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キモさの奥に美しさあり!? 『エイリアン』がもたらした革新性とは?

コラム

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宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない――。この印象的なキャッチコピーに誘われた観客に多大なる衝撃を与えた人気SFホラー『エイリアン』(1979年)。9月15日にその原点を描くシリーズ最新作『エイリアン:コヴェナント』が公開されます。

嫌悪感を与えるグロテスクなビジュアルながら、どこか美しさや神々しさすらも感じさせる唯一無二の世界観で多くのフォロワーを生み出した『エイリアン』。ここではその革新性について紐解いていきたいと思います。

性器をモチーフとした独特なクリーチャーデザイン

『エイリアン』(1979年)

本編を見たことがない人でも“エイリアン”と聞けば、口と後頭部が出っ張ったあのデザインを思い浮かべるでしょう。“ゼノモーフ”と呼ばれるいわゆる成体のエイリアン以外にも映画には、エイリアンの幼体“チェストバスター”や幼体を人間に産み付ける“フェイスハガー”などの、さまざまクリーチャーが登場します。

これらのクリーチャーに共通するのは、人間の性器がモチーフになっている点です。シリーズ1作目で宇宙船の乗務員の腹を突き破って出現するチェストバスターやゼノモーフは男性器がモチーフ。またフェイスハガーに関しては外側がカブトガニのような形ですが、内側は女性器のような形状をしています。

このように人間の生理的な嫌悪を誘うようなモチーフを大胆にデザインに採用することで、エイリアンの不気味さをビジュアル化することに成功しています。

エイリアンの造形を生み出したH.R.ギーガー

この個性的かつ先鋭的な『エイリアン』のクリーチャーを生み出したのが、スイス出身の画家でデザイナーのH.R.ギーガーです。チューリッヒで建築と工業デザインを学んだ彼は、美術工芸学校在学中の1960年代から、絵画作品を地元新聞や自費出版の書籍で発表していました。そして1970年代にはアレハンドロ・ホドロフスキーの幻のSF大作『デューン』にデザインで参加したことで映画界とのコネクションを紡いでいきます。

そんな彼のデザインの特徴は、モノトーンで陰影が強く、頭骨や脊椎、性器などの人間の肉体のパーツと機械的造形が融合したシュールさにあります。

『エイリアン』では、ゼノモーフなどのクリーチャー以外にも、惑星LV-426で発見される馬蹄型の宇宙船などのデザインも担当しているギーガー。宇宙船は、どこか古代的ながらも、メカニカルなモチーフが散りばめられた近未来的な雰囲気も漂わせています。古代的かつ近未来的という、相反する2つの要素が、本シリーズをさらに異質なものにしているのです。

異星人モンスター映画の先駆け的存在

革新的なデザインで映画界に衝撃を与えた『エイリアン』でしたが、この作品の登場は“ホラー映画”というジャンルにも大きな影響を与えます。それまでのホラー映画に登場するモンスターといえば、吸血鬼、ゾンビといった架空の生き物や、巨大化・凶暴化した昆虫や動物などの生き物が中心でした。

しかし『エイリアン』の公開以降、異星人を恐怖の対象として描く“エイリアン映画”はホラー映画のサブジャンルとして確固たる地位を確立。さらには映画だけでなく、ゲームや漫画など、ジャンルを超えて多くのフォロワーを生み出しました。

そんなエイリアンの独特な世界観が存分に発揮されているシリーズ最新作『エイリアン:コヴェナント』には、ギーガーのデザインを継承したおぞましい新クリーチャー“ネオモーフ”が登場します。耳から胞子が入ることで、体内に宿っていき、宿主の背中を突き破る幼体“バックバスター”に。そして最終的には白っぽいゼノモーフとでもとれるようなあのおなじみの形へと成長を遂げていく“ネオモーフ”。その姿はどこか神秘的な雰囲気すら醸し出しています。

これらのキャラクターに代表されるような、恐怖の中にも美しさが感じられる映像は、ぜひ映画館の大きなスクリーンで堪能してください。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)

記事制作 : サンクレイオ翼

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