行方不明になった夫が“侵略者”となって帰ってきた。侵略者は彼を合わせて3人。散歩しながら人々と会話を交わし、そして“概念”を奪っていく。日常が終わりを告げる時、いったい何が起きるのか? 地球は侵略されてしまうのか――。

劇団イキウメの舞台を映画化した『散歩する侵略者』(公開中)は、黒沢清監督の最新作です。こういった、人間に“寄生”したり“擬態”したりする系の侵略って、とかく展開がエグくなりがちですけど、つい目が離せなくなってしまいますよね。そこで今回は、侵略者による入れ替わりを描いた映画を紹介していきたいと思います。

入れ替わり侵略者の元祖!…『盗まれた街』(1955年)

ジャック・フィニイといえばオールドSFファンには有名な、ノスタルジーと奇想の作家です。そんな彼が書いたSFホラーの傑作が『盗まれた街』。生涯で1万冊以上の小説を読んできた筆者ですが、読んでいるあいだにこれほど嫌な汗をかいた本はありません。

同作は過去に『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(1956年)、『SF/ボディ・スナッチャー』(1978年)、『ボディ・スナッチャーズ』(1993年)、『インベージョン』(2007年)など、さまざまな形で映画化されました。

原作ではアメリカのとある小さな街で医師をしている主人公のもとに、「家族が偽物だ」と訴える人が続々とやってきます。最初は集団ヒステリーだと考えていた主人公でしたが、ある家の地下室で、その家の主人そっくりの死体を発見。実は、街の人々は宇宙からやってきた侵略者によって、徐々に入れ替わられていたのです。本人の記憶をすべて持つ上に、外見も全く区別がつかない偽物たち。主人公たちは街からの脱出を試みるのですが……。

何がイヤって、入れ替わりの手段がイヤ過ぎます。侵略者は人間が眠っている間に、巨大な豆のサヤのような物体の中に、人間のコピーを生成します。そして、生成されると同時に、オリジナルの肉体は、塵になってしまうのです! そのため、主人公たちはコピーされないように、眠ることもできず、侵略者から逃げなければいけないという……。考えるだけでうんざりします。

ちなみに映画化された作品の中で一番有名、かつ後味が悪いのは『SF/ボディ・スナッチャー』。人面犬のブームに火をつけたのはこの映画でしょう。観た後には絶望感以外のなにものも残らない、最凶のバッドエンドです。ドナルド・サザーランド(『24』のキーファー・サザーランドの父親)の表情がまた、絶望感をそそるんですよねえ。

侵略者の恐怖と人間のエゴが交錯!…『吸血鬼ゴケミドロ』(1968年)

こちらは邦画です。もう、題名からして嫌な厭なイヤな感じが漂ってきますよね? そう感じたあなたは間違っていません。

謎の発光体と遭遇し、墜落した旅客機。生き延びたのは暗殺者、時限爆弾を持った自殺志願者、兵器産業の社長夫妻、政治家、ベトナム戦争で夫を亡くした白人女性、なんだか歪んだ精神科医、宇宙生物学者、副操縦士とスチュワーデスという、非常に濃い面々でした。

やがて、謎の宇宙生物「ゴケミドロ」に寄生された暗殺者が吸血鬼と化して、人々を襲い始めます。辛くも逃げ延びた副操縦士とスチュワーデスでしたが……。

こちらのゴケミドロ、アメーバ状の生物で、人間の額をぱっくり割って体内に入り込みます。彼らは人間の血液を食料としており、その目的は人類皆殺し。この辺も嫌なんですが、極限状況に追い込まれた人間のエゴが炸裂する展開が、また実に嫌なのです。こんな映画が年齢制限無しで公開されていた昭和の日本って……実にステキですね。

淀川長治もお気に入りだったSFアクション…『ヒドゥン』(1987年)

SF作家のハル・クレメントが手掛けた作品の一つに、『二十億の針』(1950年)があります。地球に飛来した寄生生物「ホシ」を追って、同じ寄生生物である「捕り手」がやって来るというストーリーです。「捕り手」はバブ少年に寄生し、協力しながら凶悪犯である「ホシ」を追います。ちなみに二十億というのは、作品が書かれた当時の地球の人口です。100年経たずに三倍以上に増えたんですね、人間……。

こちらの作品にインスパイアされたとおぼしき映画が『ヒドゥン』。凶悪犯を追って地球にやってきた異星人が人間に寄生してFBI捜査官を名乗り、ロス市警の刑事と協力して犯人を追い詰めます。

この異星の凶悪犯、殺人に対して禁忌なぞ一切持ち合わせていない上、人間ではないのになぜかハードロックとフェラーリと現金と銃火器が大好きでした。ロックを爆音で流しながら車をぶっ飛ばし、ついでに銃もバンバンぶっ放し、ガンガン人間をぶっ殺すという、なんとも頭の痛くなる存在です。しかし、ついには次期大統領候補に乗り移ってしまい……。

この『ヒドゥン』、なんと『ロボコップ』(1987年)を押さえて、アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭のグランプリを獲得した映画として有名です。あの淀川長治さんもお気に入りだったとか。

大スター続々輩出!爽やかなハッピーエンドが珍しい…『パラサイト』(1998年)

“学園SFアクションホラー”とでもいうべき作品。『盗まれた街』にインスパイアされたものと思われ、劇中の会話に『盗まれた街』の原題である『ボディ・スナッチャー』の名前が出てきます。

舞台はアメリカのとある高校。いじめられっ子の主人公が奇妙な生物を見つけてから、教師たちの様子がおかしくなっていきます。そう、彼らは「パラサイト」に寄生されてしまったのです。主人公たちはクラスメートが合成したドラッグ(!)が敵の弱点だということを知り、戦いを挑むのですが、親玉を倒さない限り人々は元に戻りません。はたして、それは誰なのでしょうか? こういう系統の作品には珍しく、最後は主人公が敵の親玉を倒してヒーローになるというハッピーエンドを迎えます。

こちらの作品、今ではすっかり大スターになった役者が何人も出演しております。イライジャ・ウッド(『ロード・オブ・ザ・リング』ほか)、ジョシュ・ハートネット(『ブラックホーク・ダウン』ほか)、ジョーダナ・ブリュースター(『ワイルド・スピード』シリーズ)、ファムケ・ヤンセン(『Xメン』シリーズ)などなど。もしも続編を作るなんて話になったら、ギャラだけでエラいことになっちゃうでしょうね。

以上、様々な寄生型侵略者たちの登場する作品を紹介してまいりました。近年の作品では他にも『寄生獣』(2014年)などが有名ですが、もう一人、侵略者ではないとはいえ、これは外せないという大物がおります。それは……「ウルトラマン」。完全にハヤタ隊員に寄生してましたよね? ウルトラセブンも、地球人に擬態してましたよね?

……ちなみに、ウルトラセブンの第32話のサブタイトルは「散歩する惑星」だったりします。

(文/ハーバー南@H14)