9月9日から公開される『ダンケルク』では、『マッドマックス怒りのデス・ロード』のトム・ハーディをはじめ、ケネス・ブラナーなどイギリス出身の実力派俳優が名を連ねています。その中でも一際目を引くのが、イギリスの男性アイドルグループ「ワン・ダイレクション(One Direction)」のメンバーでもある、ハリー・スタイルズのクレジットです。

ハリー・スタイルズは正式な俳優としては、今回が映画初出演となります。シリアスな内容のクリストファー・ノーラン監督作でのデビューということで、演技力に注目が集まっており、その苦戦ぶりに関する報道も海外メディアではチラホラ。

そこで今回はハリー・スタイルズが俳優として今後成功するかどうかを、同じくアイドルグループ出身で現在は俳優としても活動するジャスティン・ティンバーレイクのキャリアを辿りながら、予想していきたいと思います。

ハリー・スタイルズが“世界一有名な新人俳優”と言われる理由

日本においてもアイドルグループ出身で、のちに俳優として1人立ちするというキャリアパスは珍しくありません。しかし、このハリー・スタイルズは、数ある国内外のアイドルグループの中でも別格の存在です。

本国イギリスのオーディション番組に別々にエントリーしていた5人が結成したワン・ダイレクション。デビューアルバム「Up All Night」がイギリス出身のアイドルグループとして、ビルボードチャートで初となる初登場1位を獲得したことをきっかけにワールドワイドにブレイクします。その後、リリースする作品は日本を含む世界中のヒットチャートを賑わせ、今では多くのファンをもつ世界的な男性アイドルグループになりました。

現在は2015年のメンバーの脱退を経て、2016年から最低でも1年間の活動休止期間に入っており、メンバーはそれぞれソロ活動に従事しています。

そんな状況の中、ハリー・スタイルズが選んだのは俳優としての活動。これまでカメオ出演は経験したことがあるものの、本格的な演技の経験はありませんでした。そのため、世界的な知名度をもちながらも俳優としての実力は未知数とみられていることから、『ダンケルク』出演が報じられた際には“世界一有名な新人俳優”といった扱いを受けています。

アイドル出身俳優の先輩、ジャスティン・ティンバーレイクの苦闘

そんなハリー・スタイルズと似たキャリアをもつのが、現在は歌手と俳優として活動する元アイドルのジャスティン・ティンバーレイクです。

彼は現在36歳ながらも、子どもの頃からネクストブレイク歌手や俳優の登竜門である「ミッキーマウス・クラブ」に出演するなど、ショービズ業界のキャリアは豊富です。90年代半ばにはアメリカの男性アイドルグループであるイン・シンクの最年少メンバーとして加入すると、4枚のアルバムを大ヒットさせ、2002年にソロデビューを果たしました。

ソロデビュー後もグラミー賞の獲得、リリースするシングルが3曲連続で全米No.1を記録するなど話題をよびました。そして、2008年頃からこれまで歌手活動と並行していた俳優業に専念するようになります。

このように歌手としては華々しいキャリアを築き上げ、抜群の知名度をもっていたジャスティン・ティンバーレイクですが、実は俳優としてステップアップしていくにはかなりの苦労を重ねています。本格的な俳優デビューとなったのは、名優モーガン・フリーマン、ケビン・スペーシーらと共演した2005年の『F.R.A.T/戦慄の武装警察』。実はこの作品は先述の名優2人が出演しているものの、劇場公開されることなく、ビデオスルーされるという厳しい現実に直面します。

また、マイク・マイヤーズ、ジェシカ・アルバと共演した2008年の『愛の伝道師ラブ・グル』は、ジャスティン・ティンバーレイクに直接の原因があるとはいえないものの、第29回ゴールデンラズベリー賞では最低作品賞を含む3部門を受賞。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」でも低評価で、ニューヨーク・ポストではこの年のワースト映画第1位に選出されてしまうなど散々な結果となりました。

これら2005年から2010年頃にかけてのジャスティン・ティンバーレイク出演映画は、日本ではほとんど劇場公開されることがありませんでした。転機となったのは、Facebookの創設を描いた『ソーシャル・ネットワーク』。ジャスティン・ティンバーレイクは同作で主要キャストの1人を演じ、作品自体もヒットします。批評家からも上々の評価を獲得したことで、ここから彼の俳優キャリアは上向き、キャメロン・ディアスとの共演作『バッド・ティーチャー』などがヒット映画となりました。その後、『TIME/タイム』、『ランナーランナー』では主演を務めています。

ダンケルクでいきなりブレイクの可能性はあるか?

ジャスティン・ティンバーレイクの経歴を見るに、同じようなバックグラウンドをもつハリー・スタイルズが俳優として成功するには、アイドル時代以上に下積みが必要になるのかもしれません。そこには、名作に恵まれるための運も必要でしょう。

ただ、『ダンケルク』はバットマンシリーズの『バットマンビギンズ』、『ダークナイト』、『ダークナイトライジング』や、『インターステラー』を手がけてきたクリストファー・ノーランの監督作。彼が初めて史実に挑んだ映画としても注目され、すでに世界47カ国オープニング興行収入でNO.1を獲得しています。

また、当初は“映画の話題作りのため”と揶揄されるなど、疑問をもたれていたハリー・スタイルズの演技力ですが、撮影監督がTwitterで「ハリーの演技は最高だ」と擁護しています。試写会を見た批評家の反応も良いようですし、もしかすると一気にブレイク……なんて展開も? その分水嶺となりそうな本作、ハリー・スタイルズの演技にぜひ注目したいところです。

(文/Jun Fukunaga@H14)