、初の女性監督作品への出演というのもあったし、前妻役を寺島しのぶが演じるというのも興味をそそられたポイントではあった。しかし一番のポイントは、再婚はしていないまでも、「バツイチ」で娘と上手くいかないという、実生活と重なる部分がある役を演じるのは、どんな気分なんだろう? という下世話な気持ちが働いたからだ。

すでにTBS系のドラマ日曜劇場「A LIFE~愛しき人~」で、映画の中で見せる尖った浅野とは別の父親の顔を見せていたし、映画『私の男』では、二階堂ふみとの父娘の近親相姦的な関係を恐ろしいほどの説得力で演じていた。だからこそ、よりドキュメンタリーに近い手法で撮影する三島監督作品で、浅野がどんな表情を見せるのか、すごく気になった。

不器用ながらも自分らしいやり方で役割を果たす「父」の顔

『幼な子われらに生まれ』で浅野が演じているのは、普段のロックな浅野のイメージを封印した、とことん不器用で冴えない中年サラリーマンの田中信。前妻との実子と再婚相手の連れ子、そして、再婚相手との間に授かった実子に対して、「父親」としての愛情をどうやって注いだらいいのか、悩み、戸惑い、右往左往している役柄だ。

血がつながっていようがいまいが、どんな家族にも傍から見るとわからない葛藤や苦しみがあり、努力だけではどうにもならないことがあるということを、これでもかというくらいヒリヒリと突き付けてくる。でも同時に、長い時間の積み重ねや、日常生活の中で起きる、とてつもなく感情に揺さぶりをかけてくる“事件”が、行き詰まっていた関係性の突破口になったりもする。そんなかすかな希望もしっかりと見せてくれる。

俳優・浅野忠信が映画の中で見せる不器用で繊細な父親の顔は、SUMIREとHIMIの父親として、そして表現をなりわいにするアーティストとして、自分らしいやり方で「父親」の役割を果たしている浅野の姿と重なり、より一層厚みを増していくのだ。

(文/渡部喜巴@アドバンスワークス)