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借金生活、度重なる落選、引きこもり…世界的画家・セザンヌが送った意外な“不遇人生”とは

コラム

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フランスを代表する画家・セザンヌの絵は知らなくても、彼の名を耳にしたことは誰もがあるのではないだろうか? それほど世界にその名が浸透している彼だが、実は成功とは程遠い人生を送っていた! 9月2日から公開の映画『セザンヌと過ごした時間』では、そんな天才画家の意外な不遇人生が描かれています。

名作『嘆きのテレーズ』『居酒屋』の原作者から見たセザンヌ

この作品では、ひとりの著名な作家の目を通して、画家・セザンヌが語られます。その人物は、エミール・ゾラ。マルセル・カルネ監督の映画『嘆きのテレーズ』(1953年)やルネ・クレマン監督の映画『居酒屋』(1956年)などの原作で知られる、フランス文学界を代表する作家です。セザンヌとゾラの出会いは、なんと少年時代。いじめられていたゾラを、セザンヌが助けたことに始まります。父親が銀行家で裕福なブルジョア家庭に生まれ育ったセザンヌに対し、ゾラは母子家庭で貧しい生活環境。まったく違った境遇にいた二人ですが、少年期の出会いから友情を育み、成人になると画家と作家として互いを刺激し合い、切磋琢磨し、40年以上も付き合いが続くことになります。もちろん映画ですので、現実のセザンヌを誇張した部分もあるのかもしれませんが、本作では、人間・セザンヌと芸術家・セザンヌの両面を熟知していたであろうゾラの視点によって、セザンヌの実像が浮き彫りにされています。

“落選展”でも落選してしまったセザンヌ

そんなゾラの視点から見つめられるセザンヌの人生ですが、本作では、のちに画家たちはもとより世界中の人々からもリスペクトされる人物になるとは思えないぐらい暗たんたるものに描かれます。まずセザンヌは父の反対を押し切り、パリへ出て画家を志します。でも、アカデミーの仕切るサロンに出品するも、あえなく落選。それではと美術学校の門を叩きますが、こちらは入学できずじまい。翌年、アカデミーのサロンの審査に異議を唱えたセザンヌを含む落選者たちが、一般大衆が落選作品を審査する“落選展”を開きます。ここではさすがに認められると思っていたセザンヌですが、実際に支持されたのはマネ。落選展の中でさえ、落選してしまうのです。自分に絶望したセザンヌはあえなく故郷のエクスへ戻り、ほぼ引きこもりのような状態になってしまいます。その後も絵だけは描き続け、故郷からパリへ顔を出すこともあったセザンヌですが、その作品は世間からもアカデミーからも注目されません。一方で、かつて共に落選していた仲間たちがアカデミーに認められ、次々と入選を果たしていき、彼は絶望の淵へ。さらに唯一の友人であるゾラも小説家としてベストセラーを連発。自分だけが認められないままセザンヌは世捨て人のようになり、ゾラから生活費を工面してもらうまで転落していきます。それにしてもセザンヌがここまで成功とは無縁で、アート界からも社会からもそっぽを向かれていたとは意外で驚きを隠せませんでした。ゾラの明とセザンヌの暗は、劇中の服装や住居にも見て取れます。貧しい家の出のゾラは、批評家、作家として成功のステージを上がっていくごとにきちんとした身なりになり、住居も豪邸へと変わっていきます。対してセザンヌは晩年になるにつれ、服はボロボロで住まいは荒れ放題。あまりに好対照すぎて、セザンヌに同情してしまう人は少なくないと思います。

セザンヌの性格は喧嘩っぱやくて毒舌家?

ただし、セザンヌがそんな状態になってしまうのはある意味、納得。鳴かず飛ばずの状態ですから卑屈になってしまうのもしょうがない。そう同情する余地はあるのですが、ゾラという友人の温かい目線というフィルターが入っても、本作で描かれているセザンヌはかなりの問題児。正直、あまり自分のそばにいてほしくないタイプの人間です。ブルジョワ育ちのせいかセザンヌはプライドが高く、他人への態度が横柄。とくに自分の認めない人間に対しては、罵詈雑言を浴びせることも珍しくありません。気にくわないことがあると、誰かれ構わずケンカをふっかける。ある意味、裏表のない人物とも言えますが、はっきり言って毒舌すぎます(笑)。これだけ世話になっているゾラの開いた晩餐会でも、自分の感情を抑えられず、台無しにするようなことをしでかします。だから自然と人は離れていくし、評判もよろしくない。このように人格は決して褒められたものではないセザンヌなのですが、画家としての姿勢と努力には感服します。成功とは無縁でも彼は、絵筆を折ることはなく、新たな対象、新たな表現を求めてただひたすら己の絵を追求していく。その努力があったからこそ、遅かったかもしれませんが没後、彼の絵は花開き、世界中の人々に愛されるようになったような気がします。

ゴッホ、ゴーギャン、ピカソ、マティスら20世紀絵画の巨匠たちから高く評価され、“近代絵画の父”とも言われるセザンヌ。いまでは世界の美術館に作品が並びますが、残念ながらその作品も当時はほとんど認められることがありませんでした。そろそろ季節も芸術の秋。ひとりの偉大なる画家の意外と知られていない実像と人生をこの機会に体感してみてはいかがでしょうか?

(文/水上賢治@アドバンスワークス)

記事制作 : アドバンスワークス

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