『ダンケルク』9月9日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
(C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED
『メアリと魔女の花』絶賛公開中 (C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会

【映画の料理作ってみたらVol.28】『ダンケルク』と『メアリと魔女の花』に共通する“意外な食べ物”作ってみた

コラム

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文=金田裕美子/Avanti Press

元気のいい女の子が魔法の国で大冒険するアニメーション映画『メアリと魔女の花』と、第二次世界大戦の戦闘をリアルに描く超体感戦争映画『ダンケルク』。一見なんの接点もなさそうなこの2作品には、共通するものがあります。ひとつは、両方ともイギリスのお話であること。『メアリと~』はイギリスの作家メアリー・スチュアートによる児童文学が原作で、舞台となる町はイギリスの実際の風景をもとに描かれています。『ダンケルク』は、タイトルこそフランスの地名ですが、描かれるのはドイツ軍によって海岸線に追い詰められたイギリス兵たちの大規模な撤退作戦です。

映画を観ていてやたら食べ物に反応する私が見つけたもうひとつの共通点は、ジャム。どちらの作品にも、赤いおいしそうなジャムが登場するのです。相次いでジャムを目撃したということは、「映画の料理」の神様のお告げに違いない(いるのか、そんな神様)。というわけで、今回はジャム作りに挑戦いたします。

『メアリと魔女の花』シャーロット大おばさんの手作り木いちごジャム

『メアリと魔女の花』の主人公は、田舎の村に引っ越してきたばかりでまだ友だちもおらず、毎日退屈している少女メアリ。花の手入れや掃除を手伝おうとしても失敗ばかりでくさっていたある日、一緒に暮らすシャーロット大おばさんから届けものを頼まれ、メアリはふたつ返事で引き受けます。届ける相手が彼女の赤毛をからかった少年ピーターだったのは気に入らなかったけれど、ピーターは大おばさん特製の木いちごのジャムをもらって大喜び。このあと魔法の国に迷い込んだメアリは、大おばさんに手渡されたピーターの住所を書いた紙を持っていたおかげで、ピーターとふたりで大変な事件に巻き込まれることになります。

『メアリと魔女の花』絶賛公開中 (C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会

『ダンケルク』婦人会特製の保存用ジャム

一方の『ダンケルク』には、まったく違った形でジャムが登場します。この映画で描かれるのは、第二次世界大戦中に起こった「ダンケルクの戦い」と呼ばれる戦闘。1940年、ドイツ軍のフランス侵攻により、イギリスとフランス他の連合軍はフランス北部の港町ダンケルクに追い詰められます。絶体絶命の兵士たちをそこから救出し、ドーバー海峡を挟んだ42キロ先の対岸、イギリスまで運ぶ救出作戦が行われるのですが、救出を待つ兵士の数はなんと40万人! 平時だって大変なのに、ドイツ軍が撤退を阻止しようと陸から海から空から攻撃してくるのです。当然ながらそう簡単にことは運びません。映画『つぐない』(2008年)で、裕福な家の娘セシリア(キーラ・ナイトレイ)と将来を誓い合った使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)が戦場で負傷し、救援を待っていたのもこのダンケルクでした。

『ダンケルク』9月9日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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今回の『ダンケルク』では、この海岸から脱出しようとする若い兵士トミー(フィン・ホワイトヘッド)、自らの船とともに救出作戦に参加する民間人ドーソン(マーク・ライランス)、作戦を援護するスピットファイアの操縦士ファリアー(トム・ハーディ)の3人のそれぞれの闘いが、ものすごい臨場感で描かれます。で、ジャムが出てくるのはトミーのエピソード。

兵士トミー役のフィン・ホワイトヘッド
『ダンケルク』9月9日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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市街戦から逃れてなんとかダンケルクの海岸にたどり着いたトミーは、負傷兵をのせた担架を運ぶことで兵士の列を追い越し、何とか救援船にもぐり込みます。この船だってもちろん安全ではありませんが、トミーはとりあえずほっとひと息。そして兵士でごった返す船内で、給食のパン入れみたいなトレーで配られているのが、そう、ジャムを塗ったパンなのです。ジャムパンと飲み物を受け取ったトミーは、無心に食べ始めます。

ホーローのカップに入っているのは、イギリスだけに紅茶でしょうか。命からがら逃げてきた戦場でジャムパンと紅茶。なんだか優雅な感じがします。だって日本の戦時中といえば、砂糖が極端に不足して人々が甘いものに飢えていたイメージが強い。『この世界の片隅に』(2016年)のすずさんも、『母と暮せば』(2015年)の伸子さん(吉永小百合)も、砂糖をそれはそれは大事に扱っていました。イギリスでは戦時中も砂糖がふんだんにあったのかしら……と思って調べてみたら、全然そんなことはなかったのです!

スピットファイア操縦士に扮したトム・ハーディ
『ダンケルク』9月9日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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開戦の翌年、1940年には早くもイギリスで食料の配給制度が始まりました。真っ先に対象となったのが、ベーコンとバターと、この砂糖。日本と同じく島国であるイギリスは、食料品の多くを輸入に頼っており、砂糖も原料調達が難しくなったのです。次いで肉や紅茶、牛乳、そしてジャムも配給制になりました。どんどん食料が不足していくなか、政府が目をつけたのが余剰果物。それまで収穫の時期に獲れすぎた果物は廃棄される運命にあったのですが、これを保存食であるジャムにして有効活用しようというのです。

そしてこのとき大活躍したのが、イギリス中の町や村に何千という支部がある婦人会(Women’s Institute=WI)でした。婦人会連盟はこのために食糧省から砂糖を確保、全国各地のメンバーは余剰果物や自然に実った果物を使い、ボランティアでジャム作りに励みました。終戦までに5300トン以上もの果物がジャムになり、配給品や軍用として出荷されたそうです。トミーが船で食べたジャムパンも、婦人会で作られたジャムを使っていたのかもしれません。

イギリスは目と鼻の先のダンケルク
『ダンケルク』9月9日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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戦時中ではなく現代のお話ですが、この婦人会の活躍を描いた映画もあります。2003年の『カレンダー・ガールズ』がそれ。田舎町の婦人会のおばさま達が、病院の待合室に寄付するソファーの購入費用にあてようと、ヌードモデルになってカレンダーを制作、売り出したところ大騒動に……という実話(!)の映画化です。ヌードカレンダーの発案者クリス(ヘレン・ミレン)が「私たちはジャムを作ってるだけじゃないのよ!」なんて演説をぶっているところを見ると、イギリスでは「婦人会=ジャム」のイメージが定着しているようです。もしかすると、シャーロット大おばさんも婦人会のメンバーだったのかも……?

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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