『アンダー・ハー・マウス』10月7日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
(C) 2016, Serendipity Point Films Inc. 配給:シンカ

超イケメン!? 女性モデルが演じる女同士の恋愛「見てはいけないものを覗き見る」危うい感覚『アンダー・ハー・マウス』

インタビュー

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文=新田理恵/Avanti Press

女性でありながら男性役としても活躍する“ネオイケメン”モデル、エリカ・リンダー。中性的で端正なルックスが「若い頃のレオナルド・ディカプリオにそっくり!」と女性たちの熱い視線を集めている。そんな彼女が、女性同士の愛が生まれる瞬間を官能的に描いた『アンダー・ハー・マウス』でスクリーン・デビューを果たした。

ファッション誌の編集者・ジャスミン(ナタリー・クリル)は、週末の夜に立ち寄ったバーで、ダラス(エリカ)と運命的な出会いを果たす。ダラスは、昼間は大工として働き、夜ごと行きずりの女性と関係を結ぶ日々を送っていた。ふたりは強烈にひかれあっていくが、婚約者のいるジャスミンとの関係には大きな障壁が……。

メガホンをとったのは、女優としても活躍するエイプリル・マレン。たっぷり盛り込んだ官能シーンへの女性ならではのこだわりや、エリカのスペシャルな魅力について語ってくれた。

魂に突き動かされるようにひかれあう感覚

『エイプリル・マレン監督 撮影=新田理恵

Q.「女性同士の愛」というところに目が行きがちですが、とても力強く普遍的なラブストーリーだと感じました。まずこの作品を撮ろうと思ったきっかけから教えて下さい。

マレン:ちょうど大恋愛と大失恋を経験したタイミングでこの脚本を読みました。自分の中に蓄積していたさまざまな衝動や想いを、この物語なら表現できると感じたのです。セリフというより、2人の身体が語っていく物語なのだと受けとめて、雷に打たれたように恋に落ちる瞬間をどう描けばいいのか、チャレンジのしがいがある作品だと思いました。

Q.ジャスミンはストレートで、婚約者がいるのに、ダラスを愛するようになっていきます。ダラスを強く求めていく理由のひとつが、彼女との性行為の鮮烈さだったのではと推察したのですが、監督の考えはどうでしょうか?

マレン:私自身の人生に照らしあわせて考えても、頭でも、身体でもなく、もう少し深いところで、魂に突き動かされるようにひかれあってしまった感覚だと思っています。魂が求めあっているなんて言ってしまうと、ちょっとセンチメンタルすぎる気はするけど、頭で考えてもわからない、とてつもなく強い引力だと思うんです。それはもしかしたら「運命」や「縁」というものなのかもしれない。「この相手と地球上にいる間は何かを学んでいきたい」と魂が渇望しているからであり、それは「欲望」と言えるものかもしれません。

官能的なシーンもリアルに描きたかった

『アンダー・ハー・マウス』10月7日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
(C) 2016, Serendipity Point Films Inc. 配給:シンカ

Q.官能的なシーンがしっかりと描かれています。ベッドシーンを長尺で撮った意図は?

マレン:リアルに描きたかったので長めに撮りました。実際、人って誰かを好きになったら、ああいうふうに外界を一切遮断して、48時間ずっとベッドでひたすらにお互いを知り尽くしたいと思うわけですから。90分という尺のなかで、それをエンターテイニングな作品に仕上げるのはなかなかのチャレンジでしたが、彼女たちの人生の一片を見せていくことで上手くいくはずだと信じるしかなかったですね。

Q.映画監督には圧倒的に男性のほうが多いので、官能シーンも必然的に男性が撮ったものを見る機会が多くなります。男性が撮ったものとは違うと自覚しているポイントがあれば教えてください。

マレン:見るたびにハッとするシーンがあるんです。時間にしたら3秒程度なんですけど、ダラスとジャスミンが冷蔵庫にもたれかかっているシーンで、(ジャスミン役の)ナタリーがエリカを見つめるんですよね。一度視線を落としてから、もう一度エリカの目を見つめるんですけど、それが“千語を語る”ぐらい雄弁なんです。一体どうしてこの状況になってしまったのか、いろいろな想いが彼女の脳内を駆けめぐっていることを雄弁に語っています。

最近の映画は、とにかく「カットを切って、切って、軽快に、リズム良く!」と撮影されますから、なかなかああいうふうにじっと目線をカメラに据えることってないと思います。

他にも魔法のような瞬間がありました。例えば、行為の最中にダラスがちょっと口に入った髪の毛の先をぬぐう瞬間もそう。女性でこそ気づく細かい仕草をとらえられていると思います。

Q.これまで映画で描かれてきた官能シーンには情緒がないものも多く、見ていて「こんなちゃっちゃと進むシチュエーションではできないでしょう……」と思う作品も

マレン:私もそう感じますね。過去の映画のシーンを見ていても、観客と、劇中で行為に及んでいるふたりとの間に変な壁があるように感じます。作り手は「こういうのがセクシーでしょ」「興奮するでしょ」とでも言うように、引きのアングルで撮ったりしてるのですけど、非常にロボット的で、観客は妙に冷静に見てしまう。今回の映画では、あえてカメラを寄せて、観客はまるで壁にとまっているハエのようにふたりの様子をじっと目撃している感じを意識しています。よくあるポルノとは違って、リアルすぎて「ちょっと見てはいけないものを見てしまった」的な感覚を味わえると思います。

”その瞬間”を生かすための徹底された準備

『アンダー・ハー・マウス』10月7日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他、全国順次ロードショー
(C) 2016, Serendipity Point Films Inc.
配給:シンカ

Q.俳優たちに心地よく演じてもらうために、現場で気をつけたことはありますか?

マレン:とにかく撮影前までに徹底的に準備をして、彼女たちに細かく説明してあげることでした。撮影前からしっかり話しあいをして、それぞれのシーンをどういうふうに撮っていきたいのか、どういうロケーションで、どういう構図で、どういうポジションで撮っていくのかを事細かく説明して、完全に頭に入れてもらいました。

撮影期間が18日間ととても短かったのですが、徹底的に準備したことによって、カメラが回り始めれば、ふたりは互いに意識を集中するだけでよかった。撮ったテイクも、多くて2テイク程度です。その代わり、15~30分ぐらいの長回しで撮りました。いちいち切ったりしたら、その瞬間が生きてこない。結果として、いい意味で非常に生々しく新鮮に撮ることができたと思います。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)