同じ顔なのに、全然違う人に見える……。そんなマジックのようなことをやってのける俳優がいます。傑作SF『エイリアン』(1979年)の原点を描く『エイリアン:コヴェナント』(9月15日公開)で、2体の異なる特性を持ったアンドロイドを演じ分けているマイケル・ファスベンダーです。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

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『アサシン クリード』(2017年)でも1人2役を演じたファスベンダー。『エイリアン:コヴェナント』では、無機質なアンドロイドという役でありながら、陰と陽の異なる印象を与えます。そこで今回は、これまでに1人2役に挑んできた数多くの俳優の中から特に強烈なインパクトを残した演技を紹介します。

濃すぎる顔が2人いるのは胃もたれ…ジェイク・ギレンホール

ハリウッドきっての“濃厚フェイス”がクセになるジェイク・ギレンホールは、2014年公開の『複製された男』で1人2役に挑んでいます。高圧的な母親に頭が上がらない大学講師のアダムと彼に瓜二つの映画俳優アンソニーが出会ったことから、それぞれのアイデンティティを失っていくミステリーで、ギレンホールは“堅物”と“浮気症”という正反対の役柄を演じています。

思慮深い男と軽薄さのにじみ出た男の違いを、ギレンホールは眉のつり上がり具合など細かい顔の表情で演じ分けました。話が進むにつれて、アダムとアンソニーが入れ替わり、お互いの恋人や妻を騙そうとする難しい演技にも挑戦しています。しかし、本作の肝は、アダムとアンソニーそれぞれのアイデンティティが失われていく姿です。2人の独立した人格と、それぞれの人格が崩壊していく様をリアルに演じた分けた圧巻の演技は一見の価値あり。「あの強烈な顔が2人もいるのはちょっと……」と敬遠せずに、ぜひその表現力の高さにド肝を抜かれてください!

マッドでガチな兄弟喧嘩でその迫力も2倍…トム・ハーディ

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)など、その男くささで、観客を魅了するトム・ハーディ。『レジェンド 狂気の美学』(2015年)では、彼が1960年代のロンドンに実在した双子のギャングスター兄弟を熱演しています。貧しい家庭で生まれ育ち、命をかけて裏社会でのし上がったレジーとロンのクレイ兄弟。腕っぷしの強さとビジネスの才能を兼ね備えた兄レジーと、一度キレると手がつけられない凶暴な弟ロンという双子の兄弟を、落ち着いたトーン、まくし立てるような早口など、話し方や佇まいに違いをつけて演じ分けています。

圧巻はレジーとロンの壮絶な兄弟喧嘩。ただでさえイカついハーディが、2人になって取っ組み合っている姿は、その迫力も2倍! 撮影時はハーディとスタントマンが指輪をはめたままの拳で本気で殴り合ったそうで、見ているこちらにも痛みが伝わるほど。すさまじい迫力の裏側には、ハーディの体当たりの演技が隠されていたようです。

主人公と悪役を演じ分けるカメレオンっぷり…マイク・マイヤーズ

ハリウッドを代表するコメディ俳優、マイク・マイヤーズも1人2役を演じています。その作品とは30年の時を経て冷凍催眠から目覚めた悪の帝王と英国諜報部員の戦いを、パロディあり、下ネタあり、60年代カルチャーへのオマージュありで、描いたコメディ『オースティン・パワーズ』(1997年)。主人公の英国諜報部員オースティン・パワーズと彼の宿敵である悪の帝王ドクター・イーブルの2役に挑戦しています。

60年代のロンドンファッションを意識した華美なスーツに身を包んだオースティン・パワーズと、スキンヘッドで小太りのドクター・イーブルという似ても似つかない2人。お調子者のヒーローと冷酷な悪役という正反対の役柄を、嬉々として1人で演じるマイヤーズの演技パターンの豊富さを堪能することができます。そのハッチャケ具合には、いつ見ても笑えること間違いなしです。

一口に「1人2役」と言っても、そっくりな別人から兄弟、まったくの他人まで、さまざまなバリエーションがあります。しかし、共通しているのは、演じる俳優の演技力の高さ。あの手この手で、違いを表現する俳優の姿に注目して、これまで観た映画を再見してみるのも面白いかもしれません。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)