強盗などの犯罪を実行する際には、犯行が完了するまでの計画を練るブレイン、犯行に必要な道具を集める調達屋、現場で犯罪を行う実行犯などさまざまな役割があります。その中でも重要な役割を担う“逃がし屋”をご存じでしょうか……。

犯罪組織には欠かせない裏稼業“逃がし屋”とは?

“逃がし屋”とは、強盗などの現場にいる実行犯を安全かつ速やかに逃亡させるドライバーのこと。その異質な存在から、これまでも数多くの逃がし屋を題材とした映画が作られてきました。警察車両や敵対する組織の車を巻くドラインビングテクニック、寡黙な一匹狼的生き方……。あえて“漢(オトコ)”と書きたくなるようなカッコよさに溢れているのです。

ストイック&ハードボイルドにシビれる…『ザ・ドライバー』

1978年公開の『ザ・ドライバー』は、『48時間』シリーズの名匠ウォルター・ヒル監督が手がけたクライムサスペンスです。凄腕の逃がし屋“ドライバー”と彼を執念深く追う刑事。何が何でもドライバーを捕まえたい刑事は、過去に捕まえた強盗犯と取引し、逃がし屋を罠にかけようと画策します。

逃がし屋映画のクラシック的作品で、ウォルター・ヒル作品らしい男臭さが画面の端々から感じられる本作。逃がし屋と刑事の戦いのカギを握る美女など、個性的なキャラクターが絡みます。さまざまなキャラクターの思惑が交錯する中で、ニヒルな佇まいのドライバー。犯罪者特有のアウトローですましたカッコよさに多くの男性は憧れたことでしょう。

裏稼業に生きる男が見せる、純愛に惚れる…『ドライヴ』

第64回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『ドライヴ』(2011年)は、『ラ・ラ・ランド』(2017年)のライアン・ゴズリングの出世作の一つ。デンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフン監督初のハリウッド作品でもあります。昼はカースタントマン、夜は逃がし屋として働く天才ドライバー。ある日、同じアパートに住む女性に一目惚れしたドライバーは、彼女を守るために裏社会の組織と戦うことになりますが……。

寡黙で口下手なドライバーが、惚れた女を守るために命を投げうって戦う……男の中の男的な姿に惚れる本作。しかし、それ以上にシビれるのは冒頭のカーチェイスシーンです。猛スピードで犯行現場から走り去りながらも、パトカーに見つかりそうになったら、車を止めてヘッドライトを消して隠れたりと、リアルさを感じさせる緩急のついた逃走劇は一気に引き込まれます。

映画とシンクロするポップな音楽が気持ちを盛り上げる!…『ベイビー・ドライバー』

『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2008年)、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2014年)など、スタイリッシュでユーモラスな作風で知られるエドガー・ライト監督最新作『ベイビー・ドライバー』(8月19日公開)は、これまでの逃がし屋映画のイメージを革新させる一本です。

これまで描かれてきたアウトローな男たちと異なり、渋さなど微塵も感じさせない主人公ベイビー。幼少期の交通事故の後遺症でいつも耳鳴りに悩まされていますが、音楽を聴くことで耳鳴りから解放。超絶ドライビングスキルを持つイカれたドライバーに覚醒するという、ユニークな設定となっています。

また劇中の音楽もとにかくポップで、ベイビーが逃走中に聞く曲が映画を盛り上げます。彼のプレイリストにはロック、パンク、ファンク、ヒップホップなどの名曲が満載。爆音でお気に入りの曲をかけながらノリノリで車を運転する彼の姿は、良く街中で見かける若者のようで親近感すら覚えてしまいます。カーアクションのスピード感を加速させる“わかってる”選曲は、観客を興奮させること間違いなしです。

映画の花形ともいえるカーアクションはもちろんのこと、犯罪に関わってしまう人間の葛藤も描かれる逃がし屋映画。時代を超えて題材として選ばれるのは、アクションとドラマの両立ができるからかもしれません。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)