(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

好青年イメージ返上!? 松坂桃李がキャリア史上最低のゲス男役に!

コラム

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多くの人が、俳優・松坂桃李に品行方正な好青年のイメージを持っているのではないだろうか。そんな松坂にとって、キャリアの分岐点になるかもしれない映画『彼女がその名を知らない鳥たち』が、10月28日(土)より公開される。同作で松坂が演じているのは、今までのキャリアの中で、最も劣悪なキャラクター。そして、これを体現できるのは松坂桃李しかいないのではないかと思わせる強力な芝居を、この映画で見せている。

これまでもイヤな役、悪い役、常軌を逸した役を怪演

実際、わたしが何度か松坂をインタビューした際の印象もまさに好青年で、芝居で見せるナイーブなキャラクターはやはり本人が持っているものと納得させられた。だが、好青年イメージというものは諸刃の剣で、俳優である以上、役のオファーが固定化されることにもつながる。

しかし、そのイメージに捕らわれすぎることなく、松坂は、これまでもイヤな役、悪い役、常軌を逸した役を演じてきた。映画『アントキノイノチ』(2011年)での、人当たりのいい偽善者。映画『エイプリルフールズ』(2015年)での、セックス依存症の医者。映画『図書館戦争 THE LAST MISSION』(2015年)での、クールかつプレゼン力の高い黒幕。映画『劇場版 MOZU』(2015年)での、キレたテロリスト。それらのキャラクターは無理をした芝居ではなく、とても説得力のあるものだった。そして、今回の映画『彼女がその名を知らない鳥たち』では、最低のゲス男・水島役に挑んでいる。

夢を見させてくれる男の正体

同作に登場する蒼井優扮するヒロイン・十和子は、過去にこっぴどい失恋を経験したことがトラウマとなっており、自分を救ってくれる「王子様」の登場を待望している。十和子には、親身になって労わる同棲相手(阿部サダヲ)がいる。だが、汚らしくウダツの上がらない彼のことを男とはみなさないプライドの高い十和子は、エリートサラリーマン・水島の誘惑には易々と乗ってしまう。なぜなら、彼のルックスがよく、物腰がスマートであり、どこか夢を見させてくれる存在だからである。

ピロートークで異国の想い出を語る水島。さらに、運命を感じさせる言葉を口にする一方、どこか正体が不明な点もあり、ドキドキ感をキープさせてくれる。つまりは女心を掴むのに長けた男なのだ。じっと彼女を見つめる視線、惹きつけられる語り口調などなど、“メスが惹きつけられるオスの魅力”が、ごく自然にこぼれ落ちる様を、松坂桃李はムーディに体現している。

イケメンだからこその説得力

やがて、水島が実は非常に自己本位で、彼女のことを性欲のはけ口としてしか考えていないことがわかってくる。急に変貌するわけではない。それまでの自信に満ちた頼りがいのある態度は、実は女性を見下していることの裏返しである。甘くうっとりさせるよう言葉の数々は、その場さえよければ後はどうでもいいという、いい加減さが転じているだけだったことがよくわかるように、松坂は演じている。夢と現実が地続きにあるようなキャラクターなのだ。

突然DV男になることもなく、実に自然に、男という生きものの打算、俺様気取り、どうしようもなさを全部ひっくるめた「サイテー」なヤツを、松坂は見事にあらわしている。救いようがない役を、ひたすらリアルに表現しているのだ。

彼のイケメンぶりが、ここまで効果的だったことも、これまでになかったかもしれない。 この役は、松坂桃李の優しげな好青年然としたたたずまいがあって初めて成立している。騙されても仕方がない、と思わせるものが、はっきりあるのだ。

男を見かけで判断してはいけない。イケメンの危険性をダイレクトに伝えることができるのはイケメンしかいない。当たり前のことかもしれないが、そんな真実を噛みしめることができる彼の妙演は必見である。そして、一皮も二皮もむけた今後の松坂桃李に、期待が高まるばかりだ。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

記事制作 : アドバンスワークス

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