サム・ライミ版『スパイダーマン』に、リブートされた『アメイジング・スパイダーマン』。さらには『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で遂にマーベル・シネマティック・ユニバースに参戦するなど、スパイダーマンが大活躍しています。最新作『スパイダーマン:ホームカミング』も8月11日より全国ロードショーしています。

そんな、彼が活躍する映像作品やコミックには、実は日本版が存在するのです。本家アメリカ版とは全く違うその内容を、あなたはご存知でしょうか?

日本のスパイダーマンは巨大ロボに乗って戦う!

なんの冗談だ? と思った方もいらっしゃることでしょうが、本当です。東映版「スパイダーマン」は東京12チャンネル(現・テレビ東京)にて、1978年から1979年にかけて全41話が放送された特撮テレビ番組。スパイダー星人・ガリアから超能力を与えられてスパイダーマンとなった山城拓也が、父の仇でもある悪の異星人・モンスター教授が送り込む怪人・マシーンベムと戦います。すでにこの時点で原典の設定はカケラも残っていませんね。

巨大化したマシーンベムと戦うため、スパイダーマンはGP-7というマシンで宇宙戦艦「マーベラー」に乗り込みます。マーベラーは巨大ロボット「レオパルドン」に変形すると、敵を瞬殺。本当にあっという間に敵を倒してしまうので、レオパルドンは一部の人々から、「特撮界最強ロボ」とよばれているとかいないとか。

このフォーマットが戦隊シリーズに合流し、現在まで続く「スーパー戦隊シリーズ」の基礎が出来上がったのでした。ちなみに原作者であり、マーベルの大物であるスタン・リーは、このレオパルドンが結構お気に入りで、スパイダーマンのアクションにもご満悦だったという話です。

70年代日本の暗い青春が炸裂! 漫画版スパイダーマン

そして東映版「スパイダーマン」の放送以前に、1970年から1971年まで月刊誌『別冊少年マガジン』に連載されていたのが、今では巨匠として名高い池上遼一が描いた『スパイダーマン』。なんと毎号100ページ連載と、編集部もかなり力を入れていたようです。そして、その内容はというと……。

基本設定はアメリカ版とほぼ同じ。放射能グモに噛まれた小森ユウという高校生が、スパイダーマンとなって戦います。しかし、当時の“時代の気分”なのでしょうか。話が暗い。それはもう、暗すぎるのです。

たとえば、本家スパイダーマンの悪役・エレクトロ。本作では夢を抱いて上京してきたものの、交通事故を起こして多額の負債を背負い、犯罪に手を染めてしまいます。電気人間である彼は、殺人も辞さずに次々と銀行を襲います。そんなエレクトロに新聞社は宣伝効果を狙い、彼を捕まえたものに1000万円の懸賞金をかけるのです。

一方で、ユウは行方知れずの兄を探すために上京してきた、ペンフレンド(時代を感じますね)のルミちゃんにほのかな恋心を抱いていました。彼女の母の手術代のため、ユウはエレクトロを倒します。しかし、そのエレクトロこそが、実はルミちゃんの兄だったのです……。

その後も、“自在に電気を操る怪人に勝てるものなどいない”と考えていたのに、懸賞金を支払うことになった新聞社が、その意趣返しとしてネガティブキャンペーンをおこないます。これによって「偽善者」、「エゴイスト」、「売名野郎」などと社会から糾弾されるスパイダーマン。襲われていた女の子を助けてみれば、婦女暴行犯と勘違いされてしまいます。ルミちゃんは都会で一人生きていくため、ゴーゴーガール(死語ですねえ。水商売と思ってもらえれば)になりました。

ストーリー担当が参加! しかし…不幸は続くよどこまでも

第7話からはストーリー担当として、SF作家の平井和正が参加。これでテイストが変わるかと思いきや……。もっとエラいことになってしまいました。

初っ端から10ページ以上に渡って、思春期特有のエロ妄想に悩まされるユウ。その後、いきなりスパイダーマンになって東京タワーのてっぺんに立ち、「俺は超人だ!」と叫んだりします。学校内では婦女暴行の冤罪のために孤立しているユウでしたが、ひょんなことから、犬丸という不良学生と友人になります。ところがクスリの売人だった彼は殺人を犯した上、パトカーに追跡されて事故を起こし、死んでしまうのでした。

その後もユウは、超能力を暴走させる女性を立て続けに目の前で死なせてしまいます。さらに、ルミちゃんが不良たちに車に連れ込まれて乱暴された上に、殺人カー“狂魔”に襲われて車ごと高速道路から落下。命を落としてしまい……。まだまだ彼の不幸は止まりません。

事故で瀕死の少年・光夫に輸血したユウは、その姉の雪子に恋心を抱きます。しかし、輸血により超能力を得た光夫は強盗殺人を犯した上、スパイダーマンになり変わろうと画策。身体を売ってまで光夫を育ててきた雪子は絶望し、発狂してしまうのでした。

そして最終話。ユウはまたしても、目の前で不幸な女性の死を見ることになります。芸能プロの差し金で輪姦され、病気をうつされ、表舞台から消された元アイドルのミキ。彼女はユウの目の前で、芸能プロに雇われたチンピラに刺されてしまいます。そして、彼女の怨念は“虎”と化し、自分を陥れた関係者を皆殺しにするのです。その虎を見た瞬間、彼女に力を与えたのは自分の超能力だということを悟り、ユウは愕然とするのでした……。

この漫画、1話から最終13話まで、ハッピーエンドの回が一つもありません。読んでいると「ああああ!」と叫んで頭をかきむしりたくなること必定。ちなみに前出のスタン・リーは後年、「日本版の『スパイダーマン』は『スパイダーマン』じゃなかったね」と言っていたとか。いや、面白いんですけどねぇ。

本国のコミックにまさかの登場!日本版スパイダーマン

このように両極端に振りきった日本版の『スパイダーマン』でしたが、2015年にまさかの出来事が起きます。

全ての平行世界のスパイダーマンが一同に会するマーベルのコミック『スパイダーバース』に、日本版スパイダーマンが登場したのです。そう、東映版スパイダーマンも、レオパルドンも、『コミックボンボン』で連載されていた『スパイダーマンJ』も、名前だけとはいえ小森ユウも! こんなことが現実に起きようとは……。お願いですからもっとやってください。

(文/ハーバー南@H14)