10月14日に全国公開される『あなた、そこにいてくれますか』は、一人の男が今は亡き恋人に会うために過去へとタイムトラベルをする、胸に迫るラブストーリーです。主人公のスヒョンは未来の自分に出会うことで、恋人が死ぬ運命を変えようとします。

タイムトラベル映画では時間を超えて人間関係のやり取りが行われるため、時に人間ドラマが複雑に絡み合います。それが恋愛モノであれば、果たして2人の関係はどうなってしまうのかと、観ている人をドキドキさせることでしょう。今回はそんな恋愛タイムトラベル映画の傑作を紹介したいと思います。

時を越えて惹かれ合う恋愛物語の王道…『ある日どこかで』(1980年)

熱烈なファンをもつタイムトラベルものの名作に、映画『ある日どこかで』があります。1980年を生きる劇作家リチャード(クリストファー・リーヴ)が、偶然見かけた、ある女優の古い写真。その写真の女優に魅せられ、彼女に会いたい一心から約70年前の1912年に旅立ちます。その女優エリーズ(ジェーン・シーモア)は、かつて大学生だった彼の元に現れ「帰ってきて」と謎の言葉を残して去った老婦人でもありました。

彼が試みたタイムトラベルの方法は、大学の恩師から教わった自己暗示・自己催眠というもの。思いを遂げるため何度も失敗し、やっとタイムトラベルできたリチャード。しかし、映画のラストではほんの些細なことで、2人は再び、時間に引き裂かれてしまいます。

“一瞬の出会い”に運命を感じ、時空という“絶対的な障壁”すら乗り越えて、惹かれ合い、そして、その障壁によって悲劇的結末を迎える2人の物語。王道的なラブストーリーのエッセンスが、タイムトラベルによって、よりドラマティックに演出されています。幻想的な光景が広がるラストも含め、人が人を想う、思いの強さが奇跡をよび、カルト的な魅力を放っている作品です。

儚く美しいパラレルワールド…『イルマーレ』(2001年)

1998年と2000年という異なる2つの時間を生きる男女。二人が海辺の家の郵便受けという一箇所でつながり、恋愛を育むパラレルワールドものが韓国映画『イルマーレ』です。主人公のソンヒョン(イ・ジョンジェ)とウンジュ(チョン・ジヒョン)は、それぞれの日常を生きているので、厳密にタイムトリップとはいえないかもしれません。しかし、時間の隔たりが出会いの障壁となり、想いを募らせるきっかけにもなる、という点では、『ある日どこかで』に通じる王道スタイルでしょう。

郵便受けに入れた手紙だけが、タイムトラベルし、手紙のやりとりを通じて、2人の愛は深まっていきます。しかし、1998年を生きるソンヒョンが駅のホームでウンジュを見つけても、1998年の時点では、ウンジュはソンヒョンを知りません。ウンジュがソンヒョンと手紙を、やり取りしているのは2000年の出来事。思いは通じていても、生きる時間が違っている2人は、肩が触れ合う近さにいても、言葉を交わすことができない……。パラレルワールドが、触れたくても触れられない、もどかしさを生み、見事な設定となっています。

美しくもどこか儚く見える映像が、人と人の出会いの儚さを暗示しているようで、味わい深い一作です。

タイムループの先にあるものは?…『恋はデジャ・ブ』(1993年)

過去や別の時代に飛ぶタイムトラベルと違って、同じ時間を何度も繰り返し経験する“タイムループ”という時間旅行のスタイルがあります。その代表的な一作が、恋愛コメディ『恋はデジャ・ブ 』です。

ワガママなTVキャスター・フィル(ビル・マーレイ)は、春の到来を占うお祭の取材で訪れた田舎町で、同じ祭りの1日を際限なく繰り返すタイムループに巻き込まれます。毎日、次の瞬間に何が起こるか知ってしまった彼は、それを悪用し、ナンパしたりお金をくすねたりと、やりたい放題。一緒に取材にきたプロデューサーのリタ(アンディ・マクドウェル)を口説いてちょっかいをだしては、何度も平手打ちを喰らいます。

たとえ自殺しても、次の日に同じ時間に目覚め、同じ1日のループを生きなければならないフィル。既視感しかない毎日で彼が行き着いたのは、タイムループの中でも街の人々と良い人間関係を結び、積極的に人生の意味を見つけることでした。何度も拒否されながら、やがてリタに対する本当の自分の気持ちに気づいたフィルは、リタとの恋を成就させようと奮闘していきます。

何も変わらないと思えたタイムループの中で、一番変化していたのは、実はフィル自身の心のあり方でした。彼が恋に出会うのは、タイムループがあってこそ。雪解けと春の到来を占うお祭りが、恋の到来とフィルの心の雪解けを暗示しているという、粋な仕掛けになっています。

タイムトラベルを経た成長物語…『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』(2013年)

タイムトラベルの能力をもつ一族に生まれた非モテ系の主人公・ティム(ドーナル・グリーソン)。彼は恋愛での失敗を過去に戻って何度も修正しながら、やがて最愛の女性メアリー(レイチェル・マクアダムス)と出会い、自分の家族を築いていきます。

『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』におけるタイムトラベルの方法は、暗い場所に入ってコブシを握り、いきたい自分の過去を念じるだけ。とても簡単に人生をやり直せる羨ましい能力なわけですが、そのお手軽な時間移動を繰り返す姿には、ティムの迷いや自信のなさが見え隠れしています。

やがてメアリーと結婚し、子どもを設け、父として逞しくなっていくティム。彼が本作の最後に語るのは、過去を自由に旅し、人生を無限に書き換えることの楽しさではありません。逆説的にも、今日のこの日、今という時間を生きる喜びでした。際限のない選択肢をもつタイムトラベラーに、人生の充実感を与えたのは、かけがえのない家族の存在。タイムトラベルを経て、大切なものは何かに気づくティムの成長物語なのです。

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『あなた、そこにいてくれますか』は、2015年から1985年にタイムトラベルする主人公が、最愛の人を前に“究極の選択”を迫られる作品です。

過去に戻ることのできる10粒の薬を手に入れたスヒョン(キム・ユンソク)は、1985年に世を去った恋人ヨナ(チェ・ソジン)に再会することを望みます。半信半疑でその薬を服用した彼が出会ったのは、30年前の若き自分(ピョン・ヨハン)でした。ヨナの死後、娘をもうけた2015年のスヒョンと、ヨナとの変わらぬ未来を望む1985年のスヒョン。時空を超えて出会った2人のスヒョンが、最愛の人と望む未来の姿を模索します。

もしタイムトラベルが可能になったら、あなたは誰に会いにいきますか? そんな想像を膨らませてくれるのも、恋愛タイムトラベル映画の醍醐味の一つかもしれませんね。

(文/岸田キチロー)