(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会

広瀬すずが魅せた、新境地“ゆらぎ”の演技とは…『先生! 、、、好きになってもいいですか?』

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

実話ベースの映画『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』(2017年3月公開)、是枝裕和監督と再タッグを組んだ映画『三度目の殺人』(9月9日より公開中)、そして、映画『バケモノの子』(2015年)以来となる声優としての参加作品『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(8月18日より公開中)。今年も公開映画が目白押しの広瀬すずだが、その極め付きが10月28日より公開の映画『先生! 、、、好きになってもいいですか?』だ。河原和音のコミック『先生!』を原作に、生田斗真と共演する学園ラブストーリーだが、彼女のキャリア史上最高と言っても過言ではないほど充実した演技を披露している。

広瀬すずの演技が三木監督の「強み」と見事にマッチ

是枝監督の映画『海街diary』(2015年)に大抜擢されてから「天才」の呼び声も高い広瀬すずだが、『先生! 、、、好きになってもいいですか?』では演じ手としての抜きん出た才能が恋愛ものの名手、三木孝浩監督によって、惜しみなく引き出されている。

三木監督は映画『僕等がいた』(2012年)で生田と顔を合わせており、昨年公開された『青空エール』では河原の漫画を映画化してもいる。いま、映画監督として乗りに乗っている彼の「強み」も最良のかたちで発揮され、広瀬の演技とも相まって、本作を“記憶すべき”傑作へと引き上げているのだ。

高校教師に恋をした女子高生の一途な想いが、真っ当に見つめられていく物語。言ってみれば、ただそれだけなのだが、奇をてらったり、過剰に盛り上げたりすることが一切ない、きわめて潔癖な映画のタッチが、観客をストレートな感動へと辿り着かせる。ドロドロした恋愛劇ではないが、ハッピーなだけのカジュアルな内容でもない。その適度な塩梅が、ごくごく普通の人である先生や生徒の出逢いやすれ違いを包み込み、誰もが経験したことのある感情の機微をよみがえらせる。当たり前の出来事の中から、映画ならではの普遍性が浮き彫りになる。そこには、スタンダードな美があるのだ。

「普通」の女の子の「ゆらぎ」

これまでの広瀬はどちらかと言えば、超然としたタイプの役どころが多かった。『海街diary』では揺らがぬ芯を持つ女の子、映画『ちはやふる』(2016年)では不屈の精神で立ち上がる主人公、『バケモノの子』ではすべてを包み込むヒロイン。スケールの大きなキャラクターを吸引力のある芝居で体現する様にこそ、広瀬すずの演技を噛みしめる醍醐味があった。

だが、今作はそうではない。ときにブレブレになりもする少女のか細い神経を、ある意味、ふわふわと演じている。この「ゆらぎ」はこれまでの広瀬にはなかったもので、三木監督との出逢いで初めて生まれたものなのではないだろうか。

「パンドラの箱」が開いたとき

まず秀逸なのは、広瀬すず演じる女子高生が、生田扮する先生に初めて明確に惹かれるシーン。居残り授業に付き合ってくれた先生のふとした仕草に「男性」を感じる彼女の心情を、広瀬は「あれ?あれ?わたし、本当に好きかも?」と思わせるような表情とまなざしで表現している。それまで、何となく仕舞っていた気持ちの「パンドラの箱」を、自分でも思いがけず開けてしまったことに呆然としているかのようだ。この、それまで無防備だったからこそ訪れた“驚き”に対する芝居は、このキャラクターの弱さも含めての「ゆらぎ」となっており、とても味わい深い。同時に、そのサプライズが彼女にとってのギフトにもなる“ときめき”がここにはあり、観る者はきっと共感するだろう。

たとえば映画『四月は君の嘘』(2016年)のときのような、恋に猪突猛進の女の子ではない。勇気を振り絞って、あえて鈍感なフリをしてアタックをかけるものの、先生の「大人」な対応にあっさり心が折れて、諦めモードの方向にあえて自分を持っていくヒロインの割り切り方。そこにリアルさがある。広瀬の演技も、三木監督の演出も、人がなだらかに落下していくときの、必ずしも喪失感だけではない、ほんのちょっとした安堵も捉えている。辛い困難を乗り越えることだけがドラマではない。辛い恋路からふと「降りる」ときの、さみしいけれど楽になれる気もする心の有り様だってとてもドラマティックだ。もちろん、物語はここで終わるわけではないが、そんな人間のささやかな真実が、ここには示されている。

今年6月に19歳になった広瀬。本作は昨年11月から12月にかけての撮影だったから、彼女にとっては、リアル女子高生年齢で演じた最後の女子高生役でもある。さまざまな意味でメモリアルな映画『先生! 、、、好きになってもいいですか?』は必見の一作である。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

記事制作 : アドバンスワークス

関連映画

マイシアターとは?
お気に入りの映画館を「マイシアター」に設定しておくと、上映中の作品やスケジュールがかんたんに確認できるようになります。
マイシアターは2つまで設定できます。
マイシアターとは?
お気に入りの映画館を「マイシアター」に設定しておくと、上映中の作品やスケジュールがかんたんに確認できるようになります。
マイシアターは2つまで設定できます。
マイシアターとは?
お気に入りの映画館を「マイシアター」に設定しておくと、上映中の作品やスケジュールがかんたんに確認できるようになります。
マイシアターは2つまで設定できます。