『茅ヶ崎物語 ~MY LITTLE HOMETOWN~』
9月16日より全国公開
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン
(c)2017 Tales of CHIGASAKI film committee

桑田佳祐、加山雄三…茅ヶ崎は才能の宝庫!?サザンの名付け親が理由を探る

コラム

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文=赤尾美香/Avanti Press

「え、あの宮治さんを神木隆之介が演じるの!?」。それは、ちょっとした事件である。宮治さんを知る仲間内では、にわかにFacebookが盛り上がる。「ずるいなぁ、あんな可愛い若者に演じてもらうなんて〜」の中には、映画への期待も、もちろん込められていた。

宮治さんが映画に関わっているという話は風の噂で聞こえていた。驚きはしなかった。なぜなら宮治淳一さんは、今ではすっかり数少なくなった日本における洋楽業界の名物男と呼ぶにふさわしい方で、レコード会社で働きつつ(筆者もライターとして何度かお世話になっている)、音楽評論家でもあり、ラジオ・パーソナリティでもあり、カフェの店主でもある。膨大な数のレコードを所有し(日本一との説もあり)、その頭の中には無尽蔵の音楽知識が詰まっている。しかも、小中学校時代は桑田佳祐と同級生で、サザンオールスターズの名づけ親でもあるのだから。

芸能史、人類学、様々な手法で茅ヶ崎の独自性を解明

茅ヶ崎の芸能史を1冊の本にまとめるべく奮闘中の宮治淳一さん

そんな宮治さんは今、地元である神奈川県茅ヶ崎の芸能史を1冊の本にまとめるべく奮闘中。そもそも、なぜ茅ヶ崎が多くの文化芸能人に愛され、またその才能を持つ人を次々に輩出したのかを解明しようというのだ。「先はまだまだ長い」と宮治さんは笑うが、ドキュメンタリー映画『茅ヶ崎物語〜MY LITTLE HOMETOWN〜』は、そんな中から生まれた。

茅ヶ崎の顔といえば、同市の沖合にある岩礁群・烏帽子(えぼし)岩。本作はその烏帽子岩による軽妙かつユーモラスなナレーション(声:小倉久寛)で、探求の旅が進んでいく。“芸能”と“海”の知られざる関係に迫るのは、人類学者、中沢新一だ。目に見えている世界の奥へ潜り、その土地本来の姿を見るという、独自のアースダイブなる手法により、何万年という歳月をも行き来して、茅ヶ崎という土地が抱える興味深い事象をピックアップしていく。

一方、宮治は、茅ヶ崎といえば!の御大加山雄三とのインタビューを実現させた。加山は、宮治と桑田にとっては音楽業界の大先輩というだけでなく、中学の先輩にもあたる。今夏もフジロック・フェスティバルに出演するなど、80歳になってなお若者からも多大なリスペクトを受ける若大将自身が語る茅ヶ崎と音楽の関係も興味深い。

桑田佳祐が人前で初めて歌ったシーンを神木隆之介、野村周平が再現

桑田佳祐役の野村周平(左)と宮治淳一役の神木隆之介(右)

また、中学校時代に野球部で出会った宮治と桑田の青春物語再現ドラマも作品の重要なフックだ。冒頭にも書いたが、宮治を演じるのは神木隆之介、桑田を演じるのは野村周平。同じ音楽好きでも、オタク頭脳派タイプの宮治と、やんちゃでエッチでシャイだけど目立ちたがりといういかにも厄介な思春期男子を体現している桑田。ふたりの異なるキャラと資質は、その後の人生――方やシーンを支える頼れる裏方、方や音楽シーン最前線で活躍するスター・ミュージシャン――を思うと、なかなか感慨深いものがある。桑田が人前で初めて歌った、そのステージをアレンジしたのも宮治で、音楽的なスキルはまだまだ未熟な桑田に才能のほとばしりを見た宮治の目もまた、確かであったということだ。果たして本作は、桑田佳祐の中にある、シャレ、粋、ナンセンス、助兵衛と、ロマンチシズムも茅ヶ崎と無縁ではない、というのだろうか!?

そして、そんなふたりが、還暦を迎えた今も音楽を介して繋がっている事実、音楽はもちろん、故郷茅ヶ崎に対する思いを共有している事実、それらを言葉で説明するのではなく、圧巻のラストシーンに託したやり方は、心憎いばかりである。ふるさとの海に抱かれるようにして歌う桑田佳祐。その歌は、海沿いの小さな町茅ヶ崎で生まれた、小さなテーマ「茅ヶ崎と芸能」を壮大なスケールで真摯に追い続ける宮治に向けた、桑田からのエールのようにも聞こえる。『茅ヶ崎物語』は、まだ終わらない。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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