(C) 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants

27歳の若さで亡くなった俳優アントン・イェルチンが贈る大人のラブストーリー『ポルト』

コラム

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9月30日(土)に公開を控える『ポルト』。ポスターではテーブルを挟んで向き合う2人の姿が印象的ですが、優しく彼女を見つめる男性は、もうこの世にはいません。昨年、わずか27歳にしてこの世を去った主演俳優の名は、“アントン・イェルチン”。彼がフィルムに刻んだ切ない物語の魅力についてご紹介します。

恋愛映画の巨匠も認める、儚く美しいラブストーリー

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舞台は、“魅惑の古都”とも称されるポルトガルの湾岸都市・ポルト。美しいこの街で出会ったアメリカ人のジェイクとフランス人留学生のマティは強く惹かれ合い、一夜を共にするものの、その後長きにわたり、すれ違ってしまいます。数年後、それぞれの日々を営む2人の記憶がたどり着くのは、ただまっすぐに愛を伝え合ったあの夜のことだった……というストーリー。本作では16ミリ、35ミリ、スーパー8とあらゆるフィルムを駆使し、過去と現在、未来の記憶を視覚化することに成功しました。

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時間の流れに重きを置いた恋愛映画というと、18年間にわたって男女の恋の軌跡を描いた『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995年)、『ビフォア・サンセット』(2004年)、『ビフォア・ミッドナイト』(2013年)の三部作が浮かぶ人も少なくないでしょう。実際に、『ビフォア〜』シリーズを手がけるリチャード・リンクレイター監督は本作にコメントを寄せ、「これは真剣な映画狂の手形がついているのがはっきりわかる映画だ」と手放しで絶賛しています。

27歳の若さでこの世を去った若き実力派、アントン・イェルチン

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主人公のアメリカ人・ジェイクは、家族と折り合いがつかず職を転々としており、心を通わせることができるのは愛犬のみ。そんな孤独を抱えた青年を演じているのが、アントン・イェルチンです。

アントンは9歳で俳優活動を始め、アンソニー・ホプキンスと共演した『アトランティスのこころ』(2001年)で広く知られるようになりました。その後、ロバート・デ・ニーロ主演の『15ミニッツ』(2001年)や、モーガン・フリーマン主演の『スパイダー』(2001年)などに出演し、ベテラン俳優との共演によって経験を積んでいきます。2009年には『スター・トレック』、『ターミネーター4』と相次いで大作に出演し、その地位を確立しました。

また、日米の製作陣を交えてつくられた『誰かが私にキスをした』(2010年)では、インターナショナルスクールに通う青年エース役で出演。堀北真希演じる主人公をめぐって、松山ケンイチ、手越祐也と恋の四角関係を繰り広げています。本作の完成会見の際には来日し、「マキやケンイチ、ユウヤと一緒に過ごすのは遊びよりも楽しい」と和気あいあいとした関係を披露しました。

こうして順調な俳優人生を歩んでいた2016年6月、アントンは、坂道を下ってきた自身の車とレンガでできた郵便受けとの間に挟まれて亡くなってしまいます。突然の訃報に、彼と共演したことのある俳優たちは「才能にあふれ寛大な心を持った人だった」、「彼をとても愛していた。心がかき乱されている」とその死を深く嘆きました。『スター・トレック』シリーズを手がけるJ・J・エイブラムス監督もアントンを高く評価し、彼が演じていたチェコフ役を今後別の役者にやらせることはないと断言しています。

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アントンの遺作は『スター・トレック BEYOND』(2016年)となりましたが、ラブストーリーという点においては本作が最後の作品と言えるでしょう。恋愛の美しさや情熱、言葉にならない切なさを見事に体現する彼の姿は、観る者の胸に迫るはずです。

奇才ジム・ジャームッシュが製作総指揮を担当

映画監督歴は30年以上になるものの、手がけた作品の数は20にも満たない寡作な巨匠、ジム・ジャームッシュ。しかし今年は、バス運転手パターソンの平凡ながらも愛おしい日常を描いた『パターソン』、イギー・ポップ率いる「ザ・ストゥージズ」に迫った音楽ドキュメンタリー『ギミー・デンジャー』が相次いで公開されるなど、彼の世界に浸れる機会に恵まれた“ジャームッシュ年”となりました。そんなジム・ジャームッシュが、本作では製作総指揮を務めているという点もポイントです。

(C) Danielle Campbell

監督を務めたゲイブ・クリンガーは34歳の新鋭で、処女作でヴェネチア国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。このことをきっかけにジャームッシュに見初められ、この度長編劇映画デビューを果たしました。ジャームッシュは自ら製作総指揮に名乗り出て参加していることからも、本作の質が確かなものであることは明白。完成後には、「もの悲しさと詩的な美しさに満ちた、第一級の映画」と賞賛のコメントを残しています。

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大人になると、日々の喧騒や、押し寄せる出会いと別れに流されてしまいがちですが、だからこそ、もう決して戻ることのできない甘美な一夜と、その後に長い時を経て訪れる奇跡が胸に響くはず。『ポルト』は9月30日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーです。

(鈴木春菜@YOSCA)

記事制作 : YOSCA

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