大杉漣。1951年生まれで、今年の9月27日には66歳。人生のキャリアを積み重ねてきた年輪が醸し出す重厚な演技で、今や邦画界&TVドラマには欠かせない存在です。が、一方で年齢を感じさせないお茶目さから、バラエティ番組にも引っ張りだこ。若い女性層にも「可愛い!」と愛される、大杉漣の多彩な魅力を見つめてみましょう。

本名・本人役で出演したドラマでは、“可愛いおじさん”に

この春、大杉漣の魅力を再発見させてくれた作品がドラマ「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」(テレビ東京)でした。遠藤憲一、田口トモロヲら、日本の映画&ドラマ界を支えてきた名脇役=バイプレイヤーたちが本名・本人役で出演。彼らが大杉漣の別荘をシェアハウス化し、共同生活を送るという奇想天外な面白さに、魅了された方も少なくないのでは?

劇中における“大杉漣”の役柄は、最年長で温厚、皆から慕われるリーダー役でありながら、時に激しい思い込みで暴走した挙句、落ち込みも人一倍激しいという“可愛いおじさん”。映画解説に見られる「ジェットコースタームービー」という言葉をそのまま擬人化したような、喜怒哀楽に満ちた生き様も印象的でした。

こうした“ジェットコースター”的な浮き沈みは、大杉漣の役者人生をも彷彿させます。

日給6,000円の肉体労働バイトが支えた、喜怒哀楽に満ちた下積み時代

大杉漣は20代前半で演劇の世界に飛び込み、1974年に転形劇場に入団。しかし、舞台だけで食べていくのは難しく、B級映画やVシネマへにも出演していました。その長い下積み時代の経験は意外に知られていません。

当時の住まいは6畳1間、家賃6,000円の激安アパート。家賃と生活費のため、舞台の大道具係や工事作業員など、家賃を払える日給6,000円の肉体労働バイトが欠かせなかったと言います。あの大杉漣が、神宮・青山の再開発エリアでツルハシやスコップ片手に穴を掘っていたなんて、ちょっと想像できませんよね。

さぞや辛い日々を……と思われがちですが、ご本人は「実に楽しかった」と、テレビのインタビューなどでは振り返っています。お金がなくなればバイトをするだけ。好きな役者の道に没頭できる日々が、それだけ充実していたのでしょう。何事にも前向きに、積極的に楽しめる、どこか卓越した人生観。それこそ、大杉漣が醸し出す魅力の根幹だともいえそうです。

若手時代を支えた奥様は、夫である大杉漣を「人が大好きで、人に会うことで元気をもらっているような人」と称しているとか。私達もまた、そんな大杉漣という人物像から元気をもらっているのです。

“人”と“元気”が築き上げた、微笑ましく可愛すぎる自由人

私生活ではサッカーをこよなく愛し、アマチュア時代から応援している出身地のJ2チーム、徳島ヴォルティスの試合を欠かさず録画。ブログは愛犬・愛猫を愛してやまない親バカ(?)さにあふれ、趣味が高じた音楽活動も精力的に活動されているそうです。自ら「日本三大散歩番組」と称する「大杉漣の漣ぽっ」(BSフジ)では、自由気ままな(傍若無人な?)散歩ぶりを披露。「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系)では森泉から「れんれん〜」とイジられ……。様々な“可愛いおじさん”ぶりは好感度抜群で、微笑ましすぎます!

それにもかかわらず、映画での役者・大杉漣は、その表情を一変させます。今年3月に公開された主演作『グッバイエレジー』では、中学時代の親友の死を知った映画監督が数十年ぶりに帰郷し、親友の生き様を辿りながら郷里への愛、映画への思いを再認識するという、哀愁漂う熟年男を熱演。自由人だった自らの人生を見つめ直す様は、まさに“ザ・大杉漣”とも言うべき姿でした。

10月7日からは北野武監督の『アウトレイジ 最終章』が公開、さらに10月18日からはレギュラー出演中の「相棒season16」(テレビ朝日系)の放送開始と、脂が乗り切った熟年男・大杉漣の快進撃は、まだまだ続きそうです。

(文/藤井淳@アドバンスワークス)