場面ごとにモノクロとカラーが絶妙に交錯する手法で撮影され、セザール賞撮影賞に輝いたフランソワ・オゾン監督の最新作『婚約者の友人』。10月21日より公開される本作の公開にちなみ、一瞬にして世界が色づく、モノクロ&カラーの使い分けが効果的な作品をご紹介します!

モノクロ映画に登場する「色」は、感情表現と密接な関係にある

モノクロ映画の一部に色を付けた作品は、一般的に「パートカラー」と呼ばれています。黒澤明監督の『天国と地獄』(1963年)や、スティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』(1993年)といった作品でも、白黒の世界に突如現れる“赤い煙”や“赤いコートの女の子”が登場するシーンにハッとした! という人も多いのではないでしょうか。近年では、『シン・シティ』シリーズでもブロンド美女や深紅の車、ドレスなどにパートカラーが用いられ、鮮烈な印象を残しました。数ある「パートカラー」作品の中から今回ピックアップするのは、カラーとモノクロが場面ごとに入れ替わるタイプの4作品。回想シーンだけがカラーだったり、登場人物の視点によって色が変わったり……。いずれも色彩が感情表現と密接な関係にあることが如実に伝わる名作ばかりです。

モノクロ&カラーでサスペンスフルに綴るフランソワ・オゾン監督作品『婚約者の友人』

新作『婚約者の友人』は、モーリス・ロスタンの戯曲をエルンスト・ルビッチ監督が映画化した『私の殺した男』(1932年)を原案に、フランソワ・オゾン監督が大胆なアレンジを施した極上のミステリー。舞台となるのは1919年、戦後のドイツ。戦争で婚約者を亡くした女性が、彼の友人を名乗る謎の男と出会い翻弄されていく様を、モノクロとカラーが織りなす映像美でサスペンスフルに描いた衝撃作です。

本作で、時代背景のリアリティを追求するため、モノクロ撮影に初挑戦したというオゾン監督。モノクロをベースに、回想シーンや幸福なシーンなど、強い感情が立ち上がるシーンだけをカラーにすることで、「血液が血管を流れるように映画を活性化させる」効果があったと語っています。ルーブル美術館に飾られたある一枚の絵が、謎解きの鍵を握っているともいえる本作は、まさに色彩のもたらす効果が実感できる1本です。

ダバダバダ…で一世を風靡したクロード・ルルーシュ監督作品『男と女』(1966年)

『男と女』 (C)1966 Les Films 13

ここからは、パートカラーの名作をご紹介します。1本目は、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝き、フランシス・レイの名曲ともに、クロード・ルルーシュ監督の名を一躍世界に知らしめた『男と女』です。パートナーと死別した過去を持つ男女が、互いに惹かれ合いながらも葛藤する様を、流れるようなカメラワークと美しい旋律でエモーショナルに描いているのが特徴。 パートカラーになった理由は、お金が足りなかったから!? とも言われていますが、セピアカラーとモノクロで現在を描き、回想シーンをカラーで描くという手法が、大人の男女の切ない恋模様をより一層際立たせています。

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天使が人間に恋をする、ヴィム・ヴェンダース監督作品『ベルリン・天使の詩』(1987年)

お次は、カンヌ国際映画祭で監督賞に輝き、日本でも公開当時大ヒットしたヴィム・ヴェンダース監督による不朽の名作『ベルリン・天使の詩』です。まだベルリンの壁があった時代に、空から人間たちを見守っていた天使のダミエルが、サーカスの空中ブランコ乗りのマリオンに恋をする様子描いた作品です。 天使から見える世界はモノクロですが、人間たちから見える世界はビビッドなカラー。ダミエルが永遠の命と引き換えに地上に降り立ち、色づいた世界の美しさに心を奪われていくピュアな姿に心を打たれます。

トビー・マグワイア主演のユニークなファンタジー映画『カラー・オブ・ハート』(1998年)

『カラー・オブ・ハート』 (C)1998 New Line Productions, Inc. All rights reserved.

最後にご紹介するのは、「パートカラー」の良いところを全部詰め込んだファンタジー映画『カラー・オブ・ハート』。モノクロのテレビドラマの世界が、登場人物たちの行動によって色づいていくという、モノクロからカラーに変化する過程を丸ごと楽しむことができる作品なんです。

主人公は、テレビのチャンネル争いをしていた高校生の双子の兄妹で、1950年代の人気ホームドラマの中に入り込んでしった彼らが、平穏な世界で次々と騒動を巻きおこしていきます。モノクロの世界に生きる人々が、トビー・マグワイア演じる兄デイビッドと、リース・ウィザースプーン扮するジェニファーに感化され、次第にカラーに色づいていく様が、デジタル加工を駆使した凝ったヴィジュアル・エフェクトで見事に表現されています。

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予算の都合という偶然性から生まれた作品から、監督自ら細部までこだわり、計算され尽くした作品まで、同じ「パートカラー」といえども、バリエーション豊か。ぜひこの機会に、映画の中で色彩が果たす重要な役割に注目してみてはいかがでしょうか。

(文/渡部喜巴@アドバンスワークス)