『新感染 ファイナル・エクスプレス』 (C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

韓国の庵野秀明、ついに日本上陸! ヨン・サンホ監督の3作品が怒濤の連続公開

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

昨年、大ヒットを飛ばした映画『シン・ゴジラ』の総監督、庵野秀明がアニメーション『新世紀エヴァンゲリオン』の生みの親であることを知らぬ者は、もはやほとんどいないだろう。庵野は『エヴァ』成功後、何度か実写映画にトライしたが、なかなか成果をあげることはできなかった。ところが、韓国のアニメーション監督、ヨン・サンホはこの難関をいとも易々と乗り越えて見せた。彼の実写映画初監督作であり、韓国内外で高評価を得た映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』をはじめ、アニメ2作品も立て続けに日本でも公開される。

高速鉄道を舞台にした感染地獄…まさに娯楽の疾走

ヨン・サンホ監督の実写映画初監督作『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、韓国で2016年度の興行収益ナンバー1の大ヒットになった。カンヌ映画祭で激賞されていることからも明らかなように、批評も非常に良い。実際、これは映画エンタテインメントの美が凄まじいばかりに乱舞する、めちゃくちゃに面白い作品なのである。

ヨン・サンホ監督は、長編アニメを3本発表した後に本作を手がけた。しかも当初オファーされたのは、彼が発表したアニメの第3作目『ソウル・ステーション/パンデミック』の実写化だったという。ヨン・サンホはそのままリメイクするのではなく、『ソウル・ステーション/パンデミック』を前日譚とするオリジナルの脚本で実写に取り組んだ。そして、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で、とてつもなく大きな成果をあげることになった。

『新感染』という語感重視の邦題は、遊び心に満ちたネーミングである。韓国の新幹線=高速鉄道KTXを舞台に、大量発生したゾンビと乗客たちの攻防が繰り広げられる。つまり、新幹線が、恐怖の感染地獄へと変貌する。動く密室である縦長の乗り物で、追いつ追われつのノンストップ・アクションを展開させる。そんなゲーム感覚のフォーマットに、主に3組の登場人物たちの情に満ちたエピソードを散りばめ、手に汗を握らせ、真っ当な感動に導く。まだ30代とは思えぬ懐深い演出が、映画の王道ともいうべき醍醐味を疾走していく様が純粋な快感を呼ぶ。

無数の感情の機微を俯瞰的にとらえた傑作

映画メディアの創始者とされるリュミエール兄弟の名前を一躍高めたのが、『ラ・シオタ駅への列車の到着』という短編だった。映画は列車を捉えるのにふさわしい芸術であり、一直線にひた走るしかないからこそ、スリルと涙を等価のものとしてもたらす。最新鋭の高速鉄道を舞台にした『新感染〜』は、そういった意味でも映画の伝統を正当に受け継ぐ「最新鋭の名作」といえる。

ゾンビものと聞けば尻込みする人もいるかもしれないが、本作が見つめるのは、緊急事態だからこそ浮き彫りになる、社会の縮図としての人間模様。私利私欲に走る者がいる一方、窮地に陥ったからこそ己の人間力を試す者がいる。いずれの姿からも生命のエネルギーがほとばしり、善悪だけでは割り切れない、人間という生きものの根源と可能性が浮かび上がる。ヨン・サンホ監督は単に娯楽を追求するばかりでなく、わたしたちが抱え持つ無数の感情の機微を俯瞰から見つめ、鮮やかに汲み取っている。

エンタメと社会性を兼ね備えた大作家

『ソウル・ステーション/パンデミック』 (C)2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD INC.& Studio DADASHOW All Rights Reserved.

そして『新感染 ファイナル・エクスプレス』に続いて、同監督のアニメーション映画2本も日本で連続公開される。前述の『ソウル・ステーション/パンデミック』は、9月30日公開。帰る家のない人々がゾンビから逃げる姿を通して、格差社会の現実を照射する(その様は3.11で帰宅難民になった日本人をも彷彿とさせる)1作で、『新感染〜』の姉妹篇でありながら、対照的な後味を残す強力作。そして、2014年に発表されたヨン・サンホ監督のアニメ第2作目『我は神なり』は10月21日公開。ダム建設によって消え行く村に住む人々を騙す詐欺師たちのインチキ宗教の暗部を照らし出し、嘘と信心の関係性をしたたかに撃つ。

『我は神なり』 (C)2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD INC.& Studio DADASHOW All Rights Reserved.

3作に共通しているのは、救済を求める人々の「帰還」への想い。それを様々な角度からまさぐるこの監督は、エンタメと社会性を兼ね備えた久々の大物作家と言えるだろう。韓国の庵野秀明の、ある意味『シン・ゴジラ』をも超えた世界観を、とくとご覧あれ。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

記事制作 : アドバンスワークス

関連映画

マイシアターとは?
お気に入りの映画館を「マイシアター」に設定しておくと、上映中の作品やスケジュールがかんたんに確認できるようになります。
マイシアターは2つまで設定できます。
マイシアターとは?
お気に入りの映画館を「マイシアター」に設定しておくと、上映中の作品やスケジュールがかんたんに確認できるようになります。
マイシアターは2つまで設定できます。
マイシアターとは?
お気に入りの映画館を「マイシアター」に設定しておくと、上映中の作品やスケジュールがかんたんに確認できるようになります。
マイシアターは2つまで設定できます。