10月4日(水)DVD発売/4,500円+税/販売:東映/発売:東映ビデオ

作者も吐き気を催す“エログロ”でイヤな展開!? 元祖イヤミス作家・江戸川乱歩の作品

コラム

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一昔前におバカなミステリーこと、“バカミス”がはやった推理小説の世界。それが、ここ数年では映画『ユリゴコロ』の原作小説など、“イヤミス”こといや~な展開がクセになるミステリーが人気となっています。

ところで、イヤなミステリーといえば、誰か忘れてはいませんでしょうか。そう、日本ミステリー界の元祖・江戸川乱歩の作品です。中には映画化されているものもあり、その代表的な作品が、カルト映画として好事家の間で有名な『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969年)です。

この作品のDVDが、10月4日に発売されました。大井武蔵野館で頻繁に上映されていたのは筆者の懐かしい思い出ですが、ここでは『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』をはじめとする、江戸川乱歩のイヤミスを紐解いていこうと思います。

『恐怖奇形人間』の原作にみるいや~な展開

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』のストーリーは、乱歩の小説「孤島の鬼」と「パノラマ島奇談」を足して2で割ったもの。そこに、さまざまな乱歩テイスト……いわゆるエログロや変態性欲などがミックスされています。

「孤島の鬼」は主人公・蓑浦が、自分の髪が真っ白になってしまった由来である怪事件を綴るという物語です。恋人を密室で殺され、知人の探偵も衆人環視の中で殺されてしまった蓑浦は、自分に思いを寄せる先輩・諸戸(男性)とともに事件を追います。やがて事件は諸戸の実家がある孤島へとつながるのですが、そこには人造フリークスのパラダイスを作ろうと目論む怪人物が待ち構えているのでした……。

一部では乱歩の最高傑作ともいわれる作品で、さらにごく一部では同性愛の小説としても有名です。当時から同性愛をテーマに取り上げる乱歩のセンスには脱帽です。

一方、「パノラマ島奇談」は、売れない小説家の人見が、自分にそっくりな元同級生の資産家・菰田源三郎になり替わるというお話です。ありあまる資産を投入し、自分の夢である“パノラマ島”を完成させた人見に、破滅の影が忍び寄ってくるいや〜な展開が見どころです。

中でも一番いや~なシーンは、やはり最後の“人間花火”でしょう。あまりにグロテスクなので説明は避けますが、映画では小説よりもさらに凄いことになっていて、一周回ってある意味爆笑ものといったシーンになっています。

これらを足して二で割ったのですから、『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』がどれだけ濃い映画か、だいたい想像できるのではないでしょうか。ただ、ほかにも乱歩の作品には、まだまだいや~な小説があります。

腐る死体、四肢欠損、快楽殺人鬼までイヤミス・オンパレード!

オムニバス映画『乱歩地獄』(2005年)の一篇として映像化されている「蟲」。主人公の柾木愛造は、想いを告げた初恋の女性・木下芙蓉に嘲笑されたことで、彼女を殺してしまいます。やがて、自宅の土蔵に彼女を運び込んだ柾木でしたが、腐り始める死体に恐怖を覚え、防腐処置を行おうとするも失敗。徐々に精神の平衡を失っていくのです……。

この小説の何がイヤかというと、柾木が精神を病んでいく過程が異常なほどリアルなのです。「なんだっけなあ、なんだっけなあ」とうろつきまわる。「蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲……」とつぶやき続ける。その姿にはただただ戦慄するしかありません。

また、『乱歩地獄』の一篇として映像化されたイヤミスとしては、「芋虫」も忘れてはいけません。こちらは、戦争により四肢を欠損し、聴覚と味覚もなくした須永とその妻時子の物語です。夫をいたぶって快感を得る時子でしたが、夫の純情無垢な目に恐怖を感じた彼女は、これを潰してしまいます。そのことを後悔した時子は夫の体に指で「ユルシテ」と書きますが、須永は「ユルス」と書き置きを残して姿を消すのでした。

触覚のみの世界に生きることの恐怖。そして、その後の時子の心中を想像すると、なんともいえないイヤな気分になる作品です。

最後に究極のイヤミスとして挙げておきたいのが「盲獣」。“触覚芸術”を標榜する、盲人の快楽殺人鬼が主人公の物語です。これまで紹介してきた中でも最もグロテスクな内容の作品で、目・口・鼻・手などが無数に並べられた主人公のアトリエは、狂気以外の何者でもない。中でも「鎌倉ハム大安売り」という章は、作者が吐き気を催す程だとか……。詳細をどうしても知りたい方は、「芋虫ゴロゴロ」や「ハム大安売り」で検索してみてください。

この作品はたびたび映画化されています。増村保造監督作の『盲獣』(1969年)は人間の狂気を描いた原作とは違い、異形の愛をテーマとする物語となっていました。一方、『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』の石井輝男監督により映像化された『盲獣vs一寸法師』(2004年)は原作に近く、エログロ感満載の内容となっています。

以上、乱歩のイヤミス、いかがだったでしょうか。ちなみに、もっと乱歩らしい作品が読みたい方には、「お勢登場」や「赤い部屋」をおすすめしておきましょう。こちらは人間心理の怖さが楽しめますよ。

(文/ハーバー南)

記事制作 : H14

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